50周年記念の珠玉の2シーター・スポーツ
もし革新的な技術力を強みにする、世界的に評価の高い自動車メーカーだとしたら、自らの記念日をどのように祝うだろう。その最適解こそ、ホンダが1998年に発表した、S2000だと思う。
【画像】懐かしのホンダS2000 英国仕様のNSXとシビック・タイプRも 全46枚
本田技研工業が誕生したのは1948年。彼らはその50周年を記念して、珠玉の2シーター・スポーツカーを作り上げた。低いプロポーションのボディにフロントエンジン・リアドライブのレイアウト、50:50の前後重量配分を備える、理想的なモデルだった。
エンジンは、欧州仕様では8300rpmで240psを発揮する、2.0L 16バルブのVTECユニット。レブリミットは9000rpmという高回転型ながら、穏やかに市街地を流すこともいとわず、アクセルひと踏みでカムを切り替え、雄叫びを楽しむことも可能だった。
最高速度は241km/h。当時のこのクラスとしては驚くほどの速さで、0-97km/h加速は6.2秒とダッシュ力も鋭かった。滑らかに変速できる6速MTに、トルセン式のLSDを備え、そのシズル感は今でも衰えていない。
シャシーは高剛性で低重心化が図られ、トレッドの幅が広く、サスペンションはアルミニウム製のダブルウイッシュボーン式を採用。電動パワーステアリングのレシオも、充分にクイックだ。
タイヤはブリヂストン社製のモデル専用品。デジタルメーターが、ハイテク感を漂わせていた。開閉が簡単なソフトトップも魅力だったが、2002年からはハードトップのGTが欧州に投入されている。
期待通りのホンダをまだ手頃に入手できる
S2000は、公道を素晴らしく楽しい場所にしてくれた。期待通りのホンダだった。
日本車として製造品質は高く、現在でも残存数は少なくない。走行距離は伸びがちだが、オーナーによる不具合の報告は多くなく、維持費も驚くほど抑えられるようだ。
新車当時、S2000は限界領域での挙動が突発的だと指摘されていたし、電動パワーステアリングの感触に不満が出たことも事実。しかし、心地良い天気の日にS2000をオープンで運転すれば、その楽しさに歓喜するはず。
またホンダは、S2000を丁寧に育てた。欧州仕様では2002年と2004年に細かな改良を受け、スプリングとダンパーのレートが変更されている。2006年からはトラクション・コントロールがオプションに加わり、2008年以降は標準装備となっている。
さらに2008年からは、日本市場で提供されていたタイプS用のスプリングとダンパーが、欧州仕様に組まれるようになった。フェイスリフトでフロントバンパーなどのデザインも変更されている。
そんなS2000だが、近年は価格も上昇中。数年前なら5000ポンド程度で探すこともできたが、近年は1万ポンド(約155万円)は用意しなければ難しい。それでも、心の底から楽しめるドライバーズカーを、まだ手頃と呼べる価格帯で入手できる。
今後、価値はさらに上昇する可能性もある。気持ちよく風を受けて疾走できるロードスターという、ホンダからの記念品を入手するなら、今が絶好のタイミングだといえる。
新車時代のAUTOCARの評価は?
エンジンは9000rpmのレッドライン目掛けて吹け上がる。回頭性は鋭く、量産モデルとしては最も調整域の広いシャシーを備えている。アクセルペダルとステアリングの操作で、どんな姿勢にも持ち込め、運転の喜びに浸れる。
あまりの楽しさに、何時間でも運転したいと思える。人間工学にも優れ、肉体的に痛いと感じるとすれば、笑顔の連続で顔がひきつることが原因だろう。 (1999年5月12日)
購入時に気をつけたいポイント
ボディ
製造品質は高いものの、パネルの交換は安くできないので、購入前によく観察したい。多くが、軽い当て傷や擦り傷があるようだ。
ブレーキ
制動力に優れ、耐久性も高い。年式的に、走行距離が長い例ではサイドブレーキの不具合やキャリパーの固着などは起き得る。
サスペンション
ブッシュはヘタっていて不思議ではない。英国ホンダはブッシュを個別に販売していないので、無限の代替部品を探してみるのも良い。費用も抑えられる。
足まわりにダメージを受けていなければ、ステアリングホイールが真上の状態でピシッと直進し、タイヤは均一に摩耗する。ナットやボルト、偏心アジャスターは経年劣化するので、合わせて確認したい。
トランスミッションとデフ
シフトレバーは、6速トランスミッションへ直接つながっている。そのため、レバーにはもともと多くの振動が伝わってくる。
クラッチやデフなど、ドライブトレインは全体的に堅牢だが、8万kmから16万kmほどで、クラッチのメンテナンスが必要になることがある。スレーブシリンダーの劣化にも注意したい。
インテリア
インテリアは作りが良く、耐久性も高い。それでもレザーは摩耗するし、運転席も走行距離が伸びるほど傷んでくる。
ソフトトップは劣化によるヒビ割れや、雨漏りしそうな部分がないか観察する。2001年までのソフトトップには、割れやすいプラスティック製のリアウインドウが付いている。
エンジン
高回転型ユニットにも関わらず、信頼性は驚くほど高い。タイミングチェーン・テンショナーは、劣化してくると始動時や2000rpmから3000rpm前後で異音を出す。
長期間乗らないでいると、タイミングチェーン・テンショナーに不具合が出て、バルブタイミングが狂い、エンジンのヘッドに致命的なダメージを与えてしまう場合も。テンショナーはネットで安く購入できる。
欧州仕様では、2003年式までのS2000で特にエンジンオイルの消費量が多い。オーナーによっては、1600km毎に1Lを継ぎ足す人もいるそうだ。こまめな補充と、定期的なオイル交換は欠かさないでおきたい。半年か1万km以内が良いだろう。
オーナーの意見を聞いてみる
サム・スノディ氏:S2UKオーナーズクラブ
「最初にS2000を購入したのは2007年。2004年式のGTでした。それ以来ハマって、今は3台所有しています」
「ドライバーの操作がすべてで、試されるクルマです。ドライビング体験はとてもアナログで感覚的。耐久性が高く故障は少なく、荷室が大きいので実用的でもあります。扱いやすく、週末の旅行にもピッタリです」
「オーナーズクラブを通じて、定期的なミーティングを開く手伝いをしています。年に数回、仲間と会うのが楽しみですね」
知っておくべきこと
欧州仕様では2002年(日本仕様は2001年)にマイナーチェンジを受け、多くの改良が施されている。サスペンションに手が加えられ、オプションの選択肢が増え、ハードトップ付きのGTが設定された。
2004年(日本仕様は2003年)にも、大きな改良が施されている。スタイリングがアグレッシブさを増し、LEDのテールライトと17インチ・ホイールが標準装備になった。
また、限界領域での安定性を高めるため、サスペンションとトランスミッションも改良を受けている。その2年後には、スタビリティ・コントロール、バイワイヤー式のスロットル、新デザインのアルミホイールとインテリアなどを獲得している。
英国ではいくら払うべき?
7000ポンド(約108万円)~9999ポンド(約154万円)
初期のS2000が英国では探せる。多くが走行距離16万km以上の、個人売買車両だ。
1万ポンド(約155万円)~1万9999ポンド(約309万円)
英国ではS2000の中心となる価格帯。走行距離は一般的に短めで、専門ガレージが売っている車両も含まれる。状態の良いものを選びたい。
2万ポンド(約310万円)以上
整備記録が揃った、新車状態に近いS2000を探せる。専門ガレージが売り手の場合がほとんどのようだ。
英国で掘り出し物を発見
ホンダS2000 登録:2006年 走行距離:13万3500km 価格:1万4990ポンド(約232万円)
かなり状態の良い2オーナー車。整備記録が揃っていて、車検も残っている。3か月の保証も付くという。ボディカラーも人気色で、大きなレストアを経ていない、オリジナル・コンディションだ。
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みんなのコメント
販売台数として記録には残らなかったとしても。
いまさら褒めてもね