今ではノートやセレナのe-POWERで勢いに乗る日産が、流行りのコンパクトクロスオーバーSUVであるジュークの代わりに投入したのが、マーチ同様にタイで生産される”電気で走るSUV”、 最新制御のe:POWERを搭載するキックスだ。ジュークは欧州で新型が発売されているのだが、より日本市場に合ったモデルが、欧州以外、つまりアジアやアメリカ大陸で人気の、事実上のジュークの後継車となるキックスだったというわけだ。
しかも、日本仕様は新たにe-POWERモデルとし、日産が推進する電動車の1台として登場したことになる。
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日産のコンパクトカーを担当するVプラットフォームの上に構築されたボディは、全長4290×全幅1760×全高1610mm、ホイールベース2620mm。ジュークが同4135×1765×1565mm、2530mmだから、一回り大きい。先代ジュークほどのアク、個性はないものの、スタイリングは今風でスタイリッシュ。2020年グッドデザインアワードを受賞しているぐらいなのである。
しかし、注目すべきは室内長で、ジュークの1835mmに対してキックスは1920mmと余裕があり、それがそのまま後席居住空間や荷室の奥行増に直結(ちなみに2019年デビューの2代目ジューク欧州仕様は全長4210×全幅1800×全高1595mm、ホイールベース2636mm)。
実際、身長172cmの筆者のドライビングポジションを基準に、その背後の後席に座ると、ジュークは頭上に80mm、膝周りに110mmのスペースだったのだが、キックスは同130mm、155mmとリード。より後席の広さが際際立っている。
また、ラゲッジスペースも、ジュークは開口部地上高770mm、フロア奥行き820mm、最小幅970mm、高さ680mmなのに対して、キックスは同680mm、890mm、980mm、880mmと、開口部が低く重い荷物の出し入れがしやすいだけでなく、ラゲッジ容量も大幅に拡大しているのだ。最低地上高170mmはジューク、キックスともに同様だが、後席のゆとりとともにクラストップレベルであり、アウトドアなどに出かける際の荷物の積載性能が向上していることは間違いない。
キックスのパワーユニットは1種類。1.2Lエンジン、最大出力82ps、最大トルク105kg-mに、EM57と呼ばれる、セレナなどと同じモーターを付加。そのスペックは最大出力129ps、最大トルク26.5kg-mに達する。セレナe-POWERの中心グレードの車重が1740kgなのに対して、キックスのe:POWERは1350kgだから、パワー的にはさらなる余裕があると言っていいだろう。
試乗したのは2グレードあるうちの上級グレードとなる、286万9900円(プロパイロット込み)のキックスXツートーンインテリアエディション。シートの配色は派手だが、先進を謳うアドバンスドドライブアシストディスプレーを備えたメーター周りにしても、格別の新しさはない。ナビケーション画面の小ささも、そう思わせる一因だろう。
そんなキックスを走らせれば、乗り心地はおおむねフラットながら、205/55R17サイズのタイヤによる乗り心地はやや硬め。路面によってゴツゴツするタッチが好みの分かれるところ。
動力性能に不満はない。電力が十分にあれば、電動駆動によってスムーズかつ静かに走る。アクセルペダルを深々と踏めば、血の気が引くほどの加速力を見せつけてくれるのは、なるほど、セレナe:POWERと同じモーター搭載にして、車重が390kgも軽いことに起因する。センターコンソールにあるモードセレクターでチャージモードとマナーモードの使い分けも可能で、シーンに応じて効率のいい、かつ静かな走行を味わうことができる。
もちろん、バッテリーに充電が必要になれば、エンジンが始動する。気になるのはここで、それまでの静かさから一転、発電を担う1.2Lエンジンのノイズの室内への侵入が、けっこう気になるのである。静かなときとそうでないときの差が大きい・・・ということだ。エンジンがかかった際の遮音、吸音性能については、もうワンランク、ツーランク上げてほしいという印象である。
ちなみに、電力を使い切ると、ただの1.2Lエンジン搭載のクロスオーバーSUVになってしまうのだが、ここでも車重の軽さが効いて(セレナ比)、そこそこ走ってくれるから心配はない。
e:POWERに、アクセルペダルの操作だけで減速から停止までもっていけるワンペダル機能が備わるのは、ノートやセレナ同様だ。個人的にはワンペダルの減速感にいまだになじめず、ノートやセレナのe:POWERに試乗しても、あえてノーマルモードで走ってしまいがちなのだが、ブレーキの消耗が減るなどのメリットは、パドルシフト同様に認めていいだろう。
ただ、e:POWER=電動車とプロパイロットとの相性は文句なしだ。プロパイロットは高速道路でのドライバーの負担を軽減してくれる、高速道路同一車線運転支援技術であり、ステアリング右側の青いスイッチを押すだけで(設定速度や車間距離は別途設定)、渋滞走行や長時間の巡航走行のアクセル、ブレーキ、ハンドル操作をクルマがアシスト。前車との車間距離を一定に保ち、車線中央をキープ。一定のカーブでも、その高速道路同一車線半運転支援技術を発揮してくれるから、運転は楽々、安全。渋滞追従機能付きのため、渋滞時、クルマが停止しても、スイッチ操作、またはアクセル操作で追従走行を再開。まさに自動運転に向けた先進技術。この機能が、実はガソリン車より、トルクが瞬時に立ち上がる電動車のほうが、再加速、追従性能、スムーズさで勝るのは当然だ。
つまり、キックスは、ワンペダル機能というより、標準搭載のプロパイロットを使いこなせるユーザーにぴったりのクロスオーバーSUVであるように思える。そう、高速道路、長距離走行の機会が多い、なおかつ比較的コンパクトなボディサイズでありながら、後席の利用頻度が高く、またラゲッジスペース荷物を満載することもあるクロスオーバーファンに薦められる。
価格はこのクラスのクロスオーバーモデルとして高めに感じられるものの、e:POWERとプロパイロット、車載通信機、SOSコール、オートブレーキホールド機能などが装備されている点を差し引けば、ライバルと比較しても、決して割高ではない。
ただし、駆動方式に4WDがなく、2WDのみという点は、コンパクトクロスオーバーモデルに走破性、4WD性能までで求めるユーザーにとっては、ちょっと物足りないかも知れない。
日産キックス
https://www3.nissan.co.jp/vehicles/new/kicks.html
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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