9年ぶりにフルモデルチェンジを受け、新型となったSUVの王者、ランドローバーのレンジローバー。今年1月には日本にも導入開始となったのが、その乗り味はどのようなものだったのか? メルセデスベンツゲレンデバーゲンなどのSUVにも乗ってきたフェルディナント・ヤマグチ氏がレポートする。
文/フェルディナント・ヤマグチ、写真/ジャガーランドローバージャパン、フェルディナント・ヤマグチ
9年ぶり登場の新型レンジローバーに試乗! その乗り味はSUVの王者にふさわしいものか!?
■空前のSUVブームのなか、王者レンジローバーの出した回答は?
当代取って5代目の新型レンジローバーと筆者
レンジローバーが9年ぶりにフルモデルチェンジを行った。
ふだんはめったに試乗会なるものに顔を出さないのだが、何しろほかならぬレンジである。会社の仕事を終えると、大急ぎで新幹線に飛び乗り、試乗会場の軽井沢まで出かけてきた。新しいレンジのキャッチコピーは「妥協なき洗練性とラグジュアリー」である。
そうそう。何事も妥協してはイカンのだ。
往時は「砂漠のロールスロイス」と謳われたレンジローバーは、高級SUVの代名詞。悪路走破性は高くとも、ガタゴトと乗り心地の悪いトラックベースのSUVが多いなか、唯一無二とも呼べる孤高の存在だった。
ところが、昨今のSUVブームで欧州高級ブランドが「バスに乗り遅れるな」とばかりに次々とSUVを商品化し、ついにはあのロールスまでもがSUVを発売するに至った。ラグジュアリーカー本家本元の登場である。もはや「砂漠のロールス」は通用しない。
業界周辺を見渡せば、ベントレーもアストンもランボもマセラティも、我も我もとSUVを売り出している。そして街を見渡せば、それこそ一時期のワンボックスブームの如く、大小さまざまなSUVが走り回っている。
前モデルの発売から9年間。SUVを取り巻く市場環境は大きく変化した。そんななか、元祖高級SUVのレンジはどのようなクルマを出してくるのか。否が応でも期待で胸が膨らむというもの。
■気品漂う「英国御用達」こそレンジの真骨頂
パッと見は先代と見分けの付かないレンジだが……
試乗会場の美術館のようなオサレなイベントスペースに鎮座するレンジを一見した時は、あまりの美しさに思わず息を飲んだ。いっさいのムダを削ぎ落とした端正なフォルム。上質で上品で、気品さえ漂っている。さすがは英国王室御用達である。
ABCピラーを黒く塗装して、屋根が浮いたように見えるフローティングルーフ。そのルーフが後方に向かって、なだらかに下降している。ルーフとは逆に、後方に向かって上昇するサイドシル。そしてリアバンパーの後端部分はボートのように跳ね上がっている。
これらのデザイン要素は、すべて「クラシックレンジ」と呼ばれる初代から受け継がれる伝統で、当代取って5代目の最新型にもしっかりと継承されている。
それにしても前モデルからの変化が少なすぎはしないか。キープコンセプトは結構だが、あまりにも保守的にすぎないか。パッと見はほとんど4代目と変わらない。クルマに興味のない人が見たら、ほとんど見分けが付かないような外観だ。
■驚かされたのは実車ならではの「塊感」
新型レンジローバーの継ぎ目のない「塊感」を見よ!
しかし、さらにクルマに近づいて観察してみると、クレイモデルがそのまま実車になったような「塊感」に驚かされる。
何というか、切り出したばかりのバターのように、段差がなく、ヌルっとしているのだ。
「チリが合う」などというレベルではない。本当にクルマ全体がヌルっとひとつの塊に見える。特にガラスとボディ鉄板部分の継ぎ目がすごい。よくぞここまで、と嘆息するばかりである。
新しいレンジは「MLAフレックス」と呼ばれる新設計のアーキテクチャーを採用している。さまざまなパワートレーンに対応が可能で、現状は4.4LのV8ガソリンターボに、3L直6ディーゼルターボマイルドハイブリッド、そして3L直6ガソリンプラグインハイブリッドの3種類が設定されている。PHVは出力105kwの強力モーターと組み合わされている。再来年には純EVも投入される予定であるという。
■思っていたよりも小回りが利くのは4輪操舵システムの恩恵
高級感あふれる室内。フローティングマウントされたセンターディスプレイは13.1インチだ
さっそくクルマに乗り込んでみよう。指定したのは3Lディーゼルのマイルドハイブリッド。
内装もまた息を呑むような高級感。丁寧に鞣(なめ)された革の匂いがプンと漂っている。運転席に着くと、ダッシュボード周りもまたキープコンセプトで前モデルとソックリだ。センター部から一段前に飛び出すように設置された13.1インチの大型ディスプレイだけが大きな変更点と言えようか。
さっそくエンジンをかける。静かだ。ゆっくりと走り出し、狭い駐車場から道に出る。大きな車体なので切り返しが必要か……と思ったら、一発で抜けることができた。驚くほど小回りが利く。低速時には後輪が最大で7.3度まで逆方向に舵を切る4輪操舵システムのおかげだ。
ふた昔ほど前に流行った4輪操舵。当時は違和感しかなく、あっという間に廃れてしまったが、最新のシステムはまったくの別物だ。この巨体で最小回転半径がVWゴルフと同じというのだから素晴らしい。
新型レンジローバーの後輪が微妙に逆ハンを切っているのがおわかりいただけようか
長い坂道を駆け上がる。静かだが力強い。タイヤが泣きを入れるほど攻め込んでも、あくまでジェントルなフィーリング。飛ばしてもノンビリ流しても、あくまでラグジュアリー。全力で走っても、髪も乱さずネクタイも緩まぬ英国紳士のような振る舞いだ。
それにしてもこの静かさはどうだ。サイドウィンドウは2枚の合わせガラスを使っているとのことだが、それだけではあるまい。
試乗後にランドローバー広報の方に尋ねると、実はアクティブノイズキャンセリングを採用しているとのこと。マイクで不快なノイズを拾い、車内に設置されたスピーカーから逆位相の音を出して、不快な音を打ち消してしまう例のアレだ。イヤフォンやヘッドフォンではおなじみだが、そのシステムが、丸々車内に設置されているのだ。スピーカーの数は13個。その効果は絶大だ。
夜にはロングボディの後部座席も体験した。偉くないのに偉くなったような気分だ
新型レンジローバーは元祖高級SUVの意地を見せたような仕上がりだった。
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みんなのコメント
エアサスは毎月パッキンリングの交換が必要だったし、革シートは最初は良いけどすぐに罅割れするし、ダッシュボードは全体が浮き上がってくるし、ギア比が低くて日本の道路事情に合致していない。
あまり、良い思いをしなかった車両です。