上昇を続けるガソリン価格に実感できない景気の回復。今の世の中、クルマの評価に“燃費”は欠かすことのできない要素となった。
が、悲しいかな。人間は欲に支配される生き物だ。周囲を圧する大迫力のクルマに乗りたい、周りがビックリするような加速力のあるクルマに乗りたい、あるいは……。
この春ベストカーでは、そんな欲望を叶えてくれるクルマ、つまり燃費の悪いクルマだけを集めて「2018年 春 燃費悪い王選手権」を開催。
燃費が悪いほど“なんかイイ感じ”というビミョウな評価が下されるこの企画。その結果はぜひ中身を読んで確認していただきたいが、テストを担当した編集部員は声を大にして言いたい。
「燃費のことなんか忘れるくらい、コイツら楽しかったよ」と。
※本記事は2018年5月時点のものです。
文:ベストカー編集部
写真:平野学
取材協力:河口湖ステラシアター
初出:ベストカー2018年5月10日号
【なぜ逆走事故はなくせないのか!? 他】 クルマ界のギモンを集めてみた(その1)
■エントリーカーリスト
No.1
LEXUS LS500 F SPORT
1200万円 2230kg
全長5235×全幅1900×全高1450mmのボディに、422ps/61.2kgm発生のV6、3.5Lターボエンジンを搭載する車重は2230kg。かなりのヘビー級だ。
JC08モード燃費…10.2km/L
No.2
TOYOTA ヴェルファイア ZG
494万7480円 2150kg
4935mmの全長と1850mmの全幅を持つLクラスミニバンの雄。3.5LのV6エンジンは301ps/36.8kgmの出力を発生する。実は上のLSより軽い。
JC08モード燃費…10.6km/L
No.3
TOYOTA ハイラックス Z
374万2200円 2080kg
昨年(2017年)秋に日本に復活したタイ生産のピックアップトラック。150ps/40.8kgm発生の2.4L、直4ディーゼルターボを搭載。全長5335mmとかなり大きいが、運転はラク。
JC08モード燃費…11.8km/L
No.4
JEEP ラングラー Unlimited Altitude
455万円 2040kg
全長4705×全幅1880×全高1845mmで、ルーフは取り外しが可能。3.6LのV6エンジンは284ps/35.4kgmを発生する。思うに申告しているJC08燃費値が低すぎでは?
JC08モード燃費…7.5km/L
■一般道・高速道路・ワインディング、約250km走行で判定!!
というわけで、本選手権は東京都文京区音羽にある編集部を起点とし、一般道→首都高環状線→首都高3号線→東名高速・御殿場IC→国道138号線(一般道)→山中湖→中央道・河口湖入り口→中央道→首都高4号線→首都高環状線→首都高5号線・早稲田出口→編集部という、全長約250kmのコースで行われた。
御殿場ICで下りて山中湖へ抜ける途中に籠坂峠があるため、ワインディング走行まで楽しめるという、なかなかナイスなコースとなっている。
競技種目名が「燃費悪い王選手権」だけに、燃費がよろしくないほど「なんかイイ感じ」となるワケだが、我々テスト部隊が最も期待したのが、ジープ ラングラーだ。4.7m超えの全長に1.9m近い全幅。2トン超えの車重+そそり立つフロントグリル&Aピラー(運転席と助手席の斜め前にある柱のこと)は、惰弱なエコ精神を打ち砕かんとする、孤高の兵士のようだ。
果たしてラングラーは、我々の期待にしっかり応えてくれた。編集部を出て首都高・代官町入口に至るまでの一般道区間は、慢性的にクルマが多くて進みが悪いが、そこでみごとに3km/L台の数値を叩き出したのだ。
ラングラーの平均燃費計は100km走るのに使用する燃料を表示する方式。編集部から首都高・代官町入口までの燃費は3.8km/Lだった
その後は高速に入り燃費は伸びたが、それでも上り坂が続く御殿場ICまでの往路では、最後まで10km/L台をマークすることはなかった。そのあまりの男臭さにテスト部隊は袖を濡らした。
意外なことにレクサスLSも男のクルマだった。ラングラーの影に隠れ目立つことはなかったが、データを取るとなかなかシビれる数値が続く。
行きの高速ではラングラー同様、10km/L台に突入することはなく、御殿場ICから陸上自衛隊富士駐屯地付近までの一般道区間(11.6km)では6.4km/Lというナイスな燃費をマーク。
御殿場ICを出て国道138号線を北上。東富士五湖道路に乗る前に側道に外れて少し走ると、籠坂峠へのワインディングが現れる。昼間は交通量がやや多い
422ps/61.2kgmを発生する3.5Lターボということを考えれば悪くはないが、「そんなこといってもレクサスなんだから、しれっといい数値出しちゃうんじゃないの~?」という当初の予測をみごとに裏切ってくれた。レクサスLS、いいクルマだ。自分で買うことはないだろうが。
籠坂峠越え直後のヴェルファイアの燃費は7.8km/L。3.5L NAということを考えれば悪くない
そんな男汁出まくりのクルマ集団に、一台だけ混じった軟弱者がハイラックスだ。高速巡航を得意とするディーゼルエンジンということもあるだろうが、燃費にキツイはずの御殿場ICまでの区間でも13km/L近い数値を記録。下り坂が多い帰路では、なんと16km/L超えという好燃費をマークしたのだ。
快適性とは無縁な外観のクセして意外に乗用車的な乗り味といい、見た目と中身のギャップがけっこう大きいクルマという印象だ。そこに惚れるユーザーもいるかもしれないが、この種目では燃費が悪いほど「なんかイイ感じ」なワケで、そういう意味では高く評価できない。
もちろん、「見た目にワクワクさせられて、でも普通のクルマみたいに乗れて、燃費がいいのがイイなー」という願望を持っている人には強くオススメできる一台なのは言うまでもない。
籠坂峠を越えれば現れる山中湖。まだ周辺には雪が残るが他県ナンバーのクルマも多く、観光地としての人気の高さがわかった。取材日は平日だったが、仕事はどうした?
というわけで本日の選手権、総合一位は終始他を圧倒する燃費(の悪さ)を示したジープ ラングラーがその栄光を手に入れた。ただし、表示されているJC08モード燃費に対する達成率で見てみると、レクサスLSもなんともかぐわしい成績を残した。第一区間と最終区間ではヴェルファイアに苦杯をなめたものの、総合燃費ではぶっちぎりの達成率(の悪さ)を見せつけている。
各計測区間の燃費詳細については下の表を参照してほしい。
Results.
1位…JEEP ラングラー Unlimited Altitude
2位…LEXUS LS500 F SPORT
3位…TOYOTA ヴェルファイア ZG
4位…TOYOTA ハイラックス Z
総合結果。()内は燃費達成率を示します。しつこいようですが、燃費の悪いクルマが「イイ」んです。だって「燃費悪い王選手権」なんですから!
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