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穴場の1000万円以下!! JPS仕様のロータス「エスプリ」は現実味ある70年代スーパーカーだ

掲載 更新 20
穴場の1000万円以下!! JPS仕様のロータス「エスプリ」は現実味ある70年代スーパーカーだ

■1978年のF1コンストラクターズタイトル獲得を記念した限定モデル

 今や遠い過去の記憶となりつつあるが、かつてのF1GPシーンはタバコ会社のスポンサーカラーに彩られていた。

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 なかでも印象的だったのは、F1の世界に初めてスポンサーカラーを導入したロータスだろう。ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社の「ゴールドリーフ」に端を発し、のちに同社が販売を引き受けた「ジョン・プレイヤー・スペシャル(JPS)」に移行し、1980年代初頭までロータスのF1マシンたちを飾った。

 そしてそれらのボディカラーは、「エラン」や「ヨーロッパSP」などロータスの市販モデルにも限定的に採用されることになる。そのなかでも、スーパーカー世代にとってひときわ印象的だったのは「エスプリ」の「ジョン・プレイヤー・スペシャル(JPS)」エディションだったと思う。

 今回VAGUEでは英国「シルバーストーン・オークション」社が2021年3月下旬に開催したオンライン限定オークション「The Race Retro Live Online Auction 2021」に出品された「エスプリJPS」の概要と、オークション結果についてレポートしよう。

●1978 ロータス「エスプリS2 JPS」

 ロータス・ヨーロッパSPの後継モデルとして1976年にデビューしたエスプリは、進化の過程でミニ・スーパーカー化していったヨーロッパと違って、企画された当初からスーパーカー的資質を意識したモデルだった。

 ヨーロッパ用のそれを拡大、強化したロータス式バックボーンフレームのミッドシップに、ロータスが1972年からエンジンを供給していた「ジェンセン・ヒーレー」や、ロータス2代目「エリート」ですでに実力を証明済みだった「907」型の直列4気筒DOHC16バルブ1973ccユニットを搭載する。

 このエンジンは英本国/ヨーロッパ仕様ではデロルト社製キャブレターを組み合わせて160ps、北米/日本仕様ではストロンバーグ社製キャブレターとのコンビで140psを発生した。

 この排気量ゆえにスーパーカーと呼ぶにはやや非力だが、シリーズ1(S1)で900kgと公称された軽量も相まって、そのパフォーマンスは十分以上のものであった。もちろんハンドリングはロータスの真骨頂というべき素晴らしさであった。

 一方フレッシュかつ先鋭的なスタイルは、イタルデザイン、ジウジアーロの傑作のひとつである。1972年ジュネーヴ・ショーに、彼が参考出品したコンセプトカー「マセラティ・ブーメラン」が直接のモチーフとなったともいわれている。

 1978年には、オーバーヒート対策や内外装にブラッシュアップを施した「エスプリS2」に進化。そして同じ年のF1世界選手権にて、マリオ・アンドレッティおよびロニー・ピーターソンを乗せたロータス79コスワースがドライバー部門/製造者部門で世界タイトルを総なめにしたことを記念して、この年の年末から「ジョン・プレイヤー・スペシャル(JPS)」カラーの「エスプリS2スペシャルエディション」が限定リリースされることになった。

 メカニカルパートについてはスタンダードのS2と共通ながら、グランドエフェクトを初めてF1界で成功させた「ウイングカー」、ロータス79の圧倒的な戦果を連想させるブラック&ゴールドのボディカラーに彩られ、アロイホイールもゴールド仕上げとされた。

 また「エラン・スプリント」や「ヨーロッパSP」時代のワールドチャンピオン記念限定車でも見られた長方形の「WORLD CHAMPION」バッジも、獲得タイトル数を示す月桂冠を増やして装着された。

 一方インテリアでは、ボディカラー&ストライプの色に合わせてゴールドエフェクトとしたコーデュロイ生地のシートインサート、ウレタン樹脂製2本スポークのオリジナルに換えて3本スポークのレザーリムとした専用ステアリングホイールを装備するほか、スタンダードではオプションだった日立製作所「Digi-One」ラジオカセットも標準装備化されている。

■最上級のレストア車ながら1000万円切りの価格で落札

 ロータス・エスプリS2 JPSは、当初200台が1978年12月から限定生産される予定ながら、最終的には1979年7月までに英国内マーケット向けのRHD(右ハンドル)仕様車が100台。米国向け55台/ヨーロッパ諸国向け30台のLHD(左ハンドル)仕様が85台の、総計185台(ほかに総計149台説もあり)の生産に終わったとみられている。

●1978 ロータス「エスプリS2 JPS」

 今回シルバーストーン・オークション社の「The Race Retro Live Online Auction 2021」に出品されたエスプリJPSは、1978年12月21日にヘセルのロータス本社工場からラインオフ。ロンドン近郊ハンプトンコートの「チップステッド・モーターズ(Chipstead Motors)」によって1979年1月20日に登録されたのち、最初の所有者である「ウェイブリー・テキスタイルズ(Waverley Textiles Ltd.)」社に納入されたといわれる。

 車両には「No.22」であることを示す限定バッジを付けられているものの、ロータス社オフィシャルのドキュメントをひも解くと、実際には12台目に製作されたエスプリJPSであることが判明しており、現在ではそのヒストリーも含めて認知されている個体である。

 現在この個体を管理しているのは、デヴォン州エクセター近くの小都市クレディトンに本拠を置く、ヘリテージ・ロータスのオフィシャルディーラー「SJスポーツカー」社である。2017年に入手して以来「ベスト・オブ・ブリード」と呼ばれる最上級の基準に戻すためにFRP製ボディワークをゲルコート状態まで剥離し、オリジナルのストライプセットとアロイホイールを正確なゴールドのカラーリングで仕立てたうえで、オリジナルのブラックでボディを再塗装したという。

 また、オークション出品にあたって添付されたヒストリーファイルによると、新品パーツを多用したエンジンのフルリビルドがおこなわれている。この際、キャブレターのオーバーホール、無数のメカニカルパーツをリニューアルするために2万5000ポンド(邦貨換算約380万円)以上を費やしたほか、細部のブラッシュアップのために3000ポンドの請求書が別に計上されている。

 こうして素晴らしいコンディションを回復したエスプリS2 JPS「No.22」は、英国BBCの大人気TVプログラム「Top Gear」においてジェレミー・クラークソンが紹介したほか、同番組の公式YouTubeクリップにも登場。加えて、イギリスのみならず世界でも屈指の権威を誇るクラシックカー専門誌「Classic Cars」の2019年1月号でも9ページの特集記事が組まれ、その雄姿を全世界にアピールしている。

 オークション出品時の走行距離は6万7295マイル、つまりおよそ10万8300kmで、オリジナルのツールウォレットにジャッキセット、純正のスペアホイール、およびロータス純正のワークショップマニュアルを完備した状態で出品された。

 そして、オンライン競売では6万5813ポンド、日本円に換算すれば約990万円で無事落札されるに至った。

 ジウジアーロ時代のエスプリとしてはおそらくハイエンドに属するであろう落札価格であったが、エスプリというモデルの歴史的ポジションや限定車ならではの希少価値、さらに個体のコンディションを思えば、なかなかリーズナブルに感じられてしまうのは、筆者だけではないだろう。

 ところでこのエスプリS2 JPSについて、オークションハウス側では歴代のオーナーについての詳しいヒストリーを明かしていなかったが、これまで複数のナンバープレートが取り付けられてきたという。しかし「クラシック・ロータスに精通した現在の所有者は、新車としてデリバリーされた際の登録番号を取得することに成功した」と公式オークションカタログには誇らしげに記されている。

 イギリスでの登録を希望する顧客以外にメリットはないのだが、これが付加価値となるというのも英国のオークションらしいのではと妙に納得してしまったのだ。

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みんなのコメント

20件
  • ジウジアーロデザインは、半世紀近くたっても全く色褪せない。エスプリはウエッジシェイプの代表格。ガレージに有ったらどんなにか嬉しいだろう。
  • JPSはヨーロッパがいいな!
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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