ネクステージ社員と買取現場でトラブル発生
ビッグモーターの営業社員Aさんと競合するネクステージ営業社員Bさんの間で買取に関してトラブルが発生した。
新聞やTVなどでも報道されたため、覚えている方もいらっしゃるだろう。買取の現場で二人が鉢合わせし、そこでトラブルになった。
事件が起こったのは2023年8月30日のことだ。現場は京都府南丹市にある秋田良子さんの自宅駐車場である。ちなみに秋田さんは1973年にご主人がフェラーリ社まで行って買ってきたというディーノに今も乗り続けているスーパーカー界のレジェンドの一人である。
もちろん、今回、秋田さんが買取を依頼したのはディーノではない。ふだん仕事で使っているホンダ・フリードである。クルマの一括査定をお願いするのも初めてのことであった。
「前夜に一括査定をお願いして、最初に来て値段を出してこられたのがネクステージの方でした。予想していた値段よりだいぶん高い査定額を出していたんです。だからもうネクステージで決めようと。それで、ビッグモーターに電話をしてお断りしたんですよ」
ビッグモーターとネクステージはライバル関係にある。ビッグモーターからネクステージに転職した社員は数百名レベルで大変多い。実際、秋田さん宅に訪れたネクステージ社員も元はビッグモーターの社員だった。
スマホでネクステージ営業が、ビッグモーター営業をいきなり撮影
秋田さんはAさんに断りの連絡をしたのだが「査定だけでもさせてください」とやや強引に秋田さん宅にやってきた。そして出された金額は、なんとネクステージより10万円も高い175万円。
それをBさんに伝えたところ、こちらも173万円まで上げてきた。ビッグモーターのほうが2万円高かったが、秋田さんが希望する入金日に合わせることができないなどの理由で、結局ネクステージが買い取ることになった。
事件が起きたのはこの後である。秋田さんがいったん、家に戻っている間にトラブルが起きてしまった。
「私は現場を見ていないのであくまでも推測なんですが、BさんがAさんの写真を撮り始めたそうなんです。最初は165万円で話がついていたところ、あとから来たAさんが高い値段を出したため結局173万円まで上げて買い取りになりました。Bさんとしては値段を上げた理由を上司に伝えなくてはならず『ビッグモーターと競り合った』ことの証明として、写真を撮ったんじゃないかと思います。
Aさんは当然、気分を害しますよね。理由もなく写真を撮り始めて。
その撮影をやめさせようとBさんの肩を押したら、はずみでよろけて転んでしまった。でもBさんにけがはなかったんです。ズボンに花壇の土がついて汚れた程度です。ケガをしたのはむしろ、Aさんのほうですね。スマホを奪い合うときに、BさんがAさんの手に爪を立てて力を入れたようでAさんの指の付け根から出血してましたよ」
秋田さんが現場に戻った時、Bさんは乗ってきたクルマに戻って車内に閉じこもっていた。そこで110番をした模様。そして、わらわらと秋田さん宅のすぐ近くにある京都府警南丹署の警察官とパトカーが数台集まってきた。ビッグモーター営業のAさんは南丹署に連れていかれてしまった…
逮捕から3か月 不起訴が確定した!
「そんなね。みっともないことやめてよって警察に言いました。事件の原因を作ったのはネクステージのほうでしょ? 喧嘩両成敗じゃないかって。ビッグモーター営業のAさんが気の毒でした。警察は事件にしたかったんでしょう。南丹署は逮捕したあと、わざわざ記者発表までしてましたよ。それで全国ニュースになってしまったんです」
事件があって数日後。筆者は共通の知人に紹介してもらって、秋田さんとつながることができた。
そこで、いろいろと当日の状況を伺うことができた。原因を作ったのはネクステージ側であり、撮影をやめさせたかったAさんの気持ちもわからないでもない。しかもケガをさせられたのはAさんのほうで相手は押されて倒れたときにズボンのすそが花壇の土で汚れた程度だ。それなのに、パトカー3台で現場に駆け付け嬉々として逮捕した。
そして事件から3か月ちょっと経った12月12日。秋田さんの京都検察庁から封書が届いた。
「不起訴」を知らせる内容が書かれてあった。
「Bさんに対する暴行被疑事件は令和5年12月12日、不起訴処分としたので通知します」
それで秋田さんから筆者に連絡してくれたのである。ちなみに、秋田さんは不起訴になったことをとても喜んでいた。京都検察庁にも呼ばれてその時の状況を詳細に正確に話したという。なお事件の翌日、秋田さん宅にはBさんと上司らしき人が謝罪に訪れている。
「『こんなにおおごとになると思いませんでした』と反省された様子でした。その時に一緒に来られたお二人も『うちの方は、相手さん(Aさん)には一切訴えも補償も求めるつもりはありません』とのことでした。それを聞いてほっとしましたよ」
和泉伸二社長が翌日駆けつけて激励していた!
さて、ここでどこにも報道されていない事実をお伝えしておきたい。
この事件は当時、ビッグモーター本社にも伝わることになったわけだが、会社としてはどのような対応をしたのか。気になるところだったが、当時は全く不明であったし、社員が逮捕されたことに対するビッグモーターの対応は、どこのメディアも報道がなかったと記憶している。
しかし今回、秋田さんからの情報提供によって驚くべきことがわかった。
秋田さんはAさん本人から聞いたとのことであるが、事件の翌日、7月26日の社長就任から1か月少々の和泉伸二新社長がAさん所属の店舗を訪れ、ひと通り事情を聞いた。そしてAさんに対して「起訴されて裁判になるようなことがあったらビッグモーターの顧問弁護士を使っていいから。がんばって!」と激励したという。
てっきりクビを言い渡されるのかと思っていたA氏はとても驚き和泉社長の恩情に深く感謝したという。
さらには和泉社長の配慮でしばらくの間、A氏を外回りの営業から、内勤にいったん異動させる措置をとった。迅速で社員の気持ちを考えた暖かな対応は、さすが社員思いの人情味あふれる和泉社長らしい対応といえるだろう。
なお、逮捕されたときにはTVや週刊誌など多くが報道したが不起訴になったことは、ごく一部のメディアでのみ取り上げられていた(それも現在ではリンク切れとなっている)ビッグモーターの良いニュースは積極的に報道しないのだろう。
現在ビッグモーターは伊藤忠の支援(買収)を受けるため、デューデリジェンス(買収監査)の真っただ中である。うまくいけば2024年4月には伊藤忠の支援を受けた新会社が発足する見込みである。
街路樹問題をはじめ、元従業員への残業代未払い、パワハラによる不当解雇、不適切な保険契約やローン契約、違法な買取契約後の減額交渉などなど。ビッグモーターが対応すべき問題は多々ある。
12月15日には副社長宅に警視庁による家宅捜索が入ったことも明らかになっている。現在取材中でまだ表に出ていない数々の問題についても確証が取れたものから記事として公開していくつもりである。
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堅気の素人さんは関わり合いになってはいけない。