■世界的に流行! 増え続ける3列シートSUV
ここ数年、世界的にSUVジャンルは人気を高めています。とくに注目されるのは、3列シートを備えた車種が用意されていることです。
スバルの3列シートSUV「アセント」、やれることはやり尽くした渾身の1台
2017年に発売されたマツダ「CX-8」、2018年のホンダ「CR-V」は、両車ともに3列シートの採用をセールスポイントに挙げています。
以前から販売されている定番車種の日産「エクストレイル」、三菱「アウトランダー(PHEVを除く)」、オフロードSUVのトヨタ「ランドクルーザー」なども3列シート車を用意しています。
3列のシートを備える乗用車といえば一般的にはミニバンですが、なぜSUVにも3列シートの設定があるのでしょうか。SUVが3列シート仕様を用意する一番の理由は、車内が広いからです。
SUVでは大径タイヤの装着など、外観のカッコ良さが注目されますが、ボディの上側は背の高いステーションワゴン風のスタイルとなりミニバンほどではありませんが、車内が広いため荷室に折り畳み式の3列目シートを備えました。
トヨタ「ランドクルーザー」は、1950年代に発売された2代目から、3列シート仕様を用意。シートの配列は、全員が前向きに座るタイプのほか、後席を横向きに並べた仕様もありました。後者は通勤電車のように、サイドウインドーに背中を向けて座ります。
1960年代までは、今と違って4WD車がほとんどありません。「ランドクルーザー」は、人から物資までさまざまな運搬の手段に使われるほか、建設会社などが大勢の人を運ぶ必要もあり、3列シートの7人から9人乗りが用意されたのです。つまりSUVには、もともと多人数乗車の機能が備わっていました。
アメリカ市場では、SUVの人気がとくに高いですが、その理由のひとつにも3列シートの装着が挙げられます。1950年から1970年代には3列シートのステーションワゴンが人気で、1980年代に入ると、ミニバンが好調に売れたこと。
その後は、3列シートのLサイズSUVが堅調に販売されています。SUVであれば悪路走行から多人数乗車まで、さまざまな用途に使えるために人気を高めましたが、SUVの空間効率はミニバンほど高くありません。3列目のシートも、少し広い荷室に装着された補助席と考えるのが妥当です。
空間効率が下がる理由は、SUVの室内設計にあります。ミニバンのようなフラットフロア構造を採用しないため、3列目の床は、燃料タンクのために2列目よりも高くなっています。そのために3列目に座ると膝が持ち上がり、1列目/2列目に比べて窮屈な姿勢になりやすくなります。
■3列目が狭くても人気の理由
マツダ「CX-8」は、全長4900mm×全幅1840mm×全高1730mmの大柄なボディにより、国産SUVの中では最も快適な3列目シートを備えています。それでも大人6名が乗車して移動できる距離は片道1時間程度です。
ミニバンの居住性に当てはめると、コンパクトなホンダ「フリード」やトヨタ「シエンタ」と同等かこの2車種を少し下まわります。座面が柔軟で座り心地も良いですが、膝の持ち上がる着座姿勢と、頭上や足元空間の狭さが欠点といえます。
このようにSUVの3列目シートは、ミニバンに比べると快適性が中途半端ですが人気を得ている理由は、この『中途半端』がメリットになることもあるからです。
3列シート車のユーザーが、すべて快適な3列目を求めるわけではありません。1年に数回、短い距離を他人数で移動する場合、本格的なミニバンではむしろ『もったいない』と感じ、通常は3列目が空席になるからです。
その点でSUVならムダを抑えられます。通常はミニバンとは違うスポーティな運転感覚やカッコイイ内外装を楽しみ、必要な時だけ、短距離を多人数で移動できれば合理的となります。
多人数乗車を目的に3列シートのSUVを選ぶ時は、販売店の試乗車を使って、3列目を入念にチェックすることをおすすめします。先に述べたとおり、膝の持ち上がる窮屈な姿勢になりやすいほか、スライドドアを備えたミニバンに比べると、後席側のドアの間口が狭いため乗降性も良くありません。
日本車の中で、3列目が最も快適なSUVは、先に挙げたマツダ「CX-8」、次にホンダ「CR-V」となります。日産「エクストレイル」と三菱「アウトランダー」は、ボディが少しコンパクトで価格も割安な代わりに3列目も狭いです。
大人が3列目に座るには、2列目をかなり前側へスライドさせて足元空間を振り分ける必要があり、多人数で乗車した時には、2列目/3列目ともに座り心地が窮屈になります。
トヨタ「ランドクルーザー」と「プラド」は、オフロードSUVのため床が高くボディも大柄ですが、3列目は狭いです。以上のような3列目の特徴を把握した上で、ニーズに合わせた3列シートSUVを選ぶことが重要です。 【了】
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