各レース100人ほどの関係者が行動をともにしている
2023年9月22~24日に開催されたF1日本グランプリ。先立つ木曜日には各チームのピットやホスピタリティテントが設営されていたが、そのうちのひとつ、アルピーヌF1チームのピットに潜入した。
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F1マシンの後方はトップシークレットが多い!
フレンチブルーのパーティションで区切られた向こう側が、関係者以外立ち入り禁止となる禁断のピットエリア。チームの広報によると、マシンやツールは前戦の開催地、シンガポールから専用のエアカーゴで送られ月曜日に日本に到着。その量はおよそ36トン! その他のホスピタリティ関係はチームの本拠地、イギリスのエンストンから船便で運ばれたもの。
この日(木曜日)はF1マシンの走行がなかったので、ピット内ではマシンの組み立て作業が行なわれていた。各種のカウルが外されている状態のF1マシンを直近で見ることは稀なことだが、マシンを後方から撮影するのは厳禁とされていた。
ウイングカー規定が採用されている現代のF1マシンは、リアまわりの空力処理、とくにリアのフロアまわりのデザインはトップシークレットなので、その点についてはチームも神経を尖らせているように感じられた。
ピット内で働いているチームスタッフは、エンジニアやメカニックを合わせMAX60人。それとは別にロジスティクスやマーケティング、コミュニケーションのメンバーがいるので、各レース、100人ほどの関係者が行動をともにしている。
ちなみにホームのエンストンでは、シャシーとギアボックス、サスペンションなどの開発を行ない、フランスのパリ近郊のファクトリーではパワーユニットの開発・製造を行なっている。このふたつのファクトリーでアルピーヌF1の開発に携わっているスタッフは、約1000名といった規模だ。
マシンはバラバラの状態で運ばれる
さてピットロード側には、車体から取り外されたウイングやカウルが並べられているが、今のF1マシンはモノコックを含め、8割がCFRP(カーボンファイバー)で作られている。2023年のレギュレーションでは、F1の最低重量は798kg。これを下回るように車体を設計し、バラストを置く場所を工夫することでバランスの最適化を図っている。
ところで、マシンはシャシー、パワーユニット、ギアボックスなどがバラバラの状態でサーキットに運び込まれるので、水曜日にピットで仮組みし、木曜日にはメジャーメント、レーザーを使った計測器(#10 ガスリーのマシンの右前に見える、白い測量機のような機械)で、非常に細かいチェック作業を行なっていた。メカニックは、1台のマシンに12名が付く。
F1マシンには200個以上のセンサーが取り付けられている
マシンのサイドにラップトップコンピュータとモニターがそれぞれ4台並んでいるが、右から順にレースエンジニア、パフォーマンスエンジニア、電気関係のテクニカルエンジニア、一番奥(一番左)がパワーユニット担当エンジニアの席となる。F1マシンには200個以上のセンサーが取り付けられていて、それらの情報をチェック、管理するのが役割だ。
レース中継でもよく映る、ピットウォール側の「ピットスタンド」は、一番左からストラテジーエンジニア、チームマネージャー、スポーティングディレクター、チーフエンジニアが座り、右側の2席はプラクティスや予選、決勝などで入れ替わることがあるが、土曜日などはレースエンジニアが座って、ドライバーに指示を出すことが多い。
ピットストップスペースには目盛りが記されている
さてピットストップスペースに目をやると、車体のセンター、タイヤのセンターの位置がマーキングされ、さらにそこには5cm単位で目盛りが記されているのがわかる。つまりドライバーはこの位置にピタリと止めることが求められている。それがわずか2秒という驚異的な作業を実現させることにつながっているというわけだ。
実戦でのピットインでは、1台につき25人のメカニックが飛び出してきて作業に当たる。タイヤ交換に用いるホイールガンは、1本のタイヤにつき2つ用意されていて、ひとつがメインでもうひとつはバックアップ。 スペアパーツも大量に持ち込まれていて、モノコックも各レースに1つのスペア。エンジンカバーは10~12個、フロントウイングは6つが基準とのこと。シートの下にはドリンクを入れておく容器がついているのがわかるだろうか?
タイヤウォーマーは乗用車1台分の価格
タイヤについては、1レースにつき各ドライバー20セット用意され、そのうち13セットはドライタイヤ。4セットがインターミディエート。残りの3セットがウエット。タイヤの側面をよく見ると、1本ずつのタイヤにバーコードが貼ってあり、これで車体との紐付けを管理。その隣の「EO」はエスティバン・オコン=ドライバー名。そしてマーカーで書かれた数字(31305)がセットの番号となっている。
F1のタイヤは2022年から18インチになり、かなり重たくなっていて、フロントタイヤ+ホイールの重量は19kg、リアは25kgもあるので、タイヤ交換のメカニックも業務としてフィジカルトレーニング(筋トレ)を行なっているほどだ。
ちなみにスリックタイヤに使うタイヤウォーマーは、非常に高価で1台分で乗用車の車両価格と同じぐらいといわれている。また消費電力も大きく環境に優しくないため、2024年からは廃止の方向で動いているが、いずれにせよ、F1のチーム、ピットは桁違い。
シリーズ後半戦は、こうしたピットの設備や動きにも注目してF1観戦を楽しもう。
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