昨今のSUVブームは、日本における「5ナンバーサイズ信仰」の破壊をもたらし、自動車メーカーは同一モデルをより世界中で販売しやすくなったわけだが、そうなると気になるのが、日本で高評価のモデルはやっぱり海外でも高評価なのだろうか? ということ。
クルマは同じとなれば、評価の差は販売される国に住むユーザーの価値観の差ということになるはず。
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というわけで、日本、米国、欧州(主にフランス)における評価の差を検証していきたい。意外なクルマが高評価だったりして……。
※本記事は2017年6月時点のものです。
文・写真:ベストカー編集部
国内評価:片岡英明、北米評価:桃田健史、欧州評価:フランス自動車誌『L’Automobile』
初出:ベストカー2017年6月26日号
■TOYOTA C-HR(2017年4月の国内販売台数/1万3160台)
日本での評価…87点
滑り出し好調だ。4月には2位に3000台の差をつけて販売トップになった。目立つデザインだし、クルマの出来もいいので当然か。
北米での評価…80点
日本では大人気だが、アメリカでは「ごく普通の新車」といった受け取られ方。デザイン的には米トヨタのデザインスタジオ、キャルティっぽさが強いので、アメリカ人好みではある。だが、ギトギト系なので、近年のヒュンダイやKIAっぽい印象を持って敬遠するアメリカンもいる。
市場の関心は、いまだにコンパクトよりもミッドサイズやフルサイズのSUVに向いていることもあり、日本のように新車効果で一気に売れまくるというイメージではない。
欧州での評価…60点
日本車ばなれしたスタイリッシュなデザインもさることながら、ダッシュボードのプラスチックの質感も非常によいと思う。
またシャシーもヨーロッパのクルマのような雰囲気を持っていて、ニュルブルクリンクでのテストが行われた事実を感じることができる。性能的には一種の望ましいSUVの形といえると思う。しかし大幅減点は高価な価格と、プリウスなどよりもハイブリッドが洗練されていないこと。逆にいえばそれを克服できればかなりの高評価につながるはずだ。
・日本仕様エンジン…1.2L 直4DOHCターボ(116ps /18.9kgm)、1.8Lハイブリッド(システム122ps)
・北米仕様エンジン…2L 直4DOHC(146ps/19.2kgm)のみ。タイヤはオールシーズンタイプを使用
・欧州仕様エンジン…1.2L 直4ターボ(116ps)、1.8Lハイブリッド(122㎰)、2L 直4NA(148ps)
■TOYOTA プリウス/プリウスPHV(2017年4月の国内販売台数/7940台)
日本での評価…80点
プラットフォームを一新し、燃費だけでなく走りの実力を大幅に高めた。ファミリーカーとしての性能は高いが、人気は先代におよばない。
北米での評価…85点
アメリカではガソリン価格とハイブリッド車の販売台数の動向は同期する。よって、ガソリン価格が安定している最近、ハイブリッド車の王道であるプリウスの販売は伸びない。アメリカでのプリウスはコスパ第一のクルマなのだ。
それを見越してプリウスプライム(PHV)は価格を日本より低く抑えており、さらに販売奨励金があるため「プリウスより安い」というコスパで、売れゆきがいい。
欧州での評価…75点
ハイブリッドカーの元祖として進化を続けてきたプリウスだが、第4世代のプリウスはこれまでよりもクルマの性能として、乗り味などは落ち着いた感じを受ける。ハイブリッド性能には文句はないのだが、印象として燃費や効率の追求が目につく。それがクルマのキャラクターだというのは理解できるが、市街地から一歩でも郊外に出たらそこにドライビングプレジャーはないに等しいのは残念だ。
・日本仕様エンジン…1.8L 直4DOHC+モーターのハイブリッドシステム(システム出力122ps)
・北米仕様エンジン…1.8L 直4DOHC+モーターのハイブリッドシステム(システム出力122ps)
・欧州仕様エンジン…1.8L 直4DOHC+モーターのハイブリッドシステム(システム出力122ps)
■TOYOTA 86(2017年4月の国内販売台数/553台)
日本での評価…75点
マイナーチェンジで走りの実力が高められ、操る楽しさに磨きがかけられるなど、魅力を増している。貴重なFRクーペで、人気も堅調だ。
北米での評価…75点
社会のなかで定着はしたが、スポーツカーのメインストリームにはなっていない。日本のスポーツカーが爆発的ブームとなった1990年代末。映画「ザ・ファースト・アンド・フューリアス(邦題:ワイルドスピード)」の世界観を継承するトヨタのマーケティング手法は、あくまでも〝限られた人たちに向けたメッセージに思える。アメリカ人にとって86はまだまだ特殊な日本車というイメージだ。
欧州での評価…80点
ボディサイズは若干異なるものの、日本車としてはロードスターとの近似点も多く感じるGT86。こちらもパワーで勝負するのではなく剛性のあるシャシーと、小気味よいシフトフィーリング、そして自然吸気エンジンの回転の吹け上がりを楽しむクルマ。どんなに疲れている時でもこのクルマに乗ると難しいことを忘れて笑顔が戻るはずだ。しかし日常で使うとなると少し不自由も覚えるかも。
・日本仕様エンジン…2L 水平対向4気筒(6MT車:207ps/21.6kgm)(6AT車:200ps/20.9kgm)
・北米仕様エンジン…2L 水平対向4気筒(6MT車:207ps)(6AT車:200ps)、リアスポイラーなし
・欧州仕様エンジン…2L 水平対向4気筒DOHC(200ps/20.9kgm)、フェンダーロゴなどなし
■LEXUS LC(2017年4月の国内販売台数/89台)
日本での評価…82点
やっと欧州の高級スポーツクーペに太刀打ちできる水準に達した。ライバルの多さが今後の不安材料か。
北米での評価…90点
そもそもLCを量産化するきっかけとなったのが、米西海岸ペブルビーチでのコンコルド・エレガンスの席上、米メディア関係者からトヨタに対して「トヨタはコンセプトカーは素敵だが、それをそのまま市場に出すことはない」と皮肉を言われたことによる。
よって、実際にLCが量産されたことをアメリカ人はとても驚き、そして喜んでいる。価格設定も日本より安いこともあり、順調に販売を伸ばす。
欧州での評価…70点*
フランスのテストドライバーはハイブリッドよりも5L NAのガソリンを好んでいる。しかし消費者はきっとハイブリッドを選ぶ層が多いはず。またデザインもアグレッシブで、ハンドリングと快適性の両立はすばらしい。
しかし、重すぎる車重や、小さなトランクは残念。またトランスミッションはスムーズだが、高回転まで回す時はマニュアルモードにしないとギクシャクしてしまうのが気になる。
*フランスでの一般的な評価
・日本仕様エンジン…LC500:5L V8DOHC(477ps/55.1kgm)、LC500h:3.5L V6DOHC(システム出力359ps)
・北米仕様エンジン…LC500:5L V8DOHC(477ps/55.1kgm)、LC500h:3.5L V6DOHC(システム出力359ps)
・欧州仕様エンジン…LC500:5L V8DOHC(477ps/55.1kgm)、LC500h:3.5L V6DOHC(システム出力359ps)
■HONDA NSX(2017年4月の国内販売台数/21台)
日本での評価…70点
初代モデルと比べると大味で、こだわりが不足。欲しい時に買えないようでは、盛り上がりようがない。
北米での評価…90点
コンセプトモデルがデトロイトショーに初登場した際、ホンダの伊東社長(当時)が、「製造をアメリカで行う」と言った瞬間、会場内がどよめいたことを今でも忘れない。
時は流れて、トランプ政権によるメイド・イン・アメリカ旋風が吹き荒れている現在、ハイパフォーマンス性に加えて、オハイオ生産であるNSXには追い風が吹く。アメリカ人にとってNSXは、最上級のステイタスシンボルである。
欧州での評価…75点
サーキットでV6の咆哮を思いっきり聞いてみたい、もしくは郊外の小さな道路であたかもGTiのように身軽に遊びたい、はたまた静かにパンを買いに行きたい。そんなシーンでこのクルマはドライバーに感動を与えるだろう。
さらにいえば2kmもの距離をトヨタプリウスみたいにバッテリーだけで走ることもできる。もっともっと元気いっぱいのクルマだったらよかったのに、と思う場面は多いが。
・日本仕様エンジン…3.5L V6DOHCターボ+前後モーター(570ps+モーター前27kW、後35kW)
・北米仕様エンジン…3.5L V6DOHCターボ+前後モーター(570ps+モーター前27kW、後35kW)
・欧州仕様エンジン…3.5L V6DOHCターボ+前後モーター(570ps+モーター前27kW、後35kW)
■MAZDA ロードスター(2017年4月の国内販売台数/524台)
日本での評価…82点
ロードスターとRFは、ともに走りの楽しさに満ち、爽快な良質のスポーツカー。2シーターゆえ買い手が選ばれるが、それでも評価は高い。
北米での評価…90点
ミヤータの愛称で親しまれる北米仕様ロードスター。NDについても主力市場であるアメリカでは、西海岸にあるマツダ北米オペレーションの、“自らがマツダの大ファン”であるアメリカ人技術者たちが、徹底的に作り込んできた。その想いは全米のロードスターユーザーの心に直結している。2Lユニットはそもそも北米向けであり、RFについてもアメリカ人ユーザーの満足度はとても高い。
欧州での評価…75点
軽量さと俊敏さは特筆すべきものがある。ロードスターは運転の楽しさとはいったいなんなのか、というようなある種の「原点」を思い起こさせてくれる1台。
たとえアマチュアドライバーでもワインディングのカーブを走る度に、クルマの楽しさをもたらせてくれる。もちろん効率的にパワーを生み出すハイパワー車ではないが、だからこその魅力を強く持っている。ヨーロッパでの人気はとても高い。
・日本仕様エンジン…1.5L 直4DOHC(131ps/15.3kgm)、6MT&6AT、i-stopとi-ELOOPは設定あり
・北米仕様エンジン…2L 直4DOHC(157ps/20.4kgm)、6MT&6AT、i-stopとi-ELOOPは設定なし
・欧州仕様エンジン…1.5L 直4DOHC(131ps/15.3kgm)、2L 直4DOHC(160ps/20.5kgm)、6MTのみ
※スペックはソフトトップのもの
■NISSAN GT-R(2017年4月の国内販売台数/63台)
日本での評価…80点
マイナーチェンジで走りの実力に磨きがかけられるとともに快適性能もアップ。登場から10年たったが、一度乗れば誰でも欲しくなるはず。
北米での評価…90点
「この価格でこのハイパフォーマンスはあり得ない」。R35としてGT-Rが北米に初上陸して以来、この言葉を幾度となくGT-Rユーザーから聞いてきた。フェラーリでもなく、コルベットでもない日本車の超絶メカの集大成であるGT-Rに対して、アメリカ人がネガティブなコメントをいうことはあり得ない。いまでも、北米各地のモーターショーでは多くの人がGT-Rのコックピットに笑顔で乗り込む。
欧州での評価…60点*
登場からかなりの年月が経過するが今日でも一線級の驚異的な性能、そして高い次元での価格とパフォーマンスの両立は特筆すべきものがある。快適性も上々だ。しかしながらハイパフォーマンスカーに期待するエンジンサウンドは、あくまでV6のそれであり少し残念。また車重の重さはマルチパフォーマンスカーとしては正しいかもしれないが、サーキットなどではその重さを感じるシーンもある。
*フランスでの一般的な評価
・日本仕様エンジン…3.8L V6DOHCターボ(570ps/6800rpm、65.0kgm/3300~5800rpm)
・北米仕様エンジン…3.8L V6DOHCターボ(570ps/6800rpm、65.0kgm/3300~5800rpm)
・欧州仕様エンジン…3.8L V6DOHCターボ(570ps/6800rpm、65.0kgm/3300~5800rpm)
■SUBARU アウトバック(2017年4月の国内販売台数/591台)
日本での評価…70点
北米を見据えた大柄なボディをまとい、エンジンも1機種だけで日本では盛り上がりに欠けるが、ファンは存在するし、指名買いも多いはず。
北米での評価…85点
2000年代初頭、「目指せアメリカ」を掲げて商品企画の大規模な方向転換を行った結果、車両の大型化が加速したスバル。アウトバックについても、日本市場では少し大きい印象だが、アメリカ市場ではベストマッチ。家族愛や地球愛を謳う「LOVEキャンペーン」も奏功して、アメリカ市場で快進撃を続けるスバルのなかで、アウトバックはアウトドアとシティドライブ共用車として絶大な人気あり。
欧州での評価…50点
このたくましい「道具」は決して美しくはない。ハイレベルの4WD性能を持ち、価格を考えるとお買い得感もある。しかし、ブレーキの制動距離が長く、その要因であろう車体の揺れは時にイライラするほど。それはタイヤの性能のせいだろう。対照的にシャシーはバランスがよく、ダンパーもとてもいい。フランスでは2Lのディーゼルのみだが、CVTはもう少しレスポンスを改善してほしい。
・日本仕様エンジン…2.5L 水平対向4気筒DOHC(175ps/24.0kgm)。エンジンは1タイプのみ
・北米仕様エンジン…2.5L 水平対向4気筒DOHC(177ps)、3.6L 水平対向6気筒DOHC(260ps)
・欧州仕様エンジン…2.5L 水平対向4気筒(175ps)、2L 水平対向4気筒ディーゼルターボ(150ps)
■MAZDA CX-5(2017年4月の販売台数/2253台)
日本での評価…75点
キープコンセプトだが、走りの実力と快適性は大幅にアップ。ユーザーの評判もよく、出だし好調だが、長期安定にはカンフル剤が必要か?
北米での評価…85点
アメリカでの激戦区であるミッドサイズSUV市場。よりラグジュアリーに、よりダイナミックにという市場の声が増すなか、デザインを刷新した新型CX-5は好評だ。また、コンクリート路面が多いアメリカでは、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)性能がユーザーのクルマ選びを左右するが、旧型に比べてNVH性能が大きく進化した新型に対して、マツダのディーラーも絶賛する。
欧州での評価…75点
数多くあるSUVのなかでも、CX-5はバランスのいい性能が発揮できている。それは快適さ、運転の楽しみ、そして幅広い人に対応する実用性、といった3点を最高のバランスで両立できるSUVといってもいい。そのバランスのよさはSUVのなかでもベストなチョイスともいえるかもしれない。モデルチェンジした新型で、CX-5はその立ち位置をいっそう強固なものにしたといえるだろう。
・日本仕様エンジン…2Lガソリン、2.5Lガソリン、2.2Lディーゼルターボの3タイプをラインアップ
・北米仕様エンジン…2.5Lガソリン、2.2Lディーゼルターボ、カナダはさらに2Lガソリンもあり
・欧州仕様エンジン…ドイツは、2Lガソリン、2.2Lディーゼルターボ、2.5Lガソリン気筒休止式
■LEXUS RX(2017年4月の販売台数/992台)
日本での評価…70点
高級クロスオーバーSUVの先駆者で、仕上がりもいいが、やや旬を過ぎた感がある。
北米での評価…85点
長年にわたりアメリカでのレクサスの販売主力は、RXとESが二本柱だった。よって、レクサス開発陣によるRXの買い替え需要に対する配慮は極めて強い。それに応えるかのようにRXの評価は高い。最新型はかなり大柄だが、これもアメリカ人好み。
欧州での評価…70点
この落ち着きのある2トンの巨体はとても静粛性が高く、リラックスすることができる。V6エンジンが回っている時にだってそれは変わらない。惜しむべくはここフランスではそのサイズ感が少しばかり大きなこと。いかんせん高価なのもネックだ。
■NSSAN スカイライン(2017年4月の国内販売台数/132台)
日本での評価…65点
スカイラインと考えなければトータル性能の高い、上質なスポーツセダンなのだが……。
北米での評価…75点
インフィニティの定番ではあるが、現行モデルはG35としてインフィニティ化した2000年代初頭の爆発的ブームと比べると、人気はほどほど。
G35から定着している、FRを強調することでBMWのガチンコライバルというイメージが強い印象。
欧州での評価…50点
エンジンはすばらしいし、性能的にもなかなかいい線にある。価格もドイツのプレミアムブランドに対抗するには充分な競争力を持つ。しかしそのドライビングはどうも魅力に欠ける。平凡といった域を超えない。乗り味のチューニングが必要。
※スカイラインはクーペの評価。
■NISSAN リーフ(2017年4月の国内販売台数/399台)
日本での評価…65点
新型バッテリー搭載で、航続距離を大幅に伸ばしたが、まだ心理的な安心感は足りない。
北米での評価…75点
発売当初は、ほぼ同時に市場投入されたシボレーVOLTに比べて「スタイルがダサい」という言葉を多く聞いたが、テスラ「モデルS」によって米EV市場の開拓が進むと同時に、リーフも根強い人気を見せるように。今秋登場の新型への期待も高い。
欧州での評価…55点
バッテリー性能の向上で航続距離が伸びて、量産型のEVとして、より実用性が増してきたことはたしかな事実。しかしまだまだガソリンエンジンの代替にはならないし、なんせその価格の高さは消費者からEVを遠ざけているのでは? とも感じる。
■HONDA ヴェゼル(2017年4月の国内販売台数/4889台)
日本での評価…80点
飽きのこないキャラで長く付き合える。ビギナーや女性にも運転しやすく、人気も堅調。
北米での評価…75点
やはりホンダにとってのSUVの主軸はCR-Vだ。HR-V(ヴェゼル)だと「ちょっと小さいな」という声を聞く。トヨタCH-Rでも同じことだが、コンパクトクロスオーバーという領域が、アメリカではまだ成長しづらいジャンルなんだと思う。
欧州での評価…55点
高い、そこまで快適ではない、少しノイズが気になる、そんなことからも欧州市場でヴェゼルはベストな選択肢とは呼べない。もしホンダがヴェゼルハイブリッドをフランス市場に投入したのなら、他社にはない選択肢として勝負にはなるかもしれない。
■3つのエリアでの評価に大きく差がついたのは?
3エリアの評価点をまとめたのが上の表。3エリアにおける評価の差が10点以内と少なかったのは、プリウス、86、CX-5の3台。特に86は3つエリアの評価点の差が5点と極めて少なく、かついずれの地域でもなかなかの評価を獲得した。
逆にエリアによって評価の差が大きかったのは、GT-Rとアウトバック。特に北米と欧州との間で差がついた。アウトバックの欧州での評価、「美しくない」が涙を誘う。
■北米人気、欧州苦戦。レクサスのナゼ?
レクサスの北米での成功を伝説的と評価する人もいる。そのいっぽうで欧州では苦戦が続く。その不思議を片岡英明が解説。
歴史ある欧州勢相手に苦戦するレクサスだが、NXは斬新なデザインで高い評価を受けた
ヨーロッパは今も貴族が社会の中枢を担う。また、歴史と伝統を重んじる風潮が強く、民族ごとの団結、絆も強い。当然、プライドも高いから新しいモノに拒絶反応を示す保守層も多いのである。だからレクサスだけでなく、ホンダやスバルなどの日本勢は、販売面において苦戦を強いられることが多い。
とくに高級車は、メルセデスベンツやBMW、ロールスロイス、ジャガーなど、歴史ある名門ブランドが多く、信奉者がたくさんいる。レクサスやインフィニティがどんなにいいクルマを出しても見向きもしない。食わず嫌いの頑固者が多いのだ。これは高級時計にもいえることで、セイコーやシチズンなどが先進的で魅力的な時計を出しても手に取ろうとしないのである。
宗教にも似た頑固さで、いいとわかっても、なかなか実力を認めない。もちろん、レクサス以上にこだわって作り、
走らせても上をいく味わいの強い高級車もある。レクサスほど平均点は高くないが、突出した魅力と個性が光る。
いっぽう建国して200年ちょっとのアメリカは、ヨーロッパと気質が違う。優れていれば新しいモノでも寛容に受け入れる。レクサスはそれゆえ成功した。とくに西海岸は好奇心旺盛で、日本車をひいきにするファンは多い。
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