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話題のニューモデル開発者に“深く細かく”直撃インタビュー スポーティーでカジュアル、根底に流れているものはXVと一緒「スバルクロストレック」編 

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話題のニューモデル開発者に“深く細かく”直撃インタビュー スポーティーでカジュアル、根底に流れているものはXVと一緒「スバルクロストレック」編 

その細やかな観察眼では業界一、二を争うモータージャーナリストの島崎七生人さんが、話題のニューモデルの気になるポイントについて、深く、細かくインタビューする連載企画。第48回は「スバルクロストレック」を取り上げます。インプレッサベースのクロスオーバーSUVとして人気を集めてきたXVの後継モデルについて、SUBARU 商品企画本部 プロジェクト・ゼネラル・マネージャーの毛塚 紹一郎(けづか・しょういちろう)さんにお話を伺いました。

いろいろな所にクルマで出かけて楽しんでもらいたい

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クロストレックの開発を主導したPGM(プロジェクト・ゼネラル・マネージャー)の毛塚さん

島崎:毛塚さんは、これまでいろいろな車種をご担当されてきましたね。

毛塚さん:そうですね。3代目のフォレスター、おそらくそのときに初めて島崎さんとお会いしたのだと思いますが、その後は現行の前のアウトバック、レガシィB4も担当しました。それから新型のクロストレックになります。

島崎:クロストレックに限らず、EV関連では何か関わっていらっしゃることはありますか?

毛塚さん:今回のクロストレックはe-BOXERということでやっていますけれど、弊社の中期計画の中にも上がっていますが、ハイブリッドについては、次の世代の研究・開発は進めているところです。EVに関しても私以外の担当が進めております。

島崎:今度のクロストレックは“ファン”という打ち出しを徹底的にされていますね。

毛塚さん:我々のクルマは、通勤だとかそういうこと以外にも、やはりアウトドアや、いろいろな所にクルマで出かけて楽しんでもらいたい……そんな思いが強いです。であれば安全ということとともに楽しく使っていただきたい。それと我々作る側も、お客様に提供する以上は、我々も楽しんで作らなければ駄目なんじゃないか、と。ファンというのはお客様へのメッセージでもありますけど、我々自身、販売する人、製造する人、開発する人もやはり楽しい気分で作ろうよと……。

島崎:士気を高めてというより、気分を盛り上げて……。

毛塚さん:ちょうど開発のときにコロナが流行り始めていて、なかなか思いどおりにお客様の声だとか、社内の打ち合わせをみんなそろってできなくなり、何となく暗い感じかなぁと思いました。そこでそれに負けないようにと、私自身の思いも強いのですが“ファン”という言葉をキーワードにしてやりましょう……ということになりました。

島崎:お聞きしていてビシビシと伝わってきます。

毛塚さん:ありがとうございます。クルマそのものも、見た目もそうですし、普通に真っすぐに走らせているだけでも「このクルマ楽しいなぁ」と思えたので、じゃあみんなでファンという言葉でやりましょうと。

島崎:元々先代のXVは、楽しげでフレンドリーな存在で、見ているだけでも肩肘張らずに乗って使えそうなクルマでしたね。

毛塚さん:はい。

WRXとクロストレックが同じ性能でいいか?

島崎:クロストレックはXVに対してさらに乗り味がよくなりましたね。クルマが揺れないところがいい。医学的な見地からというお話を聞きましたが、どういうことですか?

毛塚さん:もともと先行開発で、SGP(スバルグローバルプラットフォーム)で乗り心地や走りの官能評価をしていて、じゃあもう1歩進めるにはどういうことが必要か?という研究を進めていました。そこに我々がすでに持っている要素に加えて、もうちょっと人が実際に感じるところを突き詰めると、快適性などがより向上できるんじゃないかと着目しました。

島崎:なるほど。

毛塚さん:じゃあ、もうちょっと人の身体を勉強しようと、大学の医学部などともいろいろ議論しながら、研究してくれた要素をいくつか入れました。

島崎:そうでしたか。

毛塚さん:それがシートであったり、それからルーフ部分の、ルーフの外板と骨とを接着するところを振動を吸収、減衰する仕組みにし、ルーフが揺れるのを防ぐことで車内のバタバタ感がなくなりスッキリするとか、そういうことをやっています。

島崎:走行中の車内の空気が暴れる感じがなくなるということですね。

毛塚さん:ええ。今までの見方とは変えた見方を入れて……。

島崎:変えた見方、ですか?

毛塚さん:人の動きなど、今までの評価基準にプラスした要素を評価基準に追加しました。

島崎:よりお仕事が増えたということですか?

毛塚さん:というよりも、新しい着眼点で変更をして、大きな車両の変更をしなくても、僅かな変更の積み重ねで効果が上手く出せたかなぁと思います。

島崎:それは毛塚さんご自身の実感としてもあったのですね。

毛塚さん:ええ、内容自体はそんなに大きなものではなくても、クルマ1台分としてできたときに、ああ、クルマがかなり変わるんだなぁと思うことがありました。

島崎:そうでしたか。

毛塚さん:最初の試作車ができたときに「意外といいねえ」と、正直な感想として思いました。意外と……なんて私が言っては、担当責任者に怒られちゃいますが(笑)。

島崎:いやいや、お立場上だからこそだと思います。ちなみにそういったことは、たとえばスバルというと走りの味を追求するメーカーだと思いますが、その“味”にも関わりますね。

毛塚さん:我々の掲げている“安心と楽しさ”のまさに“楽しさ”の部分だと思います。ただ、みんな同じ方向を向くか?というと、楽しさということでは同じように変わりませんが、WRXとクロストレックが同じ性能でいいか?というと、またそれも違う。クロストレックのお客様に対して使用するシーンに応じて運転する楽しさを提供することは、我々スバルとして考えていることです。

FFを追加したのは価格を安くするため、燃費を良くするために……ではない

島崎:クロストレックではFFが追加されましたが、より間口を広げて多くのユーザーに楽しさを提供するということですね。

毛塚さん:そうですね。FFの議論をするとき、私も実際にお客様の声をお聞きしましたが、これまでのXVでいうと外装色であったり、アイサイトなどもあり、かなり他銘柄をお使いのお客様がいらっしゃっ います。その中で商談を進めていくと「AWDはいらない」という方もいらっしゃる。

島崎:ほほう。

毛塚さん:我々自身はAWDは安全性、楽しさの要素だと考えますが、お話をよく聞くと、価格や燃費が満足できればAWDがいい……というとそういうことでもなく、要はご自分で必要なものに対してはお金を出したい……そんなお客様がいらっしゃるんですね。

島崎:もっともなお考えですね。

毛塚さん:であれば、価格を安くするため、燃費を良くするために……ではなく、価値観の話になるので、アイサイトなどスバルとして提供する価値はほかにも十分にあるので、クロストレックではFFを追加することにしました。

島崎:クロストレックとしての価値はAWDもFFもイコールだと。

毛塚さん:ええ。AWDとFFで装備仕様差は基本的にはつけない。FFは安いクルマでいろいろな物がついてない……ではなく、FFも同じようにインフォテイメントであったりアイサイトであったりとつけて、そういうクルマになっています。

島崎:かつて2代目レガシィでFFのブライトンなんていうクルマがありましたね。

毛塚さん:ありましたねぇ。まあ結果的にアウトプットは値段や燃費になるのですが、じゃあAWDを安くすればいいのかというと、そういうことでもないんです。

XVのキープコンセプトで異論なし

島崎:価値観をどれだけ大事にするかということですね。ところで今度のクロストレックですが、もしも僕がどこかの記事でXVのキープコンセプトだと書いたら、毛塚さんは「そうじゃない」とおっしゃいますか?

毛塚さん:いや、XVはSUVながら形態はスポーティーでカジュアルさをもっているところが全世界のお客様からご好評をいただいていました。なのでキープコンセプトに関して私も異論はないです。

島崎:ということは、あえて変える必要なかった?

毛塚さん:という風に判断しました。持っているものを何かなくしてということではなく、むしろインフォテイメントだとかよりSUVらしいデザインだとか入れていますが、クルマの根底に流れているものは一緒ということです。

島崎:承知しました。安心してキープコンセプトと書くことにします。

毛塚さん:ただ我々でいうとフォレスターの下のクラスに他銘柄の新型車が次から次へと出てきていますので、その中でXVの存在感、競争力をより高めたかった。そこでクロストレックを入れることで動的質感、安全など、スバルの強いところをより伸ばして存在感を示しましょうということはありました。インプレッサよりも先にFMC(=フルモデルチェンジ)をかけたのも、そういう理由からです。

島崎:よくわかりました。どうもありがとうございました。

(写真:SUBARU)

※記事の内容は2023年3月時点の情報で制作しています。

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