新型は伝統を守りすべてを刷新。オフローダーの頂点
ランドクルーザーのフラッグシップ、新型300シリーズに試乗した。試乗車はZXとGRスポーツ。ガソリン、ディーゼルそれぞれのステアリングを握った。
誕生70周年のタイミングで登場した300系は、見てのとおりさらに派手になった面構えと、納車までかなり時間を要することが大いに話題となっている。新型は完全な新設計。約14年にわたり現役を務めた200系から継承したユニットはほぼ何もない。ボディサイズは全長×全幅×全高4985×1980×1925mm(ZX)。実際には旧型と同等ながら心なしか大きくなったように見える。
「どこへでも行き、安全に帰って来られる」世界最強オフローダー、ランドクルーザー300の凄技
車両の基本は、もちろんラダーフレーム構造を踏襲する。しかしプラットフォームはTNGAに基づくGA-F型に刷新。ボディは高張力鋼板の採用拡大やパネルの大半をアルミ化した点が目立つ。 搭載位置を後方に70mm、下方に28mm移動したエンジンは、ガソリンとディーゼルの2種。ガソリンは従来の4.6ℓ・V8(318ps/400Nm)から3.5リッターのV6ツインターボ(415ps/650Nm)にダウンサイズ。ディーゼルは新設計の3.3リッターV6ツインターボ(309ps/700Nm)を積む。トランスミッションは、いずれも10速ATだ。
意のままに操れる感覚。洗練されスムーズな走りが好印象
走り味の改善は、新たに操舵アクチュエーターを追加した油圧パワーステの効果でもある。主たる目的は安全・運転支援装備(ADAS)に操舵支援機能を与えることだが、巧みに反力を演出することでステアリングフィール向上にひと役買っている。軽いながらも接地感を伝え、微舵の領域から正確な応答性を示す。
操縦性には車体剛性の向上も少なからず効いている。一般的にボディオンフレーム車ではゴムマウントが入るためボディ剛性を上げても効果がないと思われがち。ランクルもその7割ほどをフレームに依存している。だが、操舵時にどの部分が変形するかは非常に重要という。開発過程で数値には表れなくても、フィーリングとしてドライバーに伝わることがわかった。すっきりとしたステアリングフィールと一体感のある動きを実現する上で、車体剛性の向上は大変効果があったという。
ダカールラリーの経験を生かした、専用チューニングの足回りを持つGRスポーツはさらにひと味違う。一段と走りに一体感がある。スタビライザー効果を電子制御するE-KDSSも効いてロールが抑えられ、18㌅タイヤのたわみを上手く生かした巧みな設定によってステアリングを切り返した際のヨーの収束も絶妙だ。感触としてはクロスオーバーの領域まで踏み込んだかと思うぐらいだ。ランクルらしい安定性とランクルらしからぬ運動神経を併せ持っている。GRスポーツは、乗り心地もいい。20インチ・タイヤを履くZXも十分な快適性だと思ったが、GRスポーツのほうが突き上げやバタつきが小さい。
V6ツインターボはどちらも魅力的。パワフルでしかも静粛な印象
2種類のエンジンは、どちらも素晴らしい。新開発ディーゼルは、低速トルクをしっかり出すため、トヨタで初めてバンクの内側にシーケンシャルツインターボを配置したのが特徴。全域で狙い通りの力強さが味わえた。音も静粛。車外ではそれなりに聞こえたものの、乗ってしまえばまったく気にならない。高級車らしくぬかりなく対策されている。
一方のガソリンはレクサスLS用をランクルに合わせて特性を見直したユニット。ターボと聞いて、悪路における低速ドライバビリティが気になったが、まさしくそこが開発陣がこだわったポイント。踏み込みにリニアに応答して駆動力を発揮する。低回転域でも従来の自然吸気V8を上回るトルクが得られるようATとセットでチューニングしたという。
走りのなめらかさは特筆レベル。そこにターボらしい加速の伸びやかさが加わり、性能的には申し分ない。こちらもかなり静かだ。
感心したのが、ブレーキング時の姿勢のよさ。300系のはブレーキシステムは、電動パワーサーボ式。前後の制動配分をコントロールしやすくなったのに加えてリアサスのコントロールアーム配置を工夫、ZXとGRスポーツではAVSを姿勢安定にも使っている。
試乗して、ランクルの最新版として考えられることはほぼやりつくした印象を受けた。あとは、「実は進化の幅は舗装路よりも大きい」と関係者が胸を張る悪路走破性を試してみたい。
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