2020年10月15日に正式発表、11月に発売開始となる予定のスバル「新型レヴォーグ」。先行予約は、すでに8月20日から全国のスバルディーラーで開始されている。
新型はSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用し、新世代の運転支援システム「アイサイトX」の搭載、大幅な進化を遂げていることで注目を集めている。
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そんな新型レヴォーグの走りの実力はいかほどのものなのか!? 歴代レガシィツーリングワゴンを初代~4代目まで乗り継いだ国沢親方が判定する!
※本稿は2020年9月のものです
文/国沢光宏
写真/小林邦寿、SUBARU
ベストカー2020年10月26日号
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■スバルのDNAをしっかりと注入するための”こだわり”
ユーザーからすれば試乗できていないだろうし、情報もアイサイトX(エックス)&チョイ乗り記事くらいしか出ていない。にもかかわらず新型レヴォーグの売れゆきが順調だという。スバル、やっぱり期待されているかもしれません。
そんななか、新型レヴォーグの試乗会を袖ケ浦サーキットで行うという。走りの楽しさを前面に打ち出すスバルながら、考えてみたらサーキットでの試乗会は長いことしていないです。
まず、決して安い価格といえないのに売れ筋になっている『STI Sport(STIスポーツ)』から。このグレードの特徴は世界で最も優れていると評価されている「ZF」製ダンパーを採用している点にある。ZFよりザックス、と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
2020年8月20日に先行予約を開始し、2020年10月15日発表予定の新型レヴォーグ(写真はSTI Sport)
STI Sport EXのインテリア。インパネ中央には11.6インチのセンターインフォメーションディスプレイを採用し、メーターには12.3インチフル液晶タイプを採用。いずれも国内でのスバル車では初めての採用となる
なんたってF1をはじめ、競技用ダンパーじゃ圧倒的なシェアである。メルセデスやBMW、ポルシェなどの乗り味もザックスのダンパーによるものが大きい。なら日本勢も使えばいいじゃない、と思うだろうが、絶品と言われるドイツ本国製ダンパーは高価でなかなか使えないのだった。
なぜ新型レヴォーグに採用したのかといえば、正直なところわからない。
開発チームに聞くと「スバルのDNAが入った青い血が流れていると自称する五島さんの決断」という人もいれば「五島さんはコスト管理が厳しい」という人もいる。いずれにせよ、最終的に判断したのが開発責任者の五島賢さんであることは間違いない。そんなザックスの素晴らしさを味わうなら、街中でもサーキットでも「コンフォート」でしょう。
■コーナーでのスタビリティの高さは「猫や魔法の絨毯」
最初の動き出しこそ滑らかなのだけれど、入力が大きくなっていくと徐々に粘り始める。もう少し具体的に説明すると、コーナーに進入すべくハンドル切り込んだ場合、最初は素直にロールし始めるが、だからといってフワフワなイメージなし! そしてコーナーのクリッピングで最大の横Gがかかった時は、ドシッとしたスタビリティを出しているのだった。
少しばかり誇張して表現するなら、猫足や魔法の絨毯ってこんな乗り心地だと勝手に想像している。実際のクルマでいうと、よくできたラリー車ですね。路面は凸凹してるのに、まるでフラットなコースを走っているように感じるほどサスペンションが動く。
左が新型レヴォーグのSTI Sportで、右が先代型レヴォーグの1.6STI Sport。新型はSGP+フルインナーフレーム構造の採用により、ねじり剛性を44%向上する
2ピニオン電動パワステの採用により、なめらかで応答遅れのないダイレクトなステアフィールを実現。さらにフロントを25%、リアを5~10%ロング化して乗り心地を向上させたほか、マスオフセットを15%低減してステアフィールを向上
今回も袖ケ浦サーキットの高い縁石に乗り上げたりしてみたものの、身構えても拍子抜けするほど滑らかに乗り上げ、脱出してしまう。
だったら4段切り替えモードは不要かとなれば、そんなことない。一番ハードな『スポーツ+』で走れば、あらま! スポーツカーのようにシャッキリした挙動になる。標準装着されているヨコハマの『ブルーアースGT』は転がり抵抗とウェット性能を重視しながら、なかなかのグリップレベルを持つ。けれどスポーツ+にセットするや、アドバンA052くらいのスポーツタイヤを履きたくなるほどだった。
個人的には標準タイヤを強く推奨するけれど、高性能タイヤに履き替えても足回りはそのまんまでOKだと思う。スバルによれば街中での推奨は「ノーマル」だという。ディーラーで試乗する機会あればぜひともさらにしなやかなコンフォートを試してほしい。いまだに伝説となっている2代目レガシィのビルシュタインを確実に超えてきましたね! レガシィのDNAを感じる。
新型レヴォーグは初代レガシィツーリングワゴンから綿々と受け継がれる”より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に”というスバルのGT思想を継承する
エンジンには177ps/30.6kgmの新開発直噴1.8L水平対向ターボを搭載
となると、気になるのが動力性能かと。新型レヴォーグは従来型に存在した2Lターボを設定していない。あまり期待せずアクセル踏むと、意外や意外! 元気です。考えてみたら最大トルクはターボなしの3000ccと同等の300Nm。加えて極低回転域から小径のタービンを回して過給しているそうな。したがってターボラグも感じない。レスポンスいいです。
もちろん絶対的な出力は177psである。サーキットだと物足りない。でも街中なら必要にして十分なパワーだと思う。新設計となるCB18はエンジン自体の余力が大きいということで、遠からず200ps/330Nmくらいのロムチューンも出てくるんじゃなかろうか。多少燃費落ちるだろうけれど、一段と気持ちいい走りを楽しめるようになることだろう。
また、使用燃料にレギュラーが強く推奨されている。ハイオクはオクタン価こそ高いけれど、リーンバーン燃焼時の着火性でレギュラーより悪い。ハイオクのほうがパワーが出ると思っている人も多いようだけれど、そら間違い。少なくともCB18だとリーンバーン領域の燃焼が悪くなってしまうという。とはいえ派手さを感じないエンジンは新型レヴォーグの数少ない課題。私ならロムチューンを考えますね!
続いてふつうのサスペンションとなる『GT-H』を試す。ZFのダンパーより大きく劣るかと思いきや、それほどでもない! どうやら開発途中にZFとの比較を何度も行ったため、日本のメーカーが気合い入れてきたようなのだ。そらそうでしょう。ダンパーの仕上がり、乗り比べたらハッキリわかりますから。ということで、乗り心地とハンドリングのバランスはいい。
サーキットで限界走行しても、レベルの低いアンダーステアになったり、急に限界を迎えてテールが流れたりしない。そもそも現行インプレッサから採用されている新世代プラットフォームは、奥ゆきがあって高い評価を得ている。従来型レヴォーグも決してレベルの低いハンドリングではなかったけれど(今回乗り比べ用に従来型車が用意されていた)、一段とレベルアップした感じ。
■一般道をふつうに走っても欧州車のような仕上がりに
日本車だとホンダ「シビックタイプR」などスポーツモデルにしか使われていない正確な操舵フィールを実現する2ピニオンタイプの電動パワステや、エンジン負圧を使わないシャープな電動ブレーキブースター(欧州車が好んで採用してます)もいい仕事をしており、日本車というより欧州車のような乗り味になっている。一般道をふつうの速度で走っても違いはわかるだろう。
欧州車に負けない仕上がりの走りを見せる新型レヴォーグ。国沢親方は「安いとは言えないが、真正面から輸入車と勝負できる!」と太鼓判を押す
さて。新型レヴォーグをどう考えたらいいだろう。絶対的な価格は決して安いとは言えない。とはいえアイサイトは格段に進化しているし、嬉しいことに歩行者エアバッグまで標準装備されている(助手席の座面にまでエアバッグがつく!)。安全と楽しさを両立させているという点からすれば、輸入車と真正面から勝負できると思う。ぜひ試乗してみることを薦めたい。
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