「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、レンジローバー イヴォークだ。
レンジローバー イヴォーク(2011年:ニューモデル)
レンジローバー シリーズのブランニュー モデル、「イヴォーク」の試乗会は、ビートルズで有名な英国のリバプールで行われた。8月初旬でも気温20度という過ごしやすい気候の中で、レンジローバー初のプレミアムコンパクトSUVを試す機会を得た。
レンジローバーイヴォークが2代目にフルモデルチェンジ! ランドローバー初となるマイルドハイブリッドも用意
いま(編集部註:2011年現在)、ランドローバー・ブランドのモデルは、「ランドローバー系」と「レンジローバー系」に分かれている。前者にはディスカバリー4/フリーランダー2/ディフェンダーが、後者にはヴォーグ/スポーツがラインナップされている。ふたつに分かれている理由は明白で、マーケットが違うからだ。ランドローバー系はオフロード色が強く、レンジローバー系はハイパフォーマンス & ラグジュアリーカーという位置づけだ。
そのレンジローバー系に、新たに追加設定されたモデルが、このイヴォークだ。2008年のデトロイト モーターショーで発表された「LRX コンセプト」をもとに、今年(編集部註:2011年)のジュネーブ モーターショーで正式発表され、夏から順次ヨーロッパでデリバリーが開始されている。
その特徴は、なんといっても印象的なデザインと、使いやすいサイズといったところだろう。高級SUVはそれなりに大きいものだ!という概念を覆す寸法でイヴォークはつくられている。車幅こそ2mに届きそうだが、全長は4.4mに満たない。まさに、最近流行のプレミアム コンパクトSUVなのである。
デザインコンシャスな3ドア ボディも設定される
ボディタイプは3ドアと5ドアが設定されているが、デザインコンシャスな面からすると醍醐味はやはり3ドアだと言えるだろう。フロントマスク同様に個性的なルーフラインが、これまでのどのモデルとも違うエレガントさを放っている。というか、細部にこそレンジローバー ファミリーの一員であるという「らしさ」は注入されているものの、ここまでモダンなシルエットを持つ兄弟車は、ほかにない。
次にハードウエアだが、イヴォークは基本的にエンジン横置きのFWDパッケージからなり、かつオンロードでの乗り心地を重視したモノコック構造を採用している。つまり、レンジローバーの兄たちに近いわけではなく、むしろランドローバーのフリーランダー2に似たプロファイリングだ。
だがしかし、大きく違うのはパワーユニットだ。イヴォークは高効率な2L 直4DOHCユニットを搭載している。最高出力は240psを発生し、低回転型のターボと可変バルブタイミングまで装着される。要するに高出力、低排出ガスの両方を実現するスグレモノのエンジンだ。
ただ、そんな乗用車的なつくりでオフロードは大丈夫なのか?と思われる読者諸氏も多いだろうが、そこは心配に及ばない。兄たちに採用されてお馴染みのテレインレスポンスが各部を制御し、道なき道を縦横無尽に走ることができる。欧州のトレイルは北米のそれと違いロックセクションは少なく、平地が多いため田園地帯のダートセクションが主流となる。だが、それでもユニークなダイヤル式のATセレクターを合わせ、アクセルを踏むだけで、何の問題もなく走破してしまう。
信頼性が高いのはいわずもがな。走り出して5分もあれば、誇り高きレンジローバー ファミリーの一員であることはきちんと証明されるのだった。
■レンジローバー イヴォーク クーペ Si4 2.0L(本国仕様) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4335×1965×1605mm
●ホイールベース:2660mm
●車両重量:1640kg
●エンジン:直4 DOHCターボ
●総排気量:1999cc
●最高出力:177kW(240ps)/6000rpm
●最大トルク:340Nm(34.7kgm)/1900-3500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:フロント横置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・70L
●JC08モード燃費:未発表
●タイヤサイズ:225/65R17
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