ルノーがクーペSUVを描くワケ
英国編集部が長期テスト車に迎え入れ、フランスではプジョー3008を抜いてCセグメントSUVのベストセラーになるなど、欧州では注目の1台になっているルノー・アルカナが、来年春に日本に上陸するという。
【画像】ルノー初のクーペSUV アルカナ【細部まで見る】 全25枚
しかもルノーの電動化戦略E-TECH(Eテック)の一角を占めるハイブリッドシステムを搭載する予定だ。
日本市場ではジャーマンプレミアム以外で初のクーペSUV、新車の輸入車では唯一のプラグインではないハイブリッド車になるこのアルカナの先行生産車に、特設コースで試乗することができた。
それにしてもなぜルノーがクーペSUVを手がけたのか。
試乗とは別に、プログラムダイレクターとデザイナーにオンラインで話を聞くことができたので、そこで得た情報もお伝えする。
クーペSUVを作ろうと思った理由は、プレミアムブランドの市場に食い込んでいきたいからだという。すでに同種のモデルがジャーマンプレミアムから登場していたので、それ以外で最初に出すことにこだわったそうだ。
背景にあるのは今年1月に発表された新戦略「ルノールシオン(Renaulution)」だ。
ここでルカ・デ・メオCEOが掲げたのが「ボリュームからバリューへ」だった。その象徴として、ルノー5(サンク)の電動化による復活をアナウンスしたことを、覚えている人もいるだろう。
クーペのラインと高い地上高
アルカナのデザインはサイドから見たときの滑らかなライン、フロントやリアのワイド感がポイントと語っていた。シルエットではルーフからリアスポイラーまで滑らかな曲線でつなげることに気を配ったとのこと。
実車を目の前にすると、200mmの最低地上高がSUVらしさをアピールする一方、ルーフラインはきれいで、初のクーペSUVとは思えないまとまりがある。
横長のグリルやヘッドランプ、赤いラインが中央に伸びるリアコンビランプなどにより、同じCセグメントのメガーヌに近付けたという説明も理解できた。
ただしプラットフォームはメガーヌと共通ではなく、ルーテシアやキャプチャーと同じCMF-Bを使う。
全高はキャプチャーより低く
CMF-Bはメガーヌ用より軽量であるうえに、世代が新しい分ADAS対応などに長けているというのが理由だ。
欧州仕様のホイールベースは2720mm、ボディサイズは4568×1821×1576mmで、日本仕様のメガーヌ・スポーツツアラーと比べるとボディは50mm以上短いがホイールベースは10mm長く、幅は5mmほど広くなり、高さはキャプチャーより15mmほど低い。この数字もクーペらしく見える理由だろう。
グレードごとの差別化にも留意したとのこと。
たしかに日本に導入される見込みのR.S.ラインは、フロントにF1タイプのエアインテークブレードを内蔵し、ホイールは赤いアクセントの入った専用デザインとするなど、精悍さが際立つ。
“ボリュームからバリュー” 内装は?
インテリアもR.S.ラインということで、助手席側にカーボン調パネルや赤いラインを入れスポーティに装っている。細かいドットの入ったレザーとアルカンターラのコンビとなるシートも、R.S.ライン独自の装備だ。
クーペでありながらキャビンの広さにこだわったことにも触れていた。
その言葉どおりで、リアは座面を低くしたりしていないのに、身長170cmの僕ならルーフに頭が触れることはなく、足元にも余裕がある。
480Lの荷室容積を持つラゲッジスペースも奥行きがたっぷりしていた。
もう1つの注目点であるハイブリッドシステムはF1エンジニアも開発に関わったとのことで、1エンジン2モーター、ドッグクラッチ式トランスミッションなど共通部分もある。マネジメントのソフトウェアもF1から提供されたという。
トランスミッションはエンジンに4速、メインモーターに2速を備え、それぞれにニュートラルもあるのでトータルで15通りのモードを持つ。
サブモーターのHSG(ハイボルテージ・スターター・ジェネレーター)は変速時に瞬時に回ってショックを吸収する役目も持つ。
エンジン+2モーター どんな感じ?
発進はモーターのみで、途中からエンジンが始動するのは、他の多くのハイブリッド車と同じ。
ただしエンジンは速度に合わせて吹け上がり、スロットルペダルを緩めるとギアチェンジによって回転が落ちる。
HSGのおかげで変速時のショックはないが、ダイレクト感にはあふれていて、ワイドレシオのデュアルクラッチトランスミッションのような感覚だ。
スロットルから足を離せばエネルギー回生が始まり、ブレーキペダルを踏むとそれが強まるが、スポーツモードでは減速時にもエンジンを回すなど、走りを好むユーザーを想定したチューニングだった。自然なペダルタッチも好印象だった。
R.S.ラインということでサスペンションは固めに仕立てたそうだが、欧州仕様の車両重量は1435kgとメガーヌやキャプチャーより重く、ホイールベースやトレッドに余裕があるうえに、タイヤサイズは215/55 R18でキャプチャーと同じなので、乗り心地はルノーらしいフラット感やしっとり感を得ることができた。
見た目だけじゃない、電動化時代の新モデル
ハンドリングもロングホイールベースとワイドトレッドが効いているようで、駆動用電池搭載による低重心化もあり、SUVで気になる腰高感はなく、身のこなしは自然。
キャプチャーよりもルーテシアに近い感覚で曲がっていけた。
クーペSUVボディは見た目のインパクトだけでなく、快適性と操縦性の高次元両立にも貢献していた。
燃費だけでなく“走り味”も大切にしたハイブリッドシステムに通じるところがあった。
距離を重ねるほど好きになるという点で、アルカナもまたルノーそのものだった。
ルノー・アルカナ スペック(数値はすべて欧州仕様値)
全長:4568mm
全幅:1821mm
全高:1576mm
0-100km/h加速:10.8秒
CO2排出量:108g/km
車両重量:1435kg
エンジン形式:1598cc直4
使用燃料:ガソリン
システム最高出力:143ps
最高出力(エンジン):94ps
最大トルク(エンジン):15.1kg-m/600rpm
最高出力(Eモーター):49ps
最大トルク(Eモーター):20.9kg-m
ギアボックス:エンジン4速/メインモーター2速
最低地上高:200mm
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