国産EVの「半額以下」? 圧倒的な価格の壁
最近、各地で見かけることが多くなりつつあるEVバス。ただ、その半数以上が中国企業のBYD製です。なぜ「自動車大国ニッポン」で中国製EVバスが大きなシェアを占めているのでしょうか。
【さらにデカい!】これが日本未発売の2階建てEVバスです(写真で見る)
バス会社がBYDを選ぶ最大の理由は、シンプルに「価格」と「選択肢の多さ」です。
たとえば、コミュニティバスなどで使われるBYDの小型EVバス「J6」は約1950万円(税抜)です。
これに対し、日本のメーカーは現在「小型のEVバス」の選択肢がほぼありません。開発中だった日野自動車のモデル(ポンチョZ EV)などが発売凍結になってしまったためです。
2025年12月現在、いすゞ自動車などが販売する「大型」の国産EVバスであれば購入可能ですが、こちらは価格が6500万円を超えます。サイズが違うため単純な比較はできませんが、国産でEVを作ろうとするとどうしてもコストが嵩むのが実情です。
「手頃な価格で導入できる小型のEVバス」を求める事業者にとって、実質的にBYD以外の選択肢が存在しない、もっというとBYD一択という状況も、シェア拡大の大きな要因となっています。
従来のディーゼルバス(小型で約1600万円台)と比べても、BYDの価格は大きな差がなく、国の補助金を使えば十分に元が取れる設定になっています。
では、なぜこれほど安く作れるのでしょうか。
その理由はBYDの歴史にあります。BYDは1995年創業の「携帯電話のバッテリーメーカー」が発祥です。
EVの部品で最も高くつくのはバッテリーですが、BYDは自社で生産できるため、大幅にコストを抑えられます。
しかも、同社の「ブレードバッテリー」は釘を刺しても発火しないほど安全性が高く、寿命も長いという特徴があります。これは、刀(ブレード)のように細長い電池を、隙間なく敷き詰める同社独自の技術です。
安かろう悪かろうではなく、「電池のプロ」としての技術力が低価格を支えていると言えるでしょう。
しかし、いくら安くても、すぐに壊れてしまうようでは導入は進みません。BYDが日本でシェアを伸ばした背景には、価格だけではない、もうひとつ決定的な理由があるのです。
世界7万台の「実績」と、欲っしても買えない「国産の不在」
「でも、中国製のバスって壊れやすいのでは?」という不安もあるでしょう。しかし、ここでもBYDには強力な武器があります。それが「世界での実績」です。
BYDのEVバスは、すでに世界50か国以上で導入され、累計で約7万台以上が走っています。多くの地域で使われているという事実は、「みんな使っているから大丈夫だろう」という安心感を日本のバス会社に与えています。
翻って、日本のメーカーはどうでしょうか。バス会社が「国産を買いたい」と思っても前述したように「売っていない」というのが実情です。
日野自動車が小型EVバス「ポンチョZ EV」の発売を凍結したのは2023年のこと。理由は、部品の有害物質(六価クロム)問題などでした。いすゞ自動車が発売した「エルガEV」は、高額であり、また大型に区分されるサイズゆえに、投入できる路線は限定されます。
とはいえ、環境対策(脱炭素)の期限は待ってくれません。全国のバス会社の9割以上が赤字経営といわれるものの、これまた対応せざるを得ず、現実的な選択肢としてBYDを選んでいるのです。
「国産が出るのを待ちたいが、高すぎて買えないし、いつ出るかもわからない」。そんなジレンマの中で、各地のバス会社は決断しています。
日本のバス市場が「BYDだらけ」になったのは、単に安いからというだけでなく、バッテリー技術に裏打ちされた安全性と、国産メーカーが足踏みしている間に積み上げた実績の結果でした。
私たち乗客にとっては、バスがどこの国の製品かということ以上に、排気ガスを出さず、静かで快適に移動できるかどうかが重要です。
日本メーカーの巻き返しにも期待したいところですが、現時点ではBYDのバスが日本の公共交通を支える「頼れる足」になっていることは間違いありません。
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みんなのコメント
日本が輸入している物も絶対に同じだよな……。