NSXの起源となったピニンファリーナのコンセプトカー
毎年8月中旬、北米カリフォルニア州モントレー半島内の各地で約1週間にわたって展開される「モントレー・カーウィーク」。そのなかでも、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスはもっとも歴史が古くて人気も高い、名実ともにメインイベントとして全世界に認知されています。2024年の会場において、ホンダは同社にとって初のコンセプトカー「Honda HP-X」を北米デビューさせました。トリノでのセンセーション以来、40年の時を経て表明された驚くべき内容とは?
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40年の時を経てペブルビーチ・コンクール・デレガンスに登場
クラシックカーによるコンクール・デレガンスの世界最高峰に君臨する「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」では、アメリカ国内をはじめとする全世界のコレクターたちが素晴らしいクルマを持ち込み、そのコンディションや来歴の正統さ、あるいは内外装の美しさを競っている。
PGA全米オープンの会場としても世界にその名を轟かせる名門ゴルフ場「ペブルビーチ・ゴルフリンクス」18番ホール周辺を舞台に行われるこのコンクールは、規模・格式ともにきわめて高く、エントリーは完全招待制。出展総数は約200台という制約があるのに対して、世界各国から毎回1200~1500台のエントリー希望が寄せられるというが、2024年は生誕40周年を迎える日伊合作のコンセプトカー「ホンダHP-X」が、日本ブランド車としては久方ぶりに正式出品され、全世界で大きな話題を巻き起こした。
F2レーシングエンジンを搭載した美しきコンセプトカーとは
ペブルビーチ・コンクール・デレガンスの会場において、ホンダは同社にとって初のコンセプトカー「Honda HP-X」を北米デビューさせ、トリノでのセンセーション以来、時計の針を40年分巻き戻すことになった。
イタリアの名門カロッツェリア「ピニンファリーナ」がスタイリングとコーチワークを手掛けた急進的なウェッジシェイプの「HP-X(Honda Pininfarina eXperimentalのイニシャル)」コンセプトは、初代「NSX」の開発に先駆けて登場した。
「ホンダHP-Xコンセプトは、1984年のトリノ・ショーのスターであり、エンジニアリングの卓越性と最先端のデザインの要素を示し、次世代の自動車デザイナーやエンジニアを鼓舞し続ける、極端なくさび形のスタイリングを示しました」
と、アキュラの現デザインエグゼクティブであり、ペブルビーチコンクールの名誉審査員であるデイブ・マレック氏は述べている。
「先進的なHP-Xは、業界に否定できない影響を与えました。これは、自動車設計の可能性の限界を押し広げるという当社のコミットメントを浮き彫りにしたものです」
革新的なドアレスのスタイルに、今では当たり前の先進技術を先取りして搭載していた
HP-Xコンセプトは、当時の「ラルト・ホンダRH6」に搭載され、F2レースシーンを席巻したレーシングエンジン「RA260」シリーズをベースとした80度V型6気筒2.0L・4OHC・24バルブエンジンをミッドシップに搭載するとともに、「グラウンドエフェクト」を含む高度な空力特性と、革新的な冷却ソリューションを採用していたという。
また、コンセプトカーらしくドアの備えは無いものの、代わりにジェット戦闘機スタイルの、取り外し可能なシングルピースのパースペックス製キャノピーを特徴としていた。
さらにキャノピーの後部は、流線型の美しいスタイリングを強調すること、およびドライバーが制御するエアブレーキとして機能することからなる2つの主要機能を備えたフェアリングに継続している。
さらにHP-Xの開発にあたっては、ハニカムパネルやカーボンファイバー、ケブラーなどの代替素材の最先端の使用を検討し、軽量化と性能の向上を実現したとのことである。
いっぽうインテリアは、広範なスタイリング研究により、快適性、人間工学、機能性を新たなレベルに引き上げたとのこと。ホンダが開発した「エレクトロニック・ドライブ・サポート・システム」は、リアルタイムテレメトリーやGPS、さらには専用ソナーによる道路状況警告など、今日では当たり前の技術となっている先進機能を先取りしていた。
ホンダとピニンファリーナの革新的なスピリットの証
「ホンダHP-Xは、コンセプトカーを通じて革新的なアイデアを提示し、未来のトレンドを設定するピニンファリーナのユニークな能力を示す好例」
と、ピニンファリーナのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるフェリックス・キルベルトゥス氏は、今回のペブルビーチ出展に際して発信されたプレスリリースにて述べている。
「ピニンファリーナでは、卓越したデザインの価値をすべてのプロジェクトに注ぎ込むよう努めています。これにより、コラボレーションするブランドの本質は損なわれず、自信を持って先を見据えています。HP-Xはそのまま生産されませんでしたが、その後のホンダ製モデルたちや、より広範な自動車業界への影響は否定できません。これは、ホンダとピニンファリーナの革新的なスピリットの証であり、自動車業界の将来の発展を鼓舞するものだったのです」
くわえて、テクノロジーの進歩に重点を置いて設計されたHP-Xコンセプトは、野心的な新しいアイデア、テクノロジー、エンジニアリング原理のテストベッドとして機能し、これらはのちに「ホンダ」や「アキュラ」ブランドのモデル、とくに数年後にデビューしたミッドシップ2シーターの初代NSXに活かされてゆくことになったといえるだろう。
歴史的名作NSXの起源であることが、初めて正式に言及される
「日本で設計・開発された初代NSXは、HP-Xで初めて探求された多くのアイデアやイノベーションを具現化し、自動車の歴史にその地位を確固たるものにした」。プレスリリースでは、たしかにそう記されていた。
筆者の記憶が正しければ、1984年トリノ・ショーでの発表当時は、HP-Xは日本を含む全世界のスーパーカーファンを魅了したものの、あくまで「ピニンファリーナのデザインスタディ」と説明されていたはずである。しかし誕生から40年の時を経て、ついにHP-Xがホンダ屈指の名作である初代NSXの出発点だったことが、ここで正式に言及されたことになるのだ。
そして伝説のホンダHP-Xコンセプトは、イタリア・トリノ近郊カンビアーノのピニンファリーナ工房にて行われた大規模なレストアを経て、2024年8月18日に開催された第73回ペブルビーチ・コンクール・デレガンス「ウェッジシェイプ・コンセプトカー&プロトタイプ」クラスに、フェラーリ「PFモドゥーロ」やアストンマーティン「ブルドッグ」など、いかにもあの時代を思わせる、素晴らしいコンセプトカーたちとともに出場。
厳正な審査の結果、栄えあるクラス賞ではアストンマーティン ブルドッグに名を成さしめてしまったものの、それでも世界のホンダ愛好家、あるいはピニンファリーナ愛好家に、その耽美的なまでの存在感を披露したのである。
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みんなのコメント
当時の関係者が誰一人出ていないのに。