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原点XS-1から最新MT-07まで「ヤマハ製パラレルツインの進化と到達点」

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原点XS-1から最新MT-07まで「ヤマハ製パラレルツインの進化と到達点」

XS-1から始まるヤマハ・パラレルツインの歴史

近年のミドルクラスは、並列2気筒──パラレルツインの新型車が続々と登場している。その背景には、単気筒と同様の感覚で搭載位置が決定できるバランサーの進化や、270度位相クランクの登場による設計の自由度が上がったこと、Vツインや3/4気筒と比較するとコストが抑えられる点などの事情があるのだが、そもそも近年のミドルクラスでパラレルツインが注目を集めるきっかけを作ったのは、ヤマハだろう。何と言っても1970年代以降の半世紀を振り返って、このエンジンの進化に最も熱心だったのはヤマハなのだから。

【画像12点】「XS-1、XTZ750スーパーテネレ、TRX850……そしてMT-07へ」ヤマハ並列2気筒の歴代車を写真で解説

ヤマハ初の4ストパラレルツインは、1970年型XS-1(650cc)である。当時は世界中の二輪メーカーがビッグバイクに注力し始めた時代で、主導権を握ったのはホンダとカワサキの4気筒車だった。しかしそんな中でもXS-1はオーソドックスな趣向のライダーから支持を集め、十数年に渡って生産が続く長寿車になった。

ちなみに当時のヤマハは、ライバル勢に安易に追随したくはなかったようで、XS-1に次ぐパラレルツインとして、1972年に2軸バランサーと一体鍛造クランクを採用するTX750、1973年にはDOHC4バルブヘッドとサイドカムチェーンが話題を呼んだTX500を発売。
もっともこの2台でパラレルツインの限界を感じたのか、以後の同社は3/4気筒に着手し、1980年代に入るとツインの主軸をV型に移すこととなった。

■ヤマハ XS-1(1970)堅実にしてオーソドックス
ヤマハ初の4ストツインとなったXS-1は、1950~1960年代に栄華を極めたブリティッシュツインを継承したかのような雰囲気。53ps/7000rpmを発揮する空冷パラレルツインの開発ベースは(意外なことに)2ストの350R1で、動弁系はOH2バルブ、クランク位相角は360度。

ヤマハが世界で初めて実用化!270度クランクの誕生

そんなヤマハが、パラレルツインの新しい扉を開けたのは1980年代末のこと。
当時の二輪業界ではパリダカールラリーを原点とするビッグオフローダーが脚光を浴び、ヤマハはその分野の主軸を単気筒のXT500/600系としていたのだが、フラットツインのBMW、Vツインのホンダやカジバに対抗するべく、1989年にXTZ750スーパーテネレを発売。この車両のエンジンは、長きに渡って停滞していた感があったパラレルツインを、イッキに進化させたと言うべき構成だったのである。
XTZ750スーパーテネレの特徴はFZ/FZR譲りの水冷DOHC5バルブヘッドだが、パラレルツインという枠の中では前傾シリンダーやダウンドラフト吸気も新機軸だった。また、クランクケースを上下分割式としながら、主要3軸を三角形に配置したことも、当時としては先進的な要素だ。

そしてXTZ750スーパーテネレの大幅発展仕様となるパリダカ用ワークスレーサー・YZE750Tは、1991年から270度位相クランクの導入を開始する。パラレルツインのクランク位相角は360度と180度の二択……という既存の概念を打ち破ったこの技術を同社が量産車に初めて採用したのは1995年型TRX850で、以後はヤマハに追随するかのような形で、世界中の多くのメーカーから270度位相クランクのパラレルツインが登場することになったのである。

■ヤマハ XTZ750スーパーテネレ(1989)パラレルツインの革命機
ヤマハ製アドベンチャーツアラーの先駆車。全面新設計の水冷パラレルツインは、動弁系がDOHC5バルブ、クランク位相角が360度で、振動対策用のバランサーは2軸式を選択。1970年代のTX500と同じく、カムチェーンは右サイドに設置。最高出力は70ps/7500rpm。

■ヤマハ YZE750T(1991年型)「XTZ750スーパーテネレベースのラリーマシン」
■ヤマハ XTZ850R(1995年型)「ラリー専用の市販レーサー」
1991~93年のパリダカにワークスYZE750Tを投入して3連覇を飾ったヤマハは、レギュレーションの改定を受け、ラリー専用車としてXTZ850R/TRXを開発。1995~98年はそのマシンで4連覇を達成した。初代XTZ850Rの価格は14万フラン(当時の為替レートで約300万円)だった

■ヤマハ TRX850(1995)「量産市販車初の270度クランク」
当時の日本車では貴重な存在だった、2気筒スーパースポーツ。専用設計のスチール製トラスフレームに搭載されるパラレルツインはTDM850用がベースだが、パリダカレーサーの技術を転用する形でクランク位相角を360→270度に変更。最高出力は83ps/7500rpm。

ヤマハ MTシリーズの代名詞「クロスプレーンコンセプト」とは?

270度位相クランクの美点と言うと、良好なトラクションが筆頭に挙がることが多いものの、ヤマハは当初から「ライダーにとってノイズとなる慣性トルクを低減し、燃焼トルクが瑞々しく感じられること」と明言。
2000年に入るとその思想を転用する形で、並列4気筒用のクロスプレーンクランクを生み出し、以後はクロスプレーンコンセプトに基づいたモデルとして、並列4気筒のYZF-R1(2009年型)、パラレルツインのXT1200Zスーパーテネレ、並列3気筒のMT-09シリーズを開発。2014年からは同社製4ストパラレルツインの原点を思わせる、MT-07シリーズの発売が始まることとなった。

MT-07が搭載するCP2エンジン(クロスプレーン2気筒の意)の特徴は、小型軽量化を念頭に置いてバランサーを1軸式としたことである(TRX850とXT1200Zスーパーテネレ、他社の同形式エンジンは2軸式)。とはいえ同社にとって第4世代となる270度位相クランクのパラレルツインは、他社の同形式エンジンとは一線を画する抜群の扱いやすさや爽快感を実現。
その魅力を幅広く展開するため、2016年以降のヤマハは個性の異なる3モデル……ネオクラシック路線のXSR700、オフロード指向が強いアドベンチャーツアラーのテネレ700、フルカウルスポーツとして開発されたYZF-R7を発売していく。

註:海外市場専用のトレーサー7を含めるとCP2エンジン搭載車は計5モデルとなる。

■あえて1軸バランサーを採用した「CP2エンジン」
ボア×ストローク:80×68.5mm、排気量:688ccという数値は、CP2エンジンを搭載する全車に共通。ただし、MT-07/XSR700/YZF-R7の最高出力・最大トルクが73ps/8750rpm、67Nm/6500rpmであるのに対して、テネレ700は最高出力発生回転数がわずかに高くて最大トルクがわずかに太い、73ps/9000rpm、69Nm/6500rpm。

ネイキッド、ネオクラシック、アドベンチャー、スーパースポーツと4機種を展開するCP2エンジン搭載車

■MT-07
初代デビューは2014年。2018年にデザイン刷新、サスペンション設定変更、シートの改良などを行ったモデルチェンジを実施。2022年にデザイン刷新、ライディングポジションの見直し、排ガス規制適合の適合などを行いモデルチェンジ。現行型(撮影車)は3世代目となる。なお、2023年は2022年型が継続販売される。価格は83万6000円。

■XSR700
初登場は2017年。2022年にフロントブレーキディスクの大径化、ヘッドライト・ポジションランプ・ウインカーのLED化、ネガポジ反転の液晶メーター採用などを行いモデルチェンジ。外観の変化はあまり無いが、現行型は実質2世代目となる。撮影車は2023年型。価格は100万1000円。

■テネレ700
初登場は2020年。フロントホイールを21インチとし、アドベンチャーモデルの中でもオフロード走破性を重視したモデルとなっている。2023年9月に、カラー液晶メーターの採用、ABSモードの追加、クイックシフター(オプション)対応などの改良を行った2024年型を発売。撮影車は2024年型で、価格は139万7000円。

■YZF-R7
スーパースポーツ「YZF-R」シリーズのミドルクラスとして、2022年に発売。撮影車は2023年型だが、ブルーの車体色は2022年型から継続。価格は105万4900円。

レポート●中村友彦 写真●岡 拓/ヤマハ 編集●上野茂岐

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みんなのコメント

2件
  • funkydynamite
    XSR700に乗ってますが、とても良いエンジンだと思います。
  • dar********
    ヤマハの4スト二気筒第一号のXS-1はイギリスのトライアンフに似ていると言われたがエンジンの内部の作りは全く違って、ヤマハはバルブがチェーン駆動のOHCでトライアンフはプッシュロッド式のOHVだった。XSにもパイプのような物が付いているがそれはトライアンフはプッシュロッドが入っているのに対してXSの場合は中をオイルが通っている。ギヤもトライアンフはエンジンと別体になっているがヤマハは一体式だった。同じ650クラスではカワサキのW1がイギリスのBSAをそっくりコピーしていてマニアの間では鼻で笑われているので、多少なりとも独自性をだそうとしたのではないかと思う。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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