進化した「レンジローバースポーツ」の走りは楽しい! 小川フミオがリポートする。
ひと目で乗る人の嗜好がわかる
どのシートに座っても極上である──新型ベンテイガ EWB アズール試乗記
デザインはSUVで、内容はプレミアムサルーンのよう。そんなモデルが欲しい人にはレンジローバースポーツP400を勧めたい。ハイブリッドの力強い走りとともに、2024年モデルで新しいインフォテインメントが導入された。
英国生まれのプレミアムSUV、レンジローバーの魅力のひとつは、ラインナップの豊かさだ。パワートレインや内装など、選択肢が豊富。くわえて、レンジローバースポーツなるモデルが用意されているのがよい。2005年に初代が登場して、現在は2022年発表の3代目と、連綿と高い人気を誇っている。
レンジローバーがどちらかというと、快適な乗り心地を重視するのに対し、レンジローバースポーツは、ちょっと硬めの足まわりを含めて、走りを楽しむモデルに仕立てられている。もちろん外観もきちんと作り分けがされている。ひと目で乗る人の嗜好がわかる。「あ、走りを楽しみたいのだな」と。
試乗車のP400とは、400ps(294kW)の高出力を意味し、3.0リッター直列6気筒ガソリンターボエンジンはさらに550Nmもの最大トルクを発生して、全輪を駆動する。そのパワー感を堪能させてくれるのが、このモデルなのだ。
「オートバイオグラフィ」は、レンジローバースポーツのラインナップにおけるトップグレード。P400では「ダイナミックSE」の上に位置する。22インチ径ホイール、スライディングパノラミックルーフ、デジタルLEDヘッドランプ、22ウェイ電動フロントシート、メリディアン3Dサラウンドサウンドシステム、セミアニリンレザーシートなどが専用装備だ。
サイズ感はほとんど感じない上記のように、快適装備満載なのだけれど、走りの楽しさもまた印象に残る。ひとことでいって、スポーツカーのようにも走れる。俊敏な加速力と、反応がよいステアリング、しっかりした制動力、そして、それらとしっかり合った足まわりによるハンドリングの良さ、だ。
シフト制御によってドライバーの意思にしたがい駆動トルクを最大化する「ダイナミックローンチ」によって、どこまで加速していくんだ? と、思うぐらいのスピード感がある。レンジローバーにはないスポーツ専用の装備だ。
くわえて「ダイナミックエアサスペンション」と、ともに走りの状況によって4輪の駆動力を調節するトルクベクタリングにより、カーブを曲がるのが楽しくなる。軽やかでいて、しっかりと安定している。それでいて、ゆっくり走るのも悪くない。
発進時から加速していくときは、モーターの働きもあって、ドライブしている私が、自分で駆けていくような身体感覚とよいマッチングをみせてくれる。上記のとおり、曲がり、止まりも同様。それで、高速でもワインディングロードが続くような場所でも、また街中でも、速度に関係なく楽しめるのだ。
全長が4946mm、全高だって1820mmあるのに、クルマが走っている間、サイズ感はほとんど感じない。最近のBEV(バッテリー式電気自動車)では、“リビングルームが移動する感覚”というのが、重要なキーワードになっている感じもあるけれど、エンジン車でいち早く、その見事なフィーリングを実現したのは、レンジローバーであり、このレンジローバースポーツなのだ。
いつまでも乗り続けたいインテリアの基本的なデザインは、レンジローバーと共通。2024年モデルでは、エアコンやオーディオの調節ダイヤルが廃され、13.1インチのモニタースクリーン内でおこなうようになった。
物理的なコントロール類を極力なくすのは、リダクショニズムのデザインフィロソニー。ダッシュボードを中心にインテリアの素材感が強調されている。まるでよくデザインされたリビングルームのようで、機能主義から離れられないクルマの世界では、頭ひとつ抜けているのだ。
このクルマでオフロードを走ろうという人は、日本だとまずいないと思うけれど、そこもレンジローバーのDNAにしっかり入っている。路面に合わせて7つのモードが選べる「テレインレスポンス」と、世界初をうたう「アダプティブオフロードクルーズコントロール」が装備される。あると嬉しく思える装備の数々だ。
いまレンジローバーでは、この世界観をできるだけ長くファンのために保つためか、すべてのラインナップの電動化(ハイブリッド化)を展開する。確かに、いつまでも乗り続けたいと思わせられるモデルだった。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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