この記事をまとめると
■タイなどの東南アジアではピックアップトラックが大人気だ
JMSで話題沸騰のコンセプトカー「IMV 0」! なんと「ハイラックスチャンプ」としてタイで市販って日本でも売ってくれ!!
■各メーカーが1モデル以上トラックをラインアップしているほど重要車種となっている
■トラックにはEVやハイブリッドモデルも参入してきているほどヒートアップしている
タイではピックアップトラックが大人気
東南アジア、とくにタイ市場における新車販売で特徴的なのはピックアップトラックがよく売れていること。単に仕事で使うという用途のほかに、貨客兼用としてマイカーとしても使われることが多いからである。首都バンコクあたりで見ていると、そのようなピックアップトラックをとくに多く見かけることは少ないが、地方部ではよりニーズが高まっていると聞く。
このピックアップトラックでは、「トヨタ・ハイラックス・レボ」と「いすゞD-MAX」が激しい販売合戦を展開しており、現状ではハイラックスが僅差でトップとなっている。ハイラックス・レボとD-MAXの販売シェアを合わせると、じつに販売されているピックアップの9割前後になっているとのこと。
ピックアップトラックは日系メーカーの得意分野ともいえ、ハイラックスとD-MAXのほかには、「三菱トライトン」、「日産ナバラ」などもラインアップされている。また、マツダでは現行モデルとしていすゞからのD-MAXベースとなるOEM(相手先ブランド供給)車、「BT-50」をラインアップしている。なお、初代は2006年にフォードとの共同開発車としてデビューしている。2011年にデビューした2代目も引き続きフォード・レンジャーベースとなっていた。そして現行モデルは、前述したとおりいすゞからOEMを受けているといった流れだ。
あくまでも筆者の私見となるが、「マツダ BT-50」は、「日本でOEMの軽自動車をラインアップすることに似ているかもしれない」と考えている。
タイではクルマの複数保有はそれほど珍しくない。たとえばマツダのクロスオーバーSUVに乗っているユーザーが、「ピックアップトラックが欲しいなぁ」と考えたときに、「ウチにもありますよ」として他メーカー車へ流れにくくする意味でラインアップしているようにも見えるのだ。
2024年3月末から4月上旬に開催された第45回バンコクモーターショーの会場では、「プジョー・ランドトレック」というピックアップトラックが展示されていた。これは長安汽車とプジョーの合弁会社で生産されている長安汽車のピックアップトラックをベースにしているモデル。プジョーユーザーに、「ピックアップトラックもプジョーブランド車を所有してもらいたい」という狙いや、これはBT-50にも共通するのかもしれないが、多様化の目立つ都市部の消費者へもアピールもしているのかもしれない。
このピックアップトラックカテゴリーにおける、第45回バンコク国際モーターショーの話題といえば、いすゞが「D-MAX EV」を発表したことだろう。ただし、発表はしたもののタイでの販売は当面予定されていない。BEV(バッテリー電気自動車)普及率の高いノルウェーなど、一部欧州市場で販売していくとのことである。
そして、トヨタも荷台に人を乗せることができるように架装された「ハイラックス・レボe」が展示されていた。このモデルはすでに発表済みなのだが、市販デビューはまだしていない。2025年より量産開始となる前に、2024年4月よりパタヤで公共交通機関向けとしてテスト運用されると地元では報じられていた。
東南アジアではピックアップトラックは重要車種
ピックアップトラックといえば、アメリカンブランドの得意分野でもあるが、GM(ゼネラルモーターズ)はすでに市場から撤退しているし、ステランティスグループのアメリカンブランドにおいて、タイ市場に参入しているのはジープブランドだけとなっている。唯一、ピックアップトラックをラインアップしているフォードも、ショー会場ではSUVのエベレストしか展示していなかった。
ピックアップトラックの2強が会場でBEVを展示するなか、タイ市場では勢力を伸ばし続ける中国メーカーでも動きがあった。GWM(長城汽車)がPOERというモデルを市場投入してきたのだ。当然BEVだろうと近寄ると、2リッターターボエンジンベースのHEV(ハイブリッド車)であった。BEVかHEV化という前に、リヤゲートが1台で2通りの開き方ができることに注目が集まっていた。中国車らしい趣向ともいえよう。
すでにタイではMGがエクステンダーというピックアップトラックをラインアップしているが、こちらは2リッターターボディーゼルエンジンを搭載している。
たとえばトヨタは、タイのようにピックアップトラックの需要の多い北米市場だと、ピックアップトラックにハイブリッドユニットを搭載している。
しかし、タイではトヨタも含め日本メーカーは得意のHEV化を通り越してBEVタイプのピックアップトラック導入に熱心に見えるのに対し、中国メーカーはピックアップトラックに限れば、BEVには慎重な姿勢を見せているように思える。地方部で売ろうとすれば、GWMやMGの選択肢は現実的に思える。しかし、すでにとくに地方部で圧倒的なシェアを誇るトヨタやいすゞにしてみれば、BEVのピックアップトラックは都市部などでの新規ニーズ開拓という位置付けとなっているのかもしれない。
新車販売市場全体を見ても、タイ国内の新車販売シェアは日本メーカーが7割台を維持している。そのなかでピックアップトラック市場はほぼ日本メーカーで占められているといっても過言ではない。そのカテゴリーへ、あえてモデルを投入する中国メーカー。報道ではBYD(比亜迪)は、年内にもBEVのピックアップトラックをグローバル市場に投入予定としている。欧米先進国市場では政治的対立もあり、規制強化など中国車に対する風当たりが強くなかなか思うように売ることができないためか、東南アジア市場を中国メーカーは重要視している。
BYDもその東南アジアを本格的に攻めるのには、ピックアップトラックは必須ツールと捉えているのかもしれない。MGやGWMが慎重姿勢を見せるなか、BYDがBEVタイプのピックアップトラックを、どのようにタイを含む東南アジアで展開していくのか、興味深く登場する日を待っている。
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