マツダの人気が高いです。日々更新して実感することですが、マツダ車にまつわる記事をアップすると、アクセス数が普段より1.2~1.4倍くらい多く、またSNS等に寄せられるコメントも多いという特徴があります。
以前からスバルの人気は高かったのですが、(かつて人気だった)ホンダや日産の記事については落ち着いてきており、その代わりにマツダが台頭してきたイメージです。
それはやはり、マツダが近年推し進めてきた「選択と集中」が功を奏しているのでしょうか? この「動き」はクルマ専門メディアを熱心に読むような「クルマ好き界隈」だけのものなのでしょうか? 仮にそうだとして、この人気の原因は?
マツダの人気と事情について、自動車ジャーナリストの渡辺陽一郎氏に分析していただきました。
文:渡辺陽一郎 写真:MAZDA
■マツダは販売台数と人気に格差
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今のマツダ車の売れ行きは、以前と比べると低調だ。2017年と、先代(初代)CX-5が発売される前の2010年を比べると、2017年の売れ行きは20%くらい減少している。
2016年12月発表、2017年2月販売開始した2代目CX-5。日本カー・オブ・ザ・イヤーで10ベストカーに選ばれるなどジャーナリストやクルマ好きからの評価は高い
ところがベストカーのWEBサイトではマツダ関連の記事の人気が高いという。今夏実施されたベストカー本誌による「好きなメーカーアンケート調査」でも史上初めてマツダがトップに立った。
売れ行きと人気度で大きな格差が生じた理由は、今のマツダのクルマ造りにある。
先代CX-5以降のマツダ車は、外観は「魂動デザイン」でカッコよく、運転すれば車両との一体感が得られて楽しさを満喫できる。デザインと機能の両方で、楽しさにこだわるクルマ好きのユーザーに焦点を絞った。そのために好感度が高いのだ。
しかし近年のマツダは、比較的好調に売れていたミニバンのプレマシーに改良を施さず、ベリーサなどは廃止した。日本では5ナンバー車が好調に売れるのに、マツダのラインナップはOEMの軽自動車を除くとデミオだけだから車種構成が弱い。
販売店からは「CX-8は3列シートでも価格が高く、プレマシー/ビアンテ/MPVのお客様が行き場を失った。すでに他メーカー車への代替えも進んでおり、トヨタと提携したのだから、ヴォクシーのOEM車でも良いからミニバンを供給して欲しい」という悲痛な声も聞かれる。
堅調な人気を誇っていたプレマシーも2017年いっぱいで生産終了を発表
■どこに注目するかで評価がわかれるメーカーに
しかしこのような現状も、今のマツダファンには魅力なのかも知れない。こんな具合に……。
新しいマツダは、ミニバンや背の高いコンパクトカーは一切手掛けず、自ら退路を断って、スカイアクティブ技術と魂動デザインのクルマだけに特化している。復活途上の段階だから、売れ行きが伸び悩むのは当然で、マツダの結論を出すのはまだ早い。
これからはマツダ車に育てられた俺たちが、マツダを盛り上げていく。対前年比に何の意味がある? クルマは、自動車メーカーは、そんなふうに見るものではないだろう。対前年比なんて過去の話だ。問題はこれから、どれだけ伸びるのか。マツダが秘めるパワーを高めてあげたい。
それはマツダと顧客、つまり俺たちの熱意に掛かっている。たとえ長い時間を費やしても、マツダは少しずつ業績を高め、やがてロータリーエンジンを搭載したスポーツカーもデビューさせるだろう。それで良いではないか。マツダも俺たちも、今の進化と深化を信じて、少しずつでも前に進んでいるのだから。
今のマツダのイメージは、上記のような具合だろう。今のマツダほど、視点の置き方によって評価の変わるメーカーはないと思う。
■マツダにお願いしたいこと
マツダ唯一の3列シート車となった、クロスオーバーSUVのCX-8
今のマツダは新型車を発売する時の受注開始が早すぎる。CX-8は2017年9月14日に受注を開始して、納車を伴う発売は12月14日だった。
そうなると購入の商談をする時に車両がなく、ユーザーは「現物を見ずに買う」危険を強いられる。これを避けるために発売後に試乗して納得した上で契約すると、納期が大幅に遅れる可能性が生じる。今のマツダ車は「走りのよさ」がウリだから、試乗をさせずに契約する売り方には甚大な矛盾が伴う。
早期に受注を開始すると、メーカーは売れ筋グレードなどが早い時期に分かって生産計画を立てやすい。生産開始後には迅速に納車できて好都合だが、顧客を長期間にわたって待たせてしまう。きわめて失礼な売り方をしている。
商品はクルマ造りが硬直化して、どれも同じに見える。例えばCX-5が好きな人はすべてのマツダ車に馴染めるだろうが、嫌いな人はマツダの全車がダメになる。もう少し車両の特徴、色彩なども含めて幅を広げて欲しい。
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