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ちょうどいいサイズ感を守り抜きました──新型ホンダ・フリード試乗記

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ちょうどいいサイズ感を守り抜きました──新型ホンダ・フリード試乗記

フルモデルチェンジした新しいホンダ「フリード」のプロトタイプに、今尾直樹が試乗した。新型ならではの美点とは。

旧型も結構イイぞ!

愛車の履歴書──Vol41. 大黒摩季さん(後編)

ホンダの新型フリードの事前試乗会が開かれたのは6月初めのこと。場所はトラムの走る街、栃木県宇都宮市郊外にある本田技術研究所四輪R&Dセンターの「栃木プルービンググラウンド」である。

用意された試乗車は、現行型、いまとなっては旧型のフリード・ハイブリッドと、新たに“エア”と命名された標準ボディのハイブリッド、そしてクロスオーバー風デザインのクロスターの1.5リッター・ガソリン、の3台。

GQ枠ではこの順番で、オーバルの高速周回路と、アップダウンのある短いハンドリング路を3周ずつ、助手席にエンジニアを乗せて走行した。あいにくの雨模様で高速周回路の最高速は120km/hに制限されていた。オーバルの内側のコースは乗り心地のテスト用に凸凹路面も設けられている。

短時間で次々に乗り換えるテストの場合、人間というのはおのずと前に乗ったクルマと比較する。当然に最初に乗ったクルマが基準になる。少々驚いたのは、その最初の試乗車、1008kmと距離計が刻んだ旧型フリード・ハイブリッドGの広報車になんの不満も抱かなかった……どころか、「けっこういいかもしれない」と、思った点だ。2016年の発売以来、すでに8年が経っているというのに。いや、だからこそ熟成している。

最高出力110ps/6000rpm、最大トルク134Nm/5000rpmを発揮する1496cc直4DOHCは、29.5psと160Nmのモーターのアシストを得て、アトキンソン・サイクルとしては快音を発して気持ちよくまわる。動力性能も、車重1400kgほどのミニバンとしては十分。荒れた路面でも乗り心地はフワフワではなくて、しっかりしている。高速安定性にも優れ、ハンドリングだって悪くない。2008年の初代フリードの時代からホンダがこだわり続けている低床・低重心プラットフォームの賜物だろう。旋回しながら、うねった路面を通過する際のおさまりも上々だし、車両価格269万9400円の3列シートのコンパクトミニバンとして、商品力をちゃんとキープしている。と、そう思った。

実はこの日、栃木プルービンググラウンドまで、筆者の自宅から135km/hの道のりを10年落ちのホンダ「N-ONE」でやって来ていた。ということは差し引く必要があるにしても。身体は正直ですから。

e:HEV搭載による変化続いて、新型フリード・エアのハイブリッドである。乗り込んでの第一印象は視界がスッキリしている点だ。ダッシュボードが水平基調になり、中央奥に細長く配置してあったメーター類が、ドライバーの眼前に移動。ダッシュボード中央にはインフォテインメント用のスクリーンが鎮座している。旧型では逆V字型に2本あったフロントのピラーが1本にまとめられていることも大きい。

機械面での目玉は、ハイブリッドのシステムが「e:HEV」に変更された点にある。発電用と駆動用、役割の異なるモーターを個別に備える2モーターのe:HEVは、街中ではエンジンは発電に専念し、モーターで走行する。エンジンで直接タイヤを駆動したほうが効率に優れる高速巡航に限って、エンジンと駆動輪の間に設けられたクラッチが直結になる。すなわち、エンジンで走る。旧型フリード・ハイブリッドの1.5リッター・ガソリンエンジンとモーター内蔵の7速DCTからなるシステム、i-DCDほど、理論上はエンジンをmあわす必要がない。だから燃費がよくて、環境にやさしい。モーター駆動主体だから、静かでレスポンスのよい、BEV同様の乗り味が得られる。という長所がある。

短所もある。旧型フリードのシステムより、モーターがふたつある分、サイズと重量が増えることだ。素人考えだと、DCTがない分、相殺されるように思うけれど、そうではないらしい。7段の歯車よりグルグル巻いたコイルからなるモーターのほうが重いのだ。重量増は当然、衝突安全性能と運動性能に影響をおよぼす。先代から継承したプラットフォームにe:HEVを搭載し、これらの課題をいかにクリアするか。これが開発の山だった。

フロントのオーバーハングが若干延びて、旧型比で全長が45mm長くなっているのはe:HEVをおさめるためだとされる。e:HEVそのものによる重量増は20kg程度、全体で50kgほど重くなっている。そんな話を助手席のエンジニアから聞きながら、筆者は高速周回路の進入路から控えめな全開を試みた。

発電を主目的とするエンジンは、旧型ハイブリッドの1496cc直列4気筒DOHC i-VTECと基本を同じくしつつ、異なるチューンが施されている。最高出力は106ps/6000~6400rpm、最大トルクは127Nm/4500~5000rpmへと、わずかながらおさえられ、駆動用モーターは逆に、それぞれ122ps、253Nmへと大幅に強化されている。SUVの現行ホンダ「ヴェゼル」と数値を見比べると、モーターの最高出力のみ131psから11ps控えになっている。最大7人が乗るミニバンゆえ、より低中速重視のセッティングに変更しているのだ。

しかして印象に残ったのは、全開時のエンジン音の違いである。旧型はエンジン主体で、有段ギアボックスを備えているから、内燃機関に馴染んだ筆者はそっちのほうが気持ちよく感じる。e:HEVはそんなドライバーのフィーリングにも合うように、と加速とエンジンの音量を同調させるべくエンジン回転を上げる。モーターにエネルギーを送るべく発電する必要もある。だけど、エンジン本体のチューンによる違いによって、ごめんなさい。旧型の音のほうがいい。と、筆者なんぞは思っちゃう。

e:HEVのFUN、面白さは街中でこそ味わえる。中間領域、アクセルのオン/オフを繰り返したときのレスポンスの心地よさというのは、クローズのコースになると公道での鬱憤を晴らすべく、つい全開にしがちなドライバーにとっては猫に小判、絵に描いた餅、馬の耳に念仏と申し上げるほかない。アップダウンのあるハンドリング路でピックアップがよさげに思えたものの、旧型のハイブリッドだってモーターのアシストにより、旋回してからの上りも遜色なくヨイのだ。

静粛性と乗り心地は洗練され、確実によくなっている。80km/hでの高速巡航時、静粛性を重視したグッドイヤーの新しいタイヤもあって、あまりに静かなものだから耳を澄ませたくなる。耳を澄ますと、どおん、どおん、という鼓動のような音がかすかに聞こえてくる。これが欠点だと指摘したいのではない。エンジンの、ごく小さなこもり音、ラジオとかをつければ、気にならないレベルの音だからだ。ではあるものの、人間というのは静かになるほど、音が聞こえてくる。だから自動車にとって静粛性はむずかしい。

乗り心地は、サスペンションのフリクション低減により、脚がより軽快に動く感がある。タイヤはクロスターを含め、185/65R18と旧型と同じサイズが選ばれている。ユーザー調査の際、タイヤのサイズはどうなる? という質問があったからだそうで、つまり、フリードの現オーナーが新型に買い替えたあともスタッドレスタイヤは使い続けられるようにするためだ。ユーザーにとって、うれしい配慮である。

カタログ性能より実用性能クロスターの1.5リッター・ガソリンは、旧型の直噴からポート噴射(PI=ポート・インジェクション)に変更されている。最高出力は131psから118psに、最大トルクは155Nmから142Nmへと、数値的には小さくなっているものの、燃費も含めて実用域では遜色ない。ポート噴射のメリットは直噴より静粛性と軽いことにある。というのがホンダの判断で、使い勝手を重視してアイドリング・ストップを廃止してもいる。カタログ性能より実用性能……と、聞くだけで、おとなの判断であると感じる。

乗ってみると、アトキンソン・サイクルではないこともあって、エンジンがより気持ちよく回る。音もe:HEV用よりエンジンらしい。CVTには最近のホンダ車同様、ステップアップ/ステップダウン制御というのが入っていて、加速時には有段技やのごとく、ぶううううんっとまわって加速し、一息ついてから再加速する。e:HEVから乗り換え直後、動きが軽快に感じたのは、ノーズが軽くて車重も軽く、脚の動きも軽やかだから、なのだろう。

開発陣とのQ&Aのおり、旧型もよかった、という感想は筆者だけではなかったことがわかって、ちょっと安心した。それから、こんな発言が出た。

「現行でいいじゃないですか、と、いわれるんですけど、それをわざわざ買い直してもらうためにはなにをやらなければならないのか、というのが僕らのスタートなんです」

一番守って欲しいのは、ちょうどいいサイズ感。リクエストとして、快適性、室内が暑い。サード・シートが使いにくく、たとえばシートの上げ下げが重くて、普段、使わないとき(収納時)は邪魔になる。という声があったという。動力性能や運動性能に関しては、問題視するユーザーではないけれど、e:HEVに変えて新たな価値を提案することは決めていた。さらにADAS(運転支援システム)では、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を0km/hでも使える最新仕様にアップデートしている。ブレーキを足踏み式から電気式に変更したのはその対応のためでもある。経験を積んだプラットフォームの地道な改良とe:HEV搭載の相乗効果だ。

最後になったけれど、8年ぶりに生まれ変わったフリードには大別して、新たにエアと命名された標準型と、先代の途中で追加されたクロスオーバー仕立てのクロスターがある。ということを確認しておく。

エアはこれまで通り、ちょうどいいサイズの全幅1695mm。クロスターは前後フェンダーまわりに樹脂製のプロテクターをつけることでアウトドア風味を強調した結果、全幅1720mmに成長している。エアは3列シート、クロスターには2列シートで、その分広い荷室の仕様もある。

パワーユニットは2モーターのe:HEVと、1.5リッター直4DOHCの2本立て。駆動方式は4WDもあるけれど、今回の事前試乗会では用意がなかった。室内の暑さ対策で、リヤにエアコンを装備するのはこのクラス初。最大のライバル、トヨタ「シエンタ」の後席にはリサーキュレーション、つまり扇風機はあるものの、冷たい空気は出ない。

もしも筆者に、ホンダのディーラーに勤める甥だか姪だかがいて、「おじさん、なんか買って」と、頼まれたら、「よおしっ」と、新型フリードを注文してもいいかもしれない……。実際はそういう甥も姪もいないので、あ~、買わなくて済んでよかった。という話ではなくて、クロスターのガソリンを試乗中、これの2列シートとかいいかも、と、思ったのは本当である。

文・今尾直樹 写真・小塚大樹 編集・稲垣邦康(GQ)

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みんなのコメント

5件
  • まほほん
    内容的には正常進化のようで安心したが
    内装など目に見える所がN-BOXのように
    コストダウンされているのが気になる為
    販売は思ったほど伸びないのではと思う。

    現行の在庫車を大幅値引きで買えるなら
    その方が良いかもしれない。
  • yrv********
    ちょうどいい『価格帯』も守って欲しかった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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