単なるオープン化ではないアップデート
今年2月、マクラーレン史上初のハイパフォーマンス・ハイブリッド・コンバーチブルとして発表された『アルトゥーラ・スパイダー』。ようやく試乗の機会が得られた。
【画像】マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー 東北・安比高原での試乗会の様子はこちら 全192枚
インプレッションの前に、まずはクルマの紹介から。2022年にひと足さきにクーペが発売されたが、単にそのオープンモデルということではなく、パワートレインやダンパー、さらにはトランスミッションのシフトスピードをはじめ、ソフトウェイに至るまでアップデートされている。
3L V6エンジンの最高出力は585psから605psにハイパワー化し、Eモーターを組み合わせたパワートレイン総出力は680psから700psへ、最大トルクは720Nmへと引き上げられた。
乾燥重量は1457kgで、クーペからの重量増はわずか62kgとなっている。カーボンモノコックを用いたプラットフォームの軽さ、強度と剛性はオープンモデルでもその優位性を発揮している。
そして『スパイダー』の最大の特徴となるリトラクタブル・ハードトップは、50km/h以下であれば走行中でも開閉可能で、開閉の所要時間はわずか11秒。
さらに、『エレクトロクロミック』と呼ばれる、ガラスの透過度を変化させられるルーフは、日差しを遮りたいときは99%カット、光を取り込みたい時は60%以上を通しつつも太陽光のエネルギーは75%カットしてくれる。
EVモードにすると、自然の音がBGMに
さて、試乗ステージは、酷暑を避け東北の安比高原へ。ウィンタースポーツで有名だが、7月も緑が広がり癒される。が、残念ながら、雨と霧のため、当初のドライブルートを走ることができず、一部ワインディングからの高速道路メインの試乗となった。
せっかく遠くまで来たのに……。正直、当初はそんな残念な気持ちもあったが、いざ走り出すと、雨だからこそ、そして高速道路だからこそわかったアルトゥーラ・スパイダーの魅力もたくさん体感することができた。
とかくハンドリングに目が行きがちだが、グランドツーリングとしての魅力も充分に高いクルマなのだ。
まずはワインディングからスタート。
アルトゥーラ・スパイダーは、シャシーのモードとしてコンフォート、スポーツ、トラックが選択でき、さらにEモード、コンフォート、スポーツ、トラックのパワートレーン・モードを備える。
ワインディングではデフォルトのコンフォートも悪くないが、やはりシャシーはスポーツモード、そしてパワートレインはスポーツもしくはトラックモードを選ぶと、エグゾーストサウンドを奏でながら軽快で俊敏性に富んだハンドリングを楽しめる。
途中、雨が止んだのでオープンにする。途端に、湿って重い空気が肌にまとわりつく。今までなら常にエンジンサウンドがBGMだったが、EVモードにすると、自然の音まで聴こえるのが新鮮だ。
ちなみに、言うまでもなくハンドリングの変化などは皆無だ。
整流された水飛沫でわかったこと
軽量とともにマクラーレンのコアバリューである空力性能が、スパイダーとの相性抜群であることを再認識した。
高速道路に入り速度が上がっても風の巻き込みはきわめて少ない。クルマのセンター部にわずかに風が入るが、運転席と助手席は直撃しない。イメージとしてはそよ風を受けている感じで、時々、前髪をかきあげたくなる程度。
そして、途中、フロントウィンドウに当たる雨足が強まったが、室内には一滴たりとも雨は入らない。
前方を走るアルトゥーラの後ろ姿を見て納得。ドアミラーやリヤエンドからキレイに整流された水飛沫が飛んでいた。空気は見えないが、雨によって空力性能を可視化することができ、感激してしまった。
一般的に、オープンモデルは重量が増え、剛性が落ち、重心が高くなるなどオープンエアの気持ち良さとトレードオフされる要素が多いとされるが、アルトゥーラ スパイダーは妥協なく走りもオープンエアも堪能できる。
アップデートが施されたMY25のクーペにも乗ることができたが、リアルスポーツを求めるならクーペを勧める。が、荒れた高速道路の路面もしなやかにいなし、乗り心地も快適で、ワインディングではスポーツカーとしてのパフォーマンスを発揮。ドライブモードの組み合わせでさまざまな走りを楽しめ、しかもオープンエアも楽しめる。こんな欲張りで贅沢なクルマはない。私なら迷わずスパイダーを選ぶだろう。
マクラーレン・アルトゥーラ・スパイダー
全長×全幅×全高:4539×1913×1193mm
駆動方式:RWD
車両重量:1560kg
パワートレイン:V型6気筒2993cc ツイン・ターボチャージャー+電気モーター
最高出力:700ps/7500rpm
最大トルク:73.5kg-m/2250rpm
最高速度:330km/h
0-100km/h加速:3.0秒
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