瞬く間に人気モデルの座を獲得。まじめが光る
ブランニューSUV、フロンクスは、日本カー・オブ・ザ・イヤー2024-2025において、「10ベストカー」に選出され、本賞においては強力なライバルが居並ぶ中、4番目に多い得点を獲得する存在感を発揮した。
【最新モデル試乗】スズキ・フロンクスはコンパクトサイズに優れた機能を凝縮。この値段でこの完成度は見事。欲しくなる!
これまでもお伝えしてきたとおり、フロンクスはスズキの世界戦略モデル。インドで生産され日本にも展開されるグローバルカーである。どんなクルマなのか気になっている人は多いだろう。
新しい車名で知名度も高くないはずなのに、発売から短期間で受注が1万台を超えたと聞いて驚いた。月販目標1000台のところ、2024年末までにすでに5000台超が登録されたという。
フロンクスは、昨年夏にプロトタイプをクローズドコースで試乗して好感触を感じ、さらに正式な発売後に公道で試乗、新たな発見があった。その後も触れる機会はあったが、今回、改めてじっくりと乗った。
日本仕様は先進安全装備を充実させ、4WDを追加するとともに、足回りを専用にチューニングしたJAPAN最適モデル。その甲斐あって4WD販売比率は実に4割にも達しているという。今回試乗したモデルも4WDだ。
ボディサイズは3995×1765×1550mm。スイフト(同3860×1695×1500mm)よりもだいぶ大きいが、全長は4mを切る。クーペスタイルながら後席を含め車内空間と荷室は十分に広い。インテリアの抑揚に富んだ造形と日本専用というカラーコーディネートはなかなか印象的だ。
前席には、このクラスとしては驚くほどたっぷりとした上等なシートが与えられている。ただし、ポジション的には、ややペダルが手前にある。足に合わせると手が遠く、手に合わせると足が近い印象を受けた。
後席空間はくつろげる。頭上には平均+αの体格の筆者が座って2cmくらいの隙間ができ、横方向にも余裕がある。センタートンネルは低く、足元は広い。前席下への足入れ性も良好だ。乗降性もよく考えられている。サイドシルは、高さが抑えられているほか、シートのカドやドアインナーパネルの形状も工夫され、足が通りやすい。
ラゲッジスペースは必要十分。剛性確保のためかテールゲートの開口部とフロアの段差が大きく、荷物の出し入れ性はさほどよくないが、サブトランクは4WDでもかなり大きく、リアシートを倒すと十分に広いフラットスペースが出現する。フロアボードの高さが調節できるもの親切だ。
装備面は、全方位モニター付きのナビを標準化するなど充実している。細かなところでは、前席シートヒーター、リアヒーターダクト、ドアミラーヒーターなどが日本専用に設定された。だが、検討はしたそうだが、後席用のエアコン吹き出しはない。
4気筒エンジンと6速ATが心地よさを演出。フットワークも光る!
パワートレーンはマイルドHV。自然吸気の1.5リッター直4と6速トルコンATの組み合わせだ。素直な出力特性で扱いやすく、マイルドHVが効いてアイドリングストップからの再発進もスムーズ。加速をアシストしてくれる感覚もある。
サウンドも心地いい。低く響く4気筒の鼓動は走りのよさを想起させ、回しても安っぽさがない。3気筒+CVTのスイフトもいいが、4気筒+トルコンATがもたらす走り味は魅力的だとあらためて感じた。走行モードをスポーツに切り替えると、3000rpm以上を多用するようになり、標準装備のパドルを操ると意外なほどアクティブに走れる。
ただし、記憶ではFWDのほうが走りがより軽快で、音や振動もよく抑えられていた。4WDは音や振動の面で不利だと開発者も認めていたが、ややゴロゴロ感がある。
全体の静粛性はまずまず。パワートレーンの発する音はそれなりに入ってくるが、あまり気にならない。同乗者との会話明瞭度が高い点はフロンクスの強みのひとつだ。
ハンドリングは好印象。攻めた走りでの高いバランスは、一般道を普通に走っていても感じられる。開発関係者は、「普段のドライブでドライバーの思ったとおりに操縦できること、そしてロングドライブでの快適性と安心感にこだわった」という。確かに走りにはダイレクト感と安心感がある。タイヤが路面を捉える感覚が伝わってくるのがいい。
乗り心地はしっかりとした印象。引き締まった足回りながら、突起や段差を乗り越えたときのハーシュネスはよく抑えられている。FWDと比較すると4WDは市街地ではやや硬さを感じものの、不快なほどではない。
メーター類はシンプルで視認性に優れる。パネルに映し出すタイプのヘッドアップディスプレイも見やすかった。最近、老眼が気になってきた筆者でもピントが合わせやすい。ルームミラーは適度に目の位置から離れていて見やすい。インフォテインメント系も頑張っている。最先端でなくても、これだけ機能が充実していれば不便に感じることはない。なお、4WDにはスノーモードやヒルディセントなど、走りの面でも降雪地ユーザーのためのデバイスが用意されている。機会を見てその効果を試してみたい。
通知表/スズキ・フロンクス(4WD)/価格:273万9000円
総合評価:70点
Final Comment
すべてにソツなくコストパフォーマンス抜群
スズキ入魂のコンパクトSUVである
ますます人気が高まっているコンパクトSUVには、サイズや価格の近い競合モデルが多い。そんな中でもフロンクスは印象的な内外装デザインと充実した装備、走りのよさなどをアピールし、割安感のある価格設定を実現したのだから魅力的である。全体的にそつのない仕上がりで、大きな弱点は見受けられない。実走テストで良好な燃費を達成した点も立派だ。受注状況からは、フロンクスを待っていた層が多かった実態がうかがえる。現在の勢いをいかに維持していくのか、動向を見守っていきたい。
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みんなのコメント
展示車を見る限りコンパクト感はあるが
乗り飽きてしまうのでは?