不景気の街で希望を抱かせたニューフェイス
「危ないな。ボールをさっさと拾って、向こうで遊んでな!」。1978年式フォード・カプリ II 2.0Sのオーナーだった、ロニーという男性は、ジョン・コリンズ氏へ吐き捨てるように口にした。
【画像】不景気の街で一目惚れ フォード・カプリ II 同時期のエキゾチックな2+2クーペたち 全130枚
当時11歳だったコリンズ。汚れたサッカーボールは彼の足からそれ、リージェンシー・グリーンの艷やかなボディへヒットする寸前だったという。40年ほど前の出来事だが、今でも鮮明に覚えているとか。
それでも彼は長年に渡って、カプリ IIを夢のクルマとして心に描いてきた。今では「ジェイド」というあだ名を付け、レストアが間もなく完了する予定にある。
1970年代後半のグレートブリテン島中西部、リバプールは不景気に沈んでいた。そんな街に現れたフォードのポニーカーは、希望を抱かせるニューフェイスといえた。
カプリ IIの生産は1974年から1978年までと、長くはなかった。それでも同社の強みといえた、マーケティングとスタイリングが効果的に働いた。
メカニズムの洗練度は高くなかったが、ロングノーズの整ったシルエットと、初代が築いた評判によって人気を獲得。特に英国の若者からは、確かな支持を集めた。ティーンエイジャーになったばかりのコリンズも、少しませた思考といえたが、その1人だった。
幼馴染と偶然の出会いで念願のクルマへ接近
社会人になり故郷を離れても、コリンズはカプリ IIのことを忘れなかった。リージェンシー・グリーンのクーペは、常に頭の片隅にある存在だったそうだ。1995年に建設現場で幼馴染と偶然出会うまで、具体的な動きはなかったとはいえ。
久しぶりに再会した友人と話は弾み、気が付けばクルマの話題へ。その流れで、17年前にコリンズを怒鳴りつけたロニーの娘と、彼の旧友が結婚したことをコリンズは知る。在りし日のカプリ IIへ、1歩近づいた瞬間だった。
ロニーが、この世を去ったばかりなことも知らされた。カプリ IIを、最後まで手放さなかったことも。彼の両親が持つガレージで、大切に保管されていたという。
これを聞いたコリンズは、そのカプリ IIを買い取りたいという衝動に駆られた。死後間もない時期に、遺したクルマの買い取りを申し出ることが賢明ではないことも、同時に理解していた。
この件に関して、真っ先に相談したのは自身の父親。話し好きで、交渉能力にも長けた人物だったという。「父には、人を自然と導くような雰囲気がありました。オーラのような。自身の人生を語り始めると、周囲の人は惹き込まれるようでしたね」
話を聞いた父は、連れ添ったロニーを失った妻へ、タイミングを図って電話をかけた。クルマを売る決心が付いたら、連絡するという約束が交わされた。もちろんコリンズは喜んだが、彼女が語った内容へ驚きもした。
ジェリービーンズのように輝いて見えた
ロニーは、クルマを誰よりも大切にしていた。この世を去るまで18年間も所有していたが、妻は1度も乗せてもらえなかったとか。公道へ出るのは、晴れた時だけ。雨や雪の日にガレージから出ることはなく、走行距離は3万9000km足らずだった。
リージェンシー・グリーンのカプリ IIは、グレートブリテン島にある残存例で、最も状態の良い1台なことは疑いようがなかった。生産数は少なくなく、中古車価格は低迷し、20年近くが経った多くは廃車になることが通例だった。
工事現場での旧友との再会から、約半年。コリンズは悶々とした日々を過ごしたが、最終的には、とあるガレージを訪れる朝がやってきた。長く閉ざされたドアが開かれ、低く屈んだフォードのクーペが姿を表した。
その時に目撃したボディカラーを、ジェリービーンズのように輝いて見えたと彼は振り返る。はやる気持ちを抑えつつ、約束の1000ポンドを渡すと、クルマのキーと、整備履歴や請求書、納税証明などが詰まったフォルダーを受け取った。
自宅までは自走。その日の夜は興奮を抑えきれず、車中で過ごしたそうだ。ところが、ロニーの過保護ぶりと短い走行距離とは裏腹に、状態は完璧ではなかったという。
当初描いた計画は、父親からお金を借りつつ、僅かに改良。草レースを楽しめる仕様へ仕上げることだった。とはいえ、その時間で父親とドライブを楽しむ方が遥かに魅力的な過ごし方になると気付き、季節は過ぎていった。
実家は売却 専門家によるレストアを決意
実家のガレージで、親子でのカプリ IIの分解が始まったのは2010年。しかし程なくして父親の癌が発覚し、コリンズ1人で作業は進められることになった。
闘病生活は8年にも及んだが、父がこの世を去った時点で、カプリ IIは仕上がっていなかった。ジェイドというあだ名で呼んではいたものの、エンジンとトランスミッションを降ろしたまま、放置していたという。
2022年になり、実家を売却することを母親が決め、ガレージに置かれていた未完成のフォードは移動を迫られた。レストアを完了させるか、転売するかの二択といえた。一晩じっくり考えた彼は、専門家へ依頼し、復活させるという結論を導いた。
カプリ IIの部品の一式が荷造りされ、1年に及ぶレストアがスタート。ボディやシャシーの錆は、想像以上に進行していた。サイドシルなど構造的な部分はしっかりしていたが、フロントフェンダーやリアバンパー付近は、少し手荒な修理を受けていた。
ナットやボルトは再メッキされ、下回りの部品は時間をかけて再塗装。ボディカラーは、オリジナルと同じ鮮やかなリージェンシー・グリーンが選ばれた。ドライブトレインやサスペンションなども、一通りリビルドを受けた。
2.0L直列4気筒エンジンは、並行してコリンズが分解。本来の調子が引き出された。
この続きは、フォード・カプリ II(2)にて。
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