ボルボのベストセラーでありデビューから8年で約100万台をセールスした大ヒット作、XC60。その新型がいよいよ日本に導入された。ここではPHEVのT8とガソリンのT5をさっそく試乗した。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2017年12月号より)
ボルボらしいデザインもクオリティも申し分ない
いい意味で、想像よりもずっとコンパクトに見えるな・・・というのが新型ボルボ XC60との、見慣れた日本の風景の中での初対面で抱いた第一印象だった。今やこのセグメントですら驚くほどではないとは言え、全幅が1900mmもあるだけに、どんな風に見えるのかと思っていたのだが、これならXC90との差は明らかであり、十分フレンドリーと感じてもらえるのではないだろうか。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
この新型XC60、全長は4690mmでXC90より260mm短い。そして1660mmの全高は100mm低いことになる。とくにフロントまわりには定評ある最新のボルボデザインの原点であるXC90のテイストを色濃く受け継ぎつつも、おそらくはこの低い全高、そして先代XC60の匂いも少し感じさせるリアエンドに向けての軽快なフォルムが、XC90とは違った個性、軽快感やフレンドリーさに繋がっているに違いない。
XC90より幾分か乗り込みやすい運転席に陣取ってみると、そこに広がる景色は、やはり紛れもないボルボ。視界は良好で、デザインもクオリティも申し分なく、とてもリラックスできる。もちろん寸法的にはコンパクトにまとめられているのだが、それがかえって適度な凝縮感に繋がっていて、センターコンソール周辺の意匠なども、よりまとまり良く、洗練された印象を受ける。
試乗車は、パワートレーンこそ違えどトリムは同様に上級仕様のインスクリプション。パーフォレーテッド ファインナッパレザーのシートをはじめ内外装の装備は充実している。そのうちの1台、T8 ツインエンジン AWDの内装色はアンバー。テイラードダッシュボードも相まって雰囲気は上々だ。独特の凸凹した質感を持つドリフトウッドパネルも面白い。
ベンチレーション、マッサージなどの機能も搭載した前席は適度な囲まれ感が演出されているが、後席は広々とした雰囲気が強調されている。電動パノラマガラスサンルーフ付きにもかかわらず頭上には十分な余裕があるし、つま先は前席の座面下に入る。センタートンネルはT5でも少し、T8ではさらに出っ張っているが、中央席も座れなくはない。
ラゲッジスペースは後席使用時で505Lという大容量を誇る。ちなみに後席シートバックは左右40:60分割で、センター部にスルーローディングハッチを設けている。テールゲートは全車電動式。足のジェスチャーによりハンズフリーでの開閉が可能だ。また、電子制御式エアサスペンション装着車には、荷物の積み下ろしの際に車高を下げるローディングモードも備わる。
とても快適な乗り心地。SPAは熟成が進んでいる
まずはT8 ツインエンジン AWDで走り出す。エンジンスタートは、センターコンソール上のノブを右に捻って行う。停止時も、再度右へ捻るよう仕様は改められている。
思わず目を見張ったのがスタートダッシュの快活さだ。パワートレーンはXC90と共通。最高出力318ps、最大トルク400Nmの2L 直列4気筒ターボ+スーパーチャージャーエンジンで前輪を、同87ps、240Nmの電気モーターで後輪を駆動する。一方で車重は2170kgと170kgも軽いから、その差が余裕に繋がっているのだろう。
電気モーターのドライバビリティへの恩恵は大きい。アクセルペダルに足を乗せた瞬間のツキは良いし、上り勾配をグイグイと加速していくパワフルさも備えている。
乗り味は全般に穏やかな感触に終始する。標準装備される電子制御式4輪エアサスペンションは今どき珍
しいくらいソフトなセッティングとされていて、当たりの柔らかさは20インチというタイヤサイズがにわかには信じられないほどだ。路面の継ぎ目などを乗り越える際には、やや鋭い入力があるものの、全体的には非常に快適と評することができる。ボルボがラージクラスに使っている基本アーキテクチャーのSPAは、新しいモデルが登場するごとに熟成が進んでいるようで、ライドコンフォートの向上を実感できる。
この良好な乗り心地にも、全高の低さがひと役買っているに違いない。それだけ柔らかいのに姿勢は十分にフラット感があって、頭の横揺れ、縦揺れがまったく気にならず、心地よく乗っていられるのである。強いて言えば直進性には、やや甘さを感じなくはないが、饒舌なステアリングフィールのおかげで、問題と感じるほどではない。
そのステアリングはレスポンスも決して悪くなく、思ったとおりのラインをなぞることができる。車重があるだけにコンフォートモードで攻めるような走りをすると、操舵に対して徐々に挙動の遅れが出てくるようになる。あくまで適度なペースで、余裕を楽しむクルマである。
当然ながら新型XC60も、ボルボ自慢の先進安全・運転支援装備であるインテリセーフが全車に標準で装備される。この新型XC60が初採用の新たな機能も多数盛り込まれた。
機能総数は実に16以上にも及ぶだけに、すべてにはとても触れられないが、たとえば夜間を含む歩行者・サイクリスト・大型動物検知機能を備えた緊急自動ブレーキのシティセーフティには、必要な場合に操舵をアシストし、さらに内輪のブレーキをつまんで向きを変えやすくする機能が加わっている。またBLIS(ブラインドスポット インフォメーションシステム)は、後続車が来ているにもかかわらず車線を移ろうとした時、修正操舵を行うようになった。そして、センターラインを超えて対向車線に進入してしまい、衝突の危険が高まった時の車線引き戻し機能も搭載されている。普段の走りでは、これらは存在を高らかに主張してくるわけではない。しかしながら必要な時には、スッと手を差し伸べてくれるのが有り難い。
選べるパワートレーンも多く先代以上のヒットとなる予感
続いてはもう1台、T5 AWDのハンドルを握る。搭載する2L 直列4気筒ターボエンジンは最高出力254ps、最大トルク350Nmを発生。こちらのタイヤは235/55R19サイズだ。
驚いたのは、その走りがさらに軽やかだったことである。まずはエンジンが、実用域で十分なトルクを発生するだけでなく、回すほどに活気づく特性まで併せ持っていて、アクセルペダルを深く踏み込ませる。試乗車のT5 AWD インスクリプションでは、オプションとなる電子制御式エアサスペンションが装着されていて、車重は1860kgとT8 ツインエンジン AWDに対して実に300kg以上も軽いおかげで、加速感はけっして見劣りしない。
動力性能だけではない。クルマのあらゆる動きが軽やかなのが、T5 AWDである。街中を流すような場面ですら颯爽としたステップを披露するから、こちらまで気分がアガッてきてしまう。しかも乗り心地だって輪をかけてしなやか。正直、普段はダイナミックモードでもいいかと思わせるほどだ。
ワインディングロードでも、こちらならちょっとペースを上げてみたくなる。うねった路面も4輪の追従性が高く、また慣性も残らないので軽やかにラインをトレースできる。アクティブな走りを好むドライバーに勧めるのは断然こちらである。
XC90以降、高い評価を得ている最新のボルボらしさと軽快感を両立させたデザインに、猫も杓子もスポーティさばかり指向する中で独自性が光る優しい乗り味、そしてブランドの矜持である高いセーフティ性能と、どこを切り取ってみても他のクルマにはない、あるいは一線を画する魅力を備えているというのが、新型XC60の評価だ。
今回試乗したPHEVのT8、ガソリンのT5の他、Rデザインが設定されるよりパワフルなガソリンのT6、そしてクリーンディーゼルのD4とパワートレーンの選択肢が豊富なのも嬉しい。先代と同様、いや先代以上のヒットになる。そんな事前の期待が確信に変わったのだった。(文:島下泰久/写真:永元秀和)
■ボルボ XC60 T8 ツインエンジン AWD インスクリプション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:2170kg
●エンジン:直4 DOHCターボ+スーパーチャージャー+モーター×2
●総排気量:1968cc
●エンジン最高出力:233kW(318ps)/6000rpm
●エンジン最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2200-5400rpm
●モーター最高出力(前+後):34kW/2500rpm+65kW/7000rpm
●モーター最大トルク(前+後):160Nm/0−2500rpm+240Nm/0-3000rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●JC08モード燃費:15.7km/L
●タイヤサイズ:255/45R20
●車両価格(税込):884万円
■ボルボ XC60 T5 AWD インスクリプション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1900×1660mm
●ホイールベース:2865mm
●車両重量:1830kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1968cc
●最高出力:187kW(254ps)/5500rpm
●最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1500-4800rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・60L
●JC08モード燃費:12.6km/L
●タイヤサイズ:235/55R19
●車両価格(税込):679万円
[ アルバム : ボルボ XC60 T8ツインエンジン & T5 はオリジナルサイトでご覧ください ]
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みんなのコメント
走りも安全性も素晴らしい
ディーゼルが無くなったのは惜しい
ドイツSUVと比べると乗り味がソフトで落ち着きがあります。
インテリアのセンスや品質は抜群にいいと思います。
唯一残念なのは、車重がかなりあるので軽快感が少し足りない感じがする事ですね。