愛車を大きくイメチェンするなら塗装やカラーラッピングという手があるけど、「そこまではコストがかけられない。もっと手軽にリーズナブルに……」と考えた場合に候補に挙がるのがヘッドライトバルブの変更だろう。
特に、ちょいと昔のクルマに採用されたハロゲンから、HID(キセノン・ディスチャージ)やLEDヘッドライトに交換すると、一気に明るくなって夜間走行の安全性は高まるし、日が落ちてからの愛車を見るとものすごくグレードアップしたようなイメージさえ与えてくれる。
フロントライトは最重要安全装備!! 結局明るくて頼りになるのはHIDか? LEDか??
今回はそんなヘッドライトの「HIDか? LEDか?」について解説しよう。
HIDやLEDは旧式のハロゲンと比較した場合、明るいうえに消費電力も少ない。ハロゲンよりも高性能なHIDは多くのクルマに純正採用され支持されてきたが、発光の構造が簡単なLEDは多くのメーカーが市場参入しやすく、結果的にスペックはどんどん向上していった。
とまあ、今こそ「で、結局どっちなの?」と思えるようになった両者について、まずはその特徴から。
文/今坂純也(DIRT SKIP)、写真/トヨタ、写真AC
発熱量が高く、実は豪雪地帯の人に向くHID
HIDはガラス管内部での放電によって青白い光を発する。明るさはLEDに勝ると言われたが今は僅差かも。個体差はあるが一般的には約2000時間、5年程度での交換が推奨されている
HIDの構造
クルマのバッテリーから流れる12Vや24Vの直流電流を、安定器である「バラスト」で交流に変換。そこからさらに昇圧器である「イグナイター」で数万ボルトまで昇圧させた電力をガラス管の中でアーク放電させて「バーナー」を発光させる。
ハロゲンのように発光体「フィラメント」を持たないため、発光体の劣化によって点灯せず……ということがない。
HIDの特徴
■明るさ:ハロゲンはもとより、ほんの数年前までは「LEDを確実に上回る明るさ」と言われてきたが、現在では純正HID とハイスペックLEDとの比較ではほぼ同等レベルとも。
■消費電力:多くは35W、中には55Wモデルも存在する。
■寿命:約2000時間
*新品状態から光量が70%まで落ちた時点を「寿命」と言う
■最大点灯までの時間:数秒
■発熱量:発光部で300度程度と高めなためヘッドライトレンズも熱を持ち、雪が溶けることで降雪時に視界を確保できる利点がある。
取り付けのしやすさ:やや難しい
今や総合的に見てメリットばかりのLED
HIDよりも暗いと言われていたLEDだが、最近では勝るとも劣らないものも登場している。最大の魅力は1万時間(約15年間)という寿命の長さだ(写真はカローラアクシオ)
LEDの構造
いわゆる「発光ダイオード」のことで、電気を流すと発光する半導体(電気を通す導体と電気を通さない絶縁体の中間の性質を持つ)。異なる性質を持つP型半導体とN型半導体をくっつけて作られており、+側のP型半導体と−側のN型半導体に電気を流すと光を放つしくみ。
発光部は発熱しないが、強く発光させるために基盤に大電流を流すと基盤自体が発熱する。耐熱温度が80度以下と言われるLEDの発光部はこの熱に常にさらされており、基盤の発熱をいかに抑えるかが性能を維持させるのに重要。基盤の発熱を抑えるための、放熱フィンや冷却ファンをユニット後部に持つのはそのためなのだ。
LEDの特徴
■明るさ:年々明るさは向上し、今やHIDと同等。
■消費電力:12W、20W、21W、27W
■寿命:約10000時間
*新品状態から光量が70%まで落ちた時点を「寿命」と言う
■最大点灯までの時間:瞬時
■発熱量:光にほぼ赤外線を含まず、発光部は熱を持たないが基盤は発熱する。
■取り付けのしやすさ:HIDよりは難しくはない
ここまで読むと、スペック上は「こりゃLEDだな!」と思ってしまう。その選択はおおむね正しいが、LEDにも弱点はある。
降雪地域に住んでいる人は、せっかくのLEDがデメリットにも!?
降雪時は発熱量が少ないLEDは不利。ヘッドライトに付着した雪が融けることがないため、安全確保に必要な光量を得られないこともある
発光部の発熱量に関しては、発熱量の高い順にハロゲン→HID→LEDとなる。となると、豪雪地帯のようにヘッドライトレンズにも雪が降り積もるような所では、せっかくのLEDもヘッドライトレンズへの雪の付着(雪が溶けにくいため)によって、本来の明るさを発揮できないこともある。
発光部がどんなに明るくても、すべての光を照射してくれないのでは意味がないので知っておいたほうがいいだろう。
重要なのは信頼できる製品とショップ!
また、安価な外国製LEDでも非常に明るいものがあるが、発光位置が純正ハロゲンバルブと異なるものも多い。実際、筆者も愛車の軽トラックのハロゲンバルブを暗く感じて「爆光!」とうたわれた大陸製LEDを装着してユーザー車検にのぞみ、見事!? 不合格となって結局ノーマルに戻して車検に通しなおした経験がある。光量は確かに爆光だったが……。
近くの整備工場のメカニックに聞いてみると「すごく明るいのは確かなんだけど、光軸がでない(光が拡散している)んだよ」と(泣)。
あ、そうそう、ヘッドライトバルブの取り付けは車種によって難易度が大きく変わることも伝えておきたい。バルブ交換のために、バンパーを外してヘッドライトユニットも外さないと無理! な車種があったり、そもそもバルブの後ろのスペースがあまりなくてバックスペースの必要なLEDには交換不可だったり……。
今や性能はHIDを凌駕するLEDもかなり多くなってきたし、取り付けは一般ユーザーでも可能とは言え、「確かな性能のもの」で「自分のクルマの規格(や取り付けスペース)にきちんと合ったもの」を選ぶことが大事。なので、おすすめは日本製LEDで、確かなノウハウを持ったプロショップにまずは相談ってのがベストじゃないでしょうか!
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