ホンダが国内生産体制の最適化を理由にS660の2022年3月生産終了を発表。するとその後、20日も経たずに完売したことがアナウンスされた。
あまりに急な生産終了、そして完売のニュース。新車ではS660が買えなくなってしまったのは残念だ。
昭和の灯がまたひとつ……熊本の伝説的ホットドッグ販売車が閉店!! ありがとう四つ葉&チェリーキャブ
ただ、最後にこれだけ一気に売れてしまうのも仕方がないのかもしれない。何といってもS660は軽自動車のミドシップスポーツという日本でしか作れないミニスーパーカー。まさに日本の宝だ!!
そのホンダS660の魅力を今一度、モータージャーナリストの岡本幸一郎氏に振りかえってもらった。
文/岡本幸一郎
写真/ベストカー編集部
【画像ギャラリー】突然の生産終了発表で注目集まる・・ホンダ S660写真集
■1年後の生産終了ならゆっくり購入の検討をできると思ったら……
2021年3月12日に、1年後の2022年3月をもってS660の生産を終了する旨が発表されるや注文が殺到し、20日もたたない3月30日の時点で早くも予定していた全生産枠がすべて埋まるという状況となった。
生産終了の判断がなされたのは、2022年より順次、騒音や燃料蒸発量、安全関連などさまざまな法規制への対応が求められるようになるため、今後も販売を継続するには大がかりな開発対応が必要になることを受けて、総合的に検討した結果だという。
来年3月を以って生産が終了することがアナウンスされたS660。発表後わずか2週間強で1年間の生産枠が埋まるほどの受注が集中。せめて期間限定で注文を受けるなどの対応が、メーカーの使命とも思うが
また、生産を終了することを1年も前にいち早く発表したのは、最後の機会にひとりでも多くのお客様に購入を検討いただく期間を長くするためとのことだが、こうなってはホンダとしても複雑な心境なのではないだろうか。
個人的には現状はもう無理であるはずの生産枠をいくらか増やす可能性もなくはないと思っている。
■発売当初も人気が集中。販売台数は最初の2年間でピークを迎えていた
短い期間に多数の受注といえば、S660が登場した2015年を思い出す。その時も発表前から話題騒然となり、受注が殺到して納車まで年単位といううわさが流れるほどのバックオーダーをかかえたわけだが、今回の生産終了発表後の流れも、実は現象としては同じではないかと見ている。
ご参考まで、S660の暦年の販売台数は、2015年9,296台、2016年10,298台、2017年4,075台、2018年3,003台、2019年2,842台、2020年:2,747台、2021年1月~2月が435台と、やはり最初の2年が突出して多い。
月販台数では、最近はピークの数分の1となる月販200台程度となり、すっかり落ちぶれたように見えたものの、けっして飽きられたわけではなかったということだ。
この数年は月販200台前後で推移していた。決して多くはないが、スポーツカー好きのニーズをガッチリ掴んでいた。ただ騒音や燃料透過規制といった、新たな規制の波に勝てなかった
発売時には、こんなに面白そうなクルマが出てきたのだから、ぜひ乗ってみたいという人が殺到した。そして今回は、できるものなら乗ってみたいとずっと潜在的に思っていた人が大勢いて、いつかは買えるといいなと思っていたけれど、もう新車で買えなくなることがハッキリしたので、それなら今しかないとアクションを起こしたというわけだ。
まさしく6年前の出来事と根っこにあるものは同じ。S660というのは人をそこまで駆り立てる「何か」、そんな要素を持ったクルマということだ。
■ホンダの「走る喜び」を凝縮した「S660」はモデューロXの人気も高かった
そんなS660は、本田技術研究所設立50周年を記念した商品企画提案がきっかけで開発が始まり、あらゆる場面でいつでもワクワクする、心が昂る本格スポーツカーを追求し、ホンダらしい「走る喜び」の実現を目指したモデルとして2015年4月に発売された。
2015年というと、くしくも日本が誇る2シーターオープンの雄、マツダのロードスターがND型に移行した年でもある。日本カー・オブ・ザ・イヤーでは接戦の末に敗れたものの、この年を象徴する1台であったことには違いない。
2018年には、ホンダアクセスが手がけたコンプリートカーの「モデューロX」が加わった。ノーマルでも充分に楽しいところ、モデューロブランドが培ってきた「上質でしなやかな走り」を実現するチューニングを施されたS660は、その他の車種では3~5%程度のところ、S660は実に約15%という高い販売比率を誇ったことに関係者も驚いていた。
モデューロXの販売比率が他車比で高かったのもS660の特徴。ファイナルバージョンとなるバージョンZも早々に完売。コンプリートカーだけにこの仕様の台数が限定されてしまうのは仕方ない
2020年1月には初のマイナーチェンジを実施し、「デザインの深化」をコンセプトに内外装をリフレッシュするとともに装備の充実を図った。
それまでブラックだったフロントピラーがボディ同色にされたほか、フロントグリルやアルミホイールのデザインや灯火類の色が新しくされたことで、雰囲気がだいぶ変わった。新色のひときわ目を引く鮮烈な「アクティブグリーン・パール」は、まさしく小さなスーパーカーのようだった。
インテリアでは上級の「α」のシート表皮が変更され、待望のシートヒーターが追加されたほか、ステアリングホイールとシフトノブなど常に手に触れる部分にアルカンターラが採用されて質感が格段に高まった。
そして2021年3月に、冒頭の生産終了と当時に最後の特別仕様車として、数々の専用装備の与えられたモデューロX バージョンZが発表されるや、同モデルの生産枠が真っ先になくなったというが、そうなったのも無理もない。
■貴重なスポーツカーとして、これからも末永く愛されるクルマになるだろう
当初の狂熱が一段落した2018年以降も、毎月コンスタントに200台前後が売れた計算となり、ライバルといえるコペンとしのぎをけずるようになったのは、数が減ったというよりも、コペンともどもこの世界観に共感し期待する人が一定数ずっと存在するからにほかならず、むしろ誇れることではないかと思っている。
おそらくオーナーの大半が車両を複数所有しているはずで、それならなおのこと、求められるのは普通のクルマでは味わえない「非日常」的な体験をさせてくれること。
収納スペースすら限定的、タイトで走る事に徹したS660のコックピット。基本一人乗りで助手席がラッゲージスペース代わりで走りを楽しむ、今どき珍しいピュアスポーツカーであった
その点、世界最小のミドシップオープン2シーターであるS660は非日常性のカタマリだ。ロールトップの着脱は少々手間がかかっても、ほとんど荷物を置くスペースがなくても、そんなことは問題ではない。
中古車は間違いなくプレミア相場になるだろう。特に特別仕様車のバージョンZは、かなりのことになると思う。そして、現役が終わってまもなく25年が経つビートをはじめ、「平成ABCトリオ」と呼ばれる3台が、今でも中古車市場で存在感を発揮しているように、S660もこれからもずっと注目されつづけることに違いない。
生産終了は惜しいが、これまでに世に出た約3万台のS660が長らく愛されることを願っている
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