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自動車産業に革命をもたらしたフォードはEVで輝きを取り戻せるか?

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自動車産業に革命をもたらしたフォードはEVで輝きを取り戻せるか?

米国企業深掘りシリーズ「フォード」

フォード・モーター・カンパニー(Ford Motor Company)は、アメリカを代表する老舗自動車メーカーであり、1903年にヘンリー・フォードによって設立されました。フォードは自動車業界ではじめての大量生産を可能にするライン生産の導入により、自動車産業に革命をもたらしました。

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この記事では、フォードの歴史と未来について詳しく解説します。

フォードの歴史 創業期と初期の成功

創業者であるヘンリー・フォード(1863−1947)は、幼少期から機械に強い興味を持ち、あのジソンの照明会社で働いていた経験もありました。

1903年にフォード・モーター・カンパニーを設立し、フォードの最初の車となる「モデルA」を発売しました。しかし、本格的な成功を収めたのは1908年に登場した「T型フォード」です。

この車は、低価格で耐久性があり、一般家庭でも手に入れやすいものでした。

このT型フォードの成功により、フォードは世界最大の自動車メーカーへと成長します。

1913年になると移動組立ラインを導入し、生産効率を飛躍的に向上させました。

この方法は「フォーディズム」と呼ばれ、現代の種本主義を特徴付ける概念として、多くの産業で採用されています。

フォードの大量生産技術は、自動車の普及を劇的に加速させました。

1920年代になると、アメリカ国内の自動車の半数以上がT型フォードだったほどです。

それと同時にフォードは従業員に高い賃金を支払うことで、従業員が自社製品を購入できるようにし、消費社会の基盤を構築していったのです。

フォードの成長とグローバル展開

20世紀を通じて、フォードは多くの革新と挑戦を続けました。第二次世界大戦中になると、軍需産業への貢献として戦車や飛行機の製造にも携わりました。戦後は、需要の急増に対応するため新しいモデルを次々と投入し、1960年代になると「マスタング」などのアイコニックな車種を発表し、若者文化の象徴として広く受け入れられていきます。

それと同時にトラックやSUVなどの多様な車種を展開し、時代と呼応するように顧客の多様なニーズに応えていきました。フォードは戦前から日本に進出しており、一時はマツダとも提携するなど、日本との関わりの長い自動車メーカーともいえます。

日本車の台頭と競争

1970年代から1980年代にかけて、日本の自動車メーカー、特にトヨタやホンダ、日産などがアメリカ市場に進出し、質の高い燃費効率の良い車を提供することで市場シェアを拡大しました。これにより、フォードを含むアメリカの自動車メーカーは大きな競争圧力にさらされました。

日本車の台頭は、アメリカの自動車メーカーに品質向上と効率化を迫る契機となり、フォードもこれに対応するために多くの改革を行いました。

その一方、フォードは品質改善プログラムを導入し、生産工程の見直しを行うことで競争力を回復させました。また、消費者のニーズに応じた新モデルの開発や、燃費効率の向上を図るための技術革新にも取り組みました。これにより、日本車との競争においても一定の成果を上げることができています。

EV事業に苦戦するフォード

近年、テスラの台頭もあり、フォードは電動化に積極的に取り組んでいますが軌道には乗っていません。現状、2020年代から電気自動車(EV)市場での競争力を高めるために多額の投資を行っていますが、苦戦が続いています。

実際、米調査会社Cloud Theoryによると、フォード系ディーラーは昨年対比でEV販売台数を減らしており、例えば、Mach-Eは昨年比で販売台数が21%減少しています。

フォードはMach-Eの在庫が輸送中に多くの時間を費やしたため、結果的に増加していると説明していますが、ディーラーは、顧客が他のEVに移行する前に納車が完了しない可能性を懸念しています。

【EV市場全体の状況】

フォードだけでなく、テスラも2023年に在庫増加に悩まされ、値下げや特典を繰り返しています。EV市場全体がアーリーアダプターの段階を超え、次の5~10年が困難な時期になると予測されています。年々、EV市場は拡大しているものの、当初の見方よりも成長曲線は緩やかになっています。

【市場シェアの課題】

アナリストは、米国の自動車市場におけるEVの市場シェアが10%に近づくと、それを超えるのが難しくなると指摘しています。GMも同様の問題を抱えており、大規模な投資にもかかわらず販売台数が伸び悩んでいます。

自動運転技術の開発

フォードは自動運転技術の開発にも注力しています。自動運転車両の商業化を目指し、人工知能(AI)とセンサー技術を駆使して、安全かつ効率的な移動手段を提供することを目指しています。この分野における有力なスタートアップである「Argo AI」が精算されると、提携先だったフォードは人材を継承しています。

実際、自動運転技術の社会実装に向けて、さまざまな実証実験を行っています。

例えば、都市部での自動運転タクシーの運行や物流業務の自動化など、実際の使用環境でのテストを通じて技術の完成度を高めています。また、法規制の整備や社会受容性の向上にも取り組んでおり、ステークホルダーとの協力を強化しています。

とはいえ、テスラを筆頭に米国内だけでもライバル企業がひしめいており、フォードが現在のポジションをキープできるのかどうかは、もう少し時間をかけて検証すべきでしょう。

【サステナビリティと社会的責任】

環境への配慮と持続可能なビジネスモデルの構築は、現代の自動車メーカーにとって避けて通れない課題です。フォードは、再生可能エネルギーの利用や生産プロセスの効率化に取り組み、カーボンニュートラルの達成を目指しています。また、地域社会への貢献や労働環境の改善など、社会的責任を果たすことにも力を入れていますが、これは他の自動車メーカーも同じように取り組んでいるともいえるため、大きなポイントとはならないでしょう。

フォードの業績推移

以下は、2019年から2023年までのFordの財務実績に関する要約です(単位:百万USドル)。

【売上高】
2019年: 155,900
2020年: 127,144
2021年: 136,341
2022年: 158,057
2023年: 176,191

フォードの売上高は2020年に大きく減少したものの、その後は増加傾向にあります。この増加は、COVID-19パンデミックの影響からの回復と、電気自動車(EV)および新モデルの投入によるものと考えられます。

【営業利益】
2019年: 519
2020年: -4,409
2021年: 2,821
2022年: 6,155
2023年: 5,458

営業利益の動向の変動は、コスト管理の改善や売上の回復によるものの一方で、供給チェーンの問題や生産コストの増加が影響していることが見えてきます。

【当期利益】
2019年: 47
2020年: -1,279
2021年: 17,937
2022年: -1,981
2023年: 4,347

当期利益の大きな変動は資産売却による特別利益や、政府からの支援金、一時的な要因や特別項目の影響が大きいと考えられます。また前年の赤字からの反動も考えられます。

【EPS(一株当たり利益)】
2019年: 0.04
2020年: -0.32
2021年: 4.49
2022年: -0.49
2023年: 1.09

EPSは、2020年と2022年にマイナスになっており、特に2022年には-0.49USドルとなっていますが、2021年には4.49USドル、2023年には1.09USドルと回復しています。これもEPSと同様に、一時的な要因や特別項目の影響が大きいと考えられます。

【PER(株価収益率)】
2019年: 244.06
2020年: ――
2021年: 4.34
2022年: ――
2023年: 11.14

PERは、2019年には244.06倍と非常に高い値を示しましたが、2021年には4.34倍と大幅に低下しています。2023年には11.14倍と再び上昇しています。PERの変動は、利益の変動および市場の評価によるものです。特に、2020年と2022年にはPERが計算されていないことから、これらの年は利益がマイナスであったことがわかります。

ちなみに株価は過去10年ほど12ドル近辺を推移しており、大きな株価上昇はしていません。

配当利回りは執筆時点(6/13)で4.96%です。

おわりに

フォード・モーター・カンパニーは、過去100年以上にわたり、自動車産業のリーダーとして多くの革新を生み出してきました。

フォードの歴史と未来を理解することで、同社がいかにしてグローバルな自動車市場での競争力を維持し続けているのかを知ることができます。

これまでも日本車の台頭や電動車市場での苦戦など、多くの課題にも直面していますが、100年に一度の大変革と言われる自動車業界の生き残りをかけた競争が続いています。

フォードはこれらの課題に対して未来のモビリティをリードする企業としての地位を築けるのか、今後5年、10年先の変遷を見ていく必要があるでしょう。

文/鈴木林太郎

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みんなのコメント

1件
  • *******
    フォードは全車BEV化を撤回して
    2030年までに全車ハイブリット化を先日宣言したばかり
    EVで輝きを取り戻せるか??
    記者さんニュース見てる?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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