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どちらが史上最強のGTIか。「ゴルフV GTIピレリ」の強烈な魅力と、ゴルフVI GTI【10年ひと昔の新車】

掲載 更新 4
どちらが史上最強のGTIか。「ゴルフV GTIピレリ」の強烈な魅力と、ゴルフVI GTI【10年ひと昔の新車】

2009年、6代目ゴルフが日本上陸を果たし、そのGTIモデルの導入が秒読み段階に入る中、Motor Magazine誌は5代目で登場した最強のGTI「ゴルフGTIピレリ」に注目している。最高出力で新型GTIを上回るフォルクスワーゲンの特別なモデルは、どんな個性を持っていたのか。そのパフォーマンスは新型にどう活かされたのか、その試乗レポートを振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年6月号より)

ジュネーブですでに新しいゴルフGTIがデビュー
昨年(編集部註:2008年)秋のパリ国際モーターショーで正式発表された最新のゴルフ、ゴルフVI。そんなモデルの後を急いで追うように、先日開催されたジュネーブ国際モーターショーの舞台には早くもそれをベースとした新しいGTIが姿を見せた。

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いや、より正確に記せばそんな新型GTIの存在は、パリの場ですでに半ば公になっていたもの。最高出力はゴルフVのGTI比10psプラスの210psで、電子制御LSDを装備して定評のトラクション能力を増強。さらに、このところのヨーロッパのハイパフォーマンスモデルがこぞって採用を始めた電子制御式可変減衰力ダンパーも設定と、このあたりまでのスペックも、すでに昨年末のこの時点で一般公開されていたのである。

こうなると当然、「そんなゴルフVIのGTIこそが、『史上最強のGTI』のタイトルを得る1台」と考える人は少なくないだろう。ベースモデルであるゴルフVIの従来型に対する進化のほどを考慮すれば、GTIグレード同士でも「より静かに、よりしなやかに」といったリファインの内容を予測するのは難しくない。

端的に言って、そんな新旧2台のGTIを比較した場合、「新型の優勢」はもはや紛れもないようにも思えてしまう。となると、ゴルフVI GTIのデリバリー開始が秒読み段階にある今の時点で、「現在でも販売店に走れば、まだ新車を手にできる可能性が残る」というゴルフVのGTIを敢えて選ぶ理由というのは、もはやまったくないのであろうか?

実は「ゴルフVIのGTIは、決して『史上最強のGTI』ではない」と言ったら、驚く人もいるかも知れない。だが、これは紛れもない事実なのだ。間もなく旧モデルになろうとしているゴルフVのGTI。そこには、最高で230psとゴルフVI GTIを圧倒するハイパワーエンジンを搭載した「特別なGTI」が存在していたからだ。

今も「史上最強のGTI」の称号を持つゴルフVのGTIピレリ
『ゴルフGTIピレリ』。これこそが、ゴルフVI GTIが誕生した後も『史上最強のGTI』のタイトルを手にし続けるモデルの名称。「特別なGTI」とは言っても、それは単にチューニングパーツを装着したものなどではない。フォルクスワーゲン本社の提案に基づいてきちんと世界市場での販売が行われたカタログモデルなのだ。

実はそんなスペシャルなGTIには、歴史上の「出典」も見ることができる。それは、初代のゴルフGTIに設定され、日本には導入されなかったものの世界では1万余台が発売されて好評を博したという1983年にリリースの1台。やはり専用にパワーアップされたエンジンを搭載し、ピレリのロゴがあしらわれた専用デザインのホイールを装着するなどのドレスアップが行われたこのモデルこそが、『GTIピレリ』を名乗った第一号車だった。

すなわち、ここに紹介するGTIピレリは、言うなればそんなかつてのモデルを先祖に持ちつつ、25年という遥かなる時空を経て現代へ蘇った復刻版。当然ながらそれは、単にパワーアップしたエンジンを搭載するだけのモデルなどではない。そんなこのモデルはまず、軽くドレスアップを図ったエクステリアによってさりげなくアピールを行うことになる。

ベースとなった、すなわち「ゴルフVのGTI」に対して一見ローダウン化が図られたように感じるのは、専用デザインが与えられた前後バンパーや、ボディ同色に統一されたサイドスカートといった視覚的な効果によるところが大きいようだ。

加えて、そんなボディの足もとが一段と逞しく感じられるのは、ゴルフVI GTIが17インチのシューズを履くのに対して、こちらは専用デザインのホイールに18インチの『ピレリPゼロ』を組み合わせているからにほかならない。

一方、ドアを開くとまず目を引くのは、大胆にもタイヤのトレッド状パターンが刻み込まれた前後4席分のスポーティなデザインのシート。そんなシートのサイドサポートやヘッドレスト、そしてパーキングブレーキレバーやステアリングホイールリムなどに丁寧に縫い込まれた黄色のステッチは、もちろんかのピレリ社のコーポレートカラーを彷彿とさせるものだ。

そんな個性的なルックスでまずは人々の目を引くGTIピレリの走りのテイストは「オリジナルのGTI」とは明確に異なるものだ。それも、その両者には「多くの人々が予想するレベルを超えたもの」と思えるほどに、かなりの大きな差が感じ取れる。

GTIピレリとゴルフVI GTI、目指す方向性は明確に異なる
フォルクスワーゲン自慢のDSGがクラッチミートを行った瞬間から味わえるオリジナルエンジンに対するトルクの上乗せ感は、アクセルペダルを踏み加えていってもそのまま全域で継続される。5500~6300rpmという範囲で発揮される230psというピークパワーはもとより、300Nmとオリジナルエンジン比で20Nm増しのピークトルクを発生させる回転数も2200~5200rpmと幅広い。

チューンドエンジンながら決してピーキーさなど持ち合わせないその出力特性に、「どうしてこれをGTIの標準エンジンにしないのか?」と、むしろそんな疑問さえが湧き出てきそうになるのがこの心臓でもある。

ただし、そんな強心臓をFFレイアウトに組み合わせた結果は時にトラクション能力の不足をもたらし、ドライ路面でさえ駆動輪である前輪を空転させる場面なども発生させている。

ただし、そうした現象を示しつつも嫌なステアリングのスティック感やトルクステア現象をもたらせることがないのは、さすがはゴルフと感心する部分。もっとも、ゴルフVIのGTIがその最高出力を210psに「留めた」のは、そんな「じゃじゃ馬ぶり」を嫌ったことにも一因があるかもしれないが。

一方、回転の上昇と共に高まるパワー感はオリジナルエンジンに比べると明らかに鮮烈で力強く、実際の加速力でもベースのゴルフV GTIに対して1ランク上のシャープさを実感させられる。

ちなみにデータ上は、同じDSG仕様のモデルでゴルフV GTIの0→100km/h加速タイムが6.9秒であるのに対し、GTIピレリは6.6秒という値。ゴルフVI GTIのタイムは6.9秒と発表されているから、こうしたスペックからも「最速のGTI」のタイトルはいまだGTIピレリの頭上に輝いていることは明らかだ。

ところで、ベースとなったGTIに比べて想像以上に大きく異なっていたのは、そんな動力性能面に関してのみではない。手が加えられた部分はタイヤとホイールのみという説明になっているものの、実際にテストドライブを行うと「サスペンションのセッティング自体も異なっているのではないか?」と想像させられるのがフットワークのテイストの違いだった。

端的に述べれば、GTIピレリのフットワークの印象は、ベースであるゴルフVのGTIより明確に「辛口」だ。

走り出した瞬間からロードノイズは喧しく、同時にわずかな路面の凹凸に対してもピョコピョコとしたボディの動きを示すのはベース車にはないワイルドな印象。一方で、そうした乗り味はスポーティなモデルとしてのキャラクターをわかりやすく演じているとも言える。

と同時に、どのようなシーンでもアンダーステアがとことん弱いハンドリングの感覚は、まさに「最もスポーツ心に溢れたゴルフ」の面目躍如。史上最強・最速のゴルフGTIは、最もスパイシーな走りを堪能させてくれるゴルフGTIであるというわけだ。

一方で、新型ゴルフGTIが狙う走りのテイストがそんなスパイシーなものからはある程度の距離を置いたものであろうことは、このモデルが電子制御式の可変減衰力ダンパーを採用するというニュースからも予想がつくもの。昨今、ヨーロッパ車で採用が目立つこの種のデバイスを採り入れたモデルの乗り味が、いずれも際立つしなやかさを備えていることからすれば、ゴルフVIのGTIが実現させるフットワークのテイストはGTIピレリのそれとは明確にベクトルの異なったものであることが予想される。

かくして、今やフォルクスワーゲンラインアップの中でも「ひとつのブランド」としてひとり立ちをしつつあるゴルフGTIというモデルに、よりスパイシーでホットな走り味を求めるのであれば、今からあえてゴルフVのGTIピレリを選ぶという行為は「十分に理屈が通るものである」というのが自分の結論だ。一方で、速さと共に歴代GTI中で最も上質な走りのテイストを求めるというのであれば、これはもはやゴルフVIのGTIで決まりに違いないだろう。(文:河村康彦/写真:村西一海、永元秀和、井上雅行)

フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ピレリ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4225×1760×1500mm
●ホイールベース:2575mm
●車両重量:1440kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:169kW(230ps)/5500-6300rpm
●最大トルク:300Nm/2200-5200rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FF
●10・15モード燃費:12.2km/L
●タイヤサイズ:225/40R18
●車両価格:405万円(2009年当時)

[ アルバム : フォルクスワーゲン ゴルフ GTI ピレリ はオリジナルサイトでご覧ください ]

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みんなのコメント

4件
  • サンフラワーイエローのGTIピレリに憧れたなぁ。
  • 6,7,8のGTIより5のGTIのほうがコストがかかっている感じがして特別感があって好きだったな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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