フォルクスワーゲンのコンパクトSUV 「T-CROSS」が2024年7月にマイナーチェンジを受けたが、実際に乗ってみると驚きの連続だった。
マイナーチェンジのニュース資料を読んだ段階では、灯火類やバンパーデザインの変更、そしてインテリアではソフトパッドの採用で質感を向上。そしてトラベルアシストが標準装備になり、レーンキープアシストなどの最新の運転支援システムを搭載したという内容だった。
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そのため「ふ~ん」とだけ頷き、特に琴線に触れるような変化は感じていなかった。しかし、実際のそのT-CROSSに試乗してみると「え?え~T-CROSSってこんなに良かったっけ?」と感じさせる場面がたくさん出てきたのだ。
2019年にデビューしたBセグメントのSUVは狭い日本の道路、欧州の市街地での使い勝手が良く、グローバルではすでに120万台を超えるベストセラーモデルになっている。日本でも日本自動車輸入組合の年間モデル別新車登録台数では3年連続で1位を記録していて、国内でも広く受け入れられているモデルだった。それが今回のMCでさらに磨きがかかり、販売台数が加速するのではないかと想像してしまうのだ。
その驚きの連続とは、クルマを走らせる度に「ねっとり」とした感触がすべての操作系にあって、手応えがありデジタル感を全く感じないところが素晴らしい。
アクセルを少し踏んで走り出すと、その乗り心地で「お~いいじゃん」ってなる。市街地の常用速度域ではすべての範囲で乗り心地が良い。しっとりとした感触と入力を丸くする減衰はお見事。ステアリングを切れば、そこもまたねっとりとした手応えで、少し柔らかいバターにナイフがスッと入っていく感触。
かつてパワーステアリングが油圧で作動していた時代の感触そのものと言っていい。近年は電気信号でアシストしているため、そのねっとりとした手応えは薄く、機械的な感触を感じるモデルが多い。
そして駐車場などでの細かな動きが必要な場面では、半クラッチがあまり得意でないという印象だったが、そこも改善されており、滑らかなクリープをするようになり、DSGの制御変更も成功していた。
そしてブレーキのタッチまでが気持ち良いのだ。ブレーキのタッチは人間がアジャストしてしまうため、ファーストタッチで感触が決まる。そのファーストタッチで、バッチリ決まるのだ。思った通りの、期待どおりの減速Gが自分の踏力とシンクロするのである。
タイヤを見れば18インチサイズを履いており、このサイズでこの乗り心地であれば言うことはない。215/45-18サイズでエアボリュームは決して大きくないのに、不快な入力はないのだ。こうした乗り心地はシートも影響してくるが、そのシートもソフト目なこともプラスに働いていると感じる。
そして特筆は静粛性の向上だ。これは申し訳ないが前モデルより格段に向上していて、ひとクラス上の静粛性になっていた。静粛性向上に関する資料はないが、遮音材や制振材などの投入は行なわれているはずだ。
したがって、乗ってみるとこの静粛性とねっとりとした操作系、期待どおりの反応といった性能は高いレベルにあり、車格は上がったと言っていい。
試乗車はTSI R-Lineだったが、ロゴが大きく変化した。じつは「R」のロゴがGTIより上級に位置する「R」モデルと同じロゴに変わったのだ。だから、最初に見たときに「え?Rなの?」って勘違いをしてしまう。こうしたデザイン・インパクトも狙ったマイナーチェンジには驚きの連続になるわけだ。
エクステリアも灯火類とバンパーデザインの変更なのだが、バンパー左右のエアダクトやアンダーガード、それを強調するかのようにシルバートリムでまとめるデザインで力強さ、アクティブさを感じさせ見た目の印象もよくなっている。
フェンダーアーチにはバンパー下部から繋がるように黒くオーバーフェンダーのように見せ、サイドステップを通じてリヤへと繋がり、クロスオーバー、SUVらしい印象を受ける。さらにサイドステップにもプレスラインの強いデザインがあり、ボディサイドのドアパネルのプレスラインとパラレルなデザインとしているのも好印象だ。
インテリアではソフトパッドの配置で上質感がプラスされて、車格が上がった印象はある。もっとも前モデルは樹脂部が多く、すこしチープな印象があったため、その印象も逆作用して上質に感じているのかもしれないが。
シート柄がGTIのようにチェック柄になっていたのも驚いた。R-Lineは確かにトップグレードなので、こうしたデザインの採用で印象操作を狙っているのだろう。
ナビを含め空調などのインターフェイスはいまひとつ。以前より操作系はよくなっているものの、使い勝手がいいかと聞かれればNOだ。かなりの慣れが必要であり、オーナーでなければわからない操作が存在しているのも事実で、もう少し踏み込んだ改善が欲しい。
タッチパネルによる先進感が一時の流行りで、すべてタッチ式にしたい気持ちもわかるが、使う側が追いつけないことや階層に入り込まないと操作できない不便さはある。人間が使うことの前提の見直しといったところが要求ポイントになる。
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みんなのコメント
All in Safety を謳うならばそこはどうしても残念でしたという他はないんですね
「ねっとり」とか言われてもねぇ~。