現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > レクサスLMの日本投入は本当か? 改めて中国で販売中のレクサスLMを徹底分析

ここから本文です

レクサスLMの日本投入は本当か? 改めて中国で販売中のレクサスLMを徹底分析

掲載 更新 37
レクサスLMの日本投入は本当か? 改めて中国で販売中のレクサスLMを徹底分析

 2019年の上海モーターショーでお目見えし、2020年から中国市場で販売されているレクサス初のミニバン「LM」。アジア地域やインドを中心に、精力的な販売を続けているLMだが、2022年2月現在、日本国内への投入はされていない。

 そんななか、トヨタの地元である愛知県の経済紙「中部経済新聞」が、2022年2月1日に、驚きの記事を出した。見出しは「レクサスミニバンを国内導入、3年以内発売、田原に生産移管」となっており、LMの国内販売を連想させる。

クラウン ランクルプラド LF… 今年と来年姿を表すトヨタ・レクサスのSUVたち4選

 本当にLMが日本に入ってくるのだろうか。また、日本に投入された場合に、どのような影響があるのかを考えていく。

文/佐々木 亘
写真/トヨタ

■突然の報道! 振り回される現場

 トヨタ・レクサスの新型情報が、愛知の新聞社から発信されることが増えた。記憶に新しいのは、中日新聞が報じた「クラウンSUV」の一報だ。取り上げた新聞社は違うが、愛知発というところは共通する。

 この報道に関しては、自動車関連の各媒体はもちろん、レクサスの販売店も寝耳に水だったようだ。

2020年2月24日から中国市場で発売されたレクサスLM300h。価格は7人乗りが116万6000人民元(約1772万円)、4人乗りが146万6000人民元(2228万円)

 LMは上海での発表時から、日本導入可能性が非常に低い車種として位置づけられていた。中国で発売されてからは、日本国内のレクサス販売店へ問い合わせが増えたが、レクサスセールスコンサルタントは「アルファードがある限り、レクサスにミニバンは入らないでしょうね」と説明してきたという。

 今のところ、メーカーからの公式な発表はなく、販売店への通達もない。筆者が訪れた販売店のラウンジからも「まだ何もわからないんで、お答えができないんですよ」と困り顔で、オーナーに対応するスタッフの声が聞こえてきた。

■中国という市場だからLMが必要

 今や世界のなかでも随一といっていいほど高級車が売れる中国。トヨタ車の販売も好調であるが、特に上級ブランド化されたレクサスが販売台数を伸ばしている。

 加えて、アジア圏には箱型クルマの文化が根付く。欧州や北米市場ではあまり支持が薄い「ミニバン」や「キャブワゴン」が、スタンダードなクルマの形として認知されているのだ。好調な中国市場で、販路を拡大するには「高級×箱」の商品が必要となった。

 そこで登場したのが、LMだ。アルファード(ヴェルファイア)という日本で実績十分の箱を、中国へもっていった。せっかくならば好調に認知されているレクサスから出したほうが良いと、アルファードよりも高級・上質であることを強く訴求し、中国の富裕層を狙い撃ちした形だ。

レクサスLMは、アルファードに比べ全長が90mm近く延びている

基本的なデザインはアルファードと変わらないレクサスLMのコクピット

写真の仕様は6人乗りだが、中国市場においては「ロイヤルエディション」という4人乗りの豪華仕様が存在する

 他のアジア圏でも販売されているが、LMの実質的な立ち位置は中国専用車に近い。

 対して日本には、まだ「高級×箱」の文化が根付いていないし、需要も少ないだろう。アルファードが売れているが、価格帯としては500万円~700万円のレンジであり、高級価格帯までは至らない。少なくとも1,000万円超の価格でアルファードが出てきたら、売れるだろうか。今なら、答えは否だ。

■LMとアルファードはどう違う?

 LMとアルファードは、具体的に何が違い、価格の差はどこから生まれているのかを考えていこう。

ボディサイズは全長5040×全幅1850×全高1945mm

ボディサイズは全長4945×全幅1850×全高1935mm(純ガソリン FF仕様)。ホイールベースは3000mmでLMと同一なため、前後オーバーハング長さで全長差が出ているようだ

 ボディスペックを比較すると、LMの全長がアルファードよりも90mm長い。同一のプラットフォームを使っているため、ホイールベースは3,000mmと同値だ。エンジンは2AR-FXEの2.5L、2モーター式のハイブリッドシステムも共用する。

 エンジンスペックでは、アジア仕様のLMが若干劣るが、基本的にはアルファードと同じパワーユニットと考えて差し支えない。エクステリアデザインはレクサスのアイコンであるスピンドルグリルが搭載されるため、一目でLMとわかるものだが、さらに大きく違うのは内装だ。

 アルファードは7人乗りミニバンが基本コンセプトであり、最上級のエグゼクティブラウンジを選んでも、しっかりと3列目シートが付いてくる。対するLMには3列7人乗りもあるが、人気があるのは2列4人乗りのグレードだ。

 遮音・吸音に気を遣うのはレクサスであるから、アルファードとは当然の違いだが、他にも液晶ディスプレイが大型化され、前後席間にパーティションを備えるなど、リムジンのような使い方を想定する装備が奢られる。アルファードよりも、さらに強烈なVIP専用車が、レクサスLMというクルマだ。

■LMの日本投入はあるのか?

 生産工場が変わることで、LMの日本導入は可能性を大いに高めたと思う。ただし、LM導入前にクリアにしなければならない問題がいくつかある。

 その一つがアルファードとの併売によっておこる混乱だ。

 現在、レクサスブランドのラインナップには、トヨタ車をベースにした兄弟車は存在しない。兄弟姉妹として販売されていたのはHS250hが最後だ。トヨタと近しいコンセプトのクルマはあるが、レクサスラインナップについては、派生ではなく独立したモデルというスタンスを貫いている。

 セルシオがLS、アリストからGSのように、トヨタからの派生を続け、北米で生き残ってきたレクサスだが、日本国内導入された後は、特にレクサスが独自のブランド力を構築する必要が出てきた。

 それはトヨタの高級ブランドではなく、世界で戦える高級ブランドになるためだ。いつまでもトヨタに寄りかかった形では、到底メルセデスやBMWなどのライバルには勝ち目がない。

 SAIの高級版で失敗したHS、立ち位置がなくなってしまい姿を消したGSのように、明らかにトヨタからの導線を引いたクルマでは、レクサスでの独り立ちは望めない。LMもベースとなる現行アルファードが残っている限り、常に「アルファードの豪華版」と言われてしまい、トヨタの柵が残り続けることになるだろう。

 今のLMを国内導入するのならば、まずアルファードのフルモデルチェンジが先だ。LMとアルファードの関連付けを無くし、それぞれを独立させることで、HS・GSと同じ過ちは繰り返さずに済むと思う。

 また、レクサス販売店も、元をたどれば全国各地のトヨタ販売店が運営する。併売状態では、違いが見えず、トヨタ販売店もレクサス販売店も中途半端な対応に終始せざるを得なくなるはずだ。

現行型に対しグリルがさらに大きくなっている新型アルファード予想CG。顔面とは逆に、印象的だったボディサイドの造形が一般的なミニバンライクになっているように見える

 2022年末から2023年初頭に、アルファードがモデルチェンジすれば、3年以内のLMの投入は現実味を帯びてくるだろう。具体的にアルファードとLMをきっちり住み分けて、LMには明確なショーファードリブンを体現してもらいたい。

 さらに、LMの国内導入時には、マイナーチェンジ(もしくは一部改良)が必須となる。中国仕様のままでは、日本のショーファードリブンには性格が合わない部分が多いからだ。特にコストをかける所と削るところの分別は、きっちりつけないと、車両価格と内容が見合わなくなるだろう。

 アルファードFMCからのLM導入、この順番が逆になってしまうと、日本でしっかりと築かれつつある、レクサスブランドの求心力も落ちる。

 LMの日本導入は、アルファード次第であり、BEVのフルラインナップなど、同時並行して様々な変革を行っているトヨタ・レクサス陣営にとって、LMの導入が急ぐべきことなのかは疑問が残る。それでも、ミニバン大国日本に、LMを投入する可能性が高まったことは喜ぶべきだろう。

 3年以内という時期を区切らず、手順良く導入すれば、LMは日本でも受け入れられる存在になるはずだ。まだ数年のスパンが必要になるが、焦らず万全な形でLMを日本に投入してもらいたい。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

日産のコンパクト「“スライドドア”ワゴン」がスゴイ! “めちゃ広”室内&「静音」モデルもある「タウンスター“エヴァリア”」! 欧州向けモデルが日本導入される可能性とは
日産のコンパクト「“スライドドア”ワゴン」がスゴイ! “めちゃ広”室内&「静音」モデルもある「タウンスター“エヴァリア”」! 欧州向けモデルが日本導入される可能性とは
くるまのニュース
「高速料金」負担は誰の責任? 各トラック協会も分裂する「新深夜割引」の裏事情、物流ジャーナリストが物申す
「高速料金」負担は誰の責任? 各トラック協会も分裂する「新深夜割引」の裏事情、物流ジャーナリストが物申す
Merkmal
ホンダ「CRF250ラリー」【いま新車で買える! 冒険バイク図鑑】
ホンダ「CRF250ラリー」【いま新車で買える! 冒険バイク図鑑】
webオートバイ
人気のミニバンがもっと便利になった! 日産セレナがベースのキャンパー
人気のミニバンがもっと便利になった! 日産セレナがベースのキャンパー
月刊自家用車WEB
第6世代を発表! その距離1120万km!! 超絶進歩した[ウェイモ]の自動運転とは
第6世代を発表! その距離1120万km!! 超絶進歩した[ウェイモ]の自動運転とは
ベストカーWeb
めちゃスタイリッシュ! スウェーデン発の自転車用「見えないヘルメット」って一体なんだ!?[復刻・2013年の話題]
めちゃスタイリッシュ! スウェーデン発の自転車用「見えないヘルメット」って一体なんだ!?[復刻・2013年の話題]
ベストカーWeb
くるまりこちゃん OnLine 「デザインのイメージ」第121回
くるまりこちゃん OnLine 「デザインのイメージ」第121回
ベストカーWeb
予選Q3でクラッシュしたアルボン、決勝レースを欠場。マシン修復が間に合わず/F1第21戦
予選Q3でクラッシュしたアルボン、決勝レースを欠場。マシン修復が間に合わず/F1第21戦
AUTOSPORT web
排気量も馬力も同じでしょ!? 軽自動車のターボに[差]って存在するの?
排気量も馬力も同じでしょ!? 軽自動車のターボに[差]って存在するの?
ベストカーWeb
「トリッキーだったがエンジョイした。今日はペースが良かった」自己最高予選3番手の角田裕毅が決勝で大量得点狙う
「トリッキーだったがエンジョイした。今日はペースが良かった」自己最高予選3番手の角田裕毅が決勝で大量得点狙う
AUTOSPORT web
圧巻の優勝の裏でGRスープラ3台が不可解なスローダウン。エンジン周りのトラブルか/第8戦GT500決勝
圧巻の優勝の裏でGRスープラ3台が不可解なスローダウン。エンジン周りのトラブルか/第8戦GT500決勝
AUTOSPORT web
F1 Topic:5年ぶりの『ワンデー開催』で想定されるシナリオ。選手権争いへの影響と、ポイント付与の可能性
F1 Topic:5年ぶりの『ワンデー開催』で想定されるシナリオ。選手権争いへの影響と、ポイント付与の可能性
AUTOSPORT web
角田裕毅、自己ベストの予選3番手。赤旗5回の波乱の中ノリスがPP獲得【予選レポート/F1第21戦】
角田裕毅、自己ベストの予選3番手。赤旗5回の波乱の中ノリスがPP獲得【予選レポート/F1第21戦】
AUTOSPORT web
4代目ワゴンR・3代目スイフト劇的進化! 渾身のマイナーチェンジを施したスズキに最敬礼!!!【10年前の再録記事プレイバック】
4代目ワゴンR・3代目スイフト劇的進化! 渾身のマイナーチェンジを施したスズキに最敬礼!!!【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
スノーフレークマーク付きタイヤ以外で走ると違反!? ドイツの冬タイヤ最新事情を現地からお届けします【みどり独乙通信】
スノーフレークマーク付きタイヤ以外で走ると違反!? ドイツの冬タイヤ最新事情を現地からお届けします【みどり独乙通信】
Auto Messe Web
SUBARU BRZ R&D SPORT、またもブレーキにトラブル。最終戦鈴鹿に向け原因を調査へ
SUBARU BRZ R&D SPORT、またもブレーキにトラブル。最終戦鈴鹿に向け原因を調査へ
AUTOSPORT web
まさかの大逆転で3勝目、元嶋「死に物狂いで追いかけた」。小暮「最終戦もベストを尽くすだけ」【第8戦GT300決勝会見】
まさかの大逆転で3勝目、元嶋「死に物狂いで追いかけた」。小暮「最終戦もベストを尽くすだけ」【第8戦GT300決勝会見】
AUTOSPORT web
ちゃんと「サソリ」してる! アバルト600eへ試乗 プラットフォームから違う 新モーターで240ps
ちゃんと「サソリ」してる! アバルト600eへ試乗 プラットフォームから違う 新モーターで240ps
AUTOCAR JAPAN

みんなのコメント

37件
  • 買う人はいるんだから出せばいいよ。
    2500でも3000でも売れるよ。
  • >LMもベースとなる現行アルファードが残っている限り、常に「アルファードの豪華版」と言われてしまい、トヨタの柵が残り続けることになるだろう。

    LXが人気な事から一概には言えないと思います。
    市場やパッケージの問題であり、ブランドにこじつけなくとも良いかと。
    日本仕様にアジャストするのも難しい事ではないでしょうし、一定の需要はあると思います。
    日本企業なのですから、グローバルだけでなく国内も市場にして頂きたいですね!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村