1990年代前半まで、「グループA」と呼ばれるカテゴリーを中心とした自動車レースが盛んに行われていた時期があった。クルマ好きたちは、「テンロク」と呼ばれた、1.6LクラスのDOHCエンジンが搭載された高性能なスポーツモデルに夢中になった。
速さと操る楽しさを競い合った時代、扱いきれるパワーだからこそ走りに集中できた、そんな“テンロク”エンジンを搭載した名車たちを振り返る。
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※本稿は2020年1月のものです
文:萩原文博/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年2月26日号
■No.001 トヨタ AE86 カローラレビン・スプリンタートレノ(1983年登場)
搭載する4A-GEUエンジンは130ps(グロス)の出力を発生
●どんなクルマ?
5代目のカローラ/スプリンターセダンは駆動方式がFFとなったが、スポーティモデルのレビン/トレノにはFRが継続採用された。レビン/トレノに搭載されている1.6Lの4A-GEと、当時シビックSiに搭載されていたZCが国産車テンロクバトルの原点となる。
軽量コンパクトなボディと後輪駆動、そして多彩なアフターパーツによりチューニングのベース車として人気。ハードな味付けの足回りの「GTV」が当時は人気を誇った。
●中古で探すと?
現在、カローラレビンの中古車の流通台数は約24台で、価格帯は約90万~約355万円。一方、スプリンタートレノは流通台数が約19台とやや少なめで、価格帯は約165万~約398万円。漫画『頭文字D』の影響もあり、レビンより高めの相場だ。最多グレードは両モデルともにGT-APEX。
■No.002 ホンダ 初代シビックタイプR(1997年登場)
初代シビックタイプR
●どんなクルマ?
ZC、B16Aと常にクラス最強と言われたホンダの1.6Lエンジン。その集大成といえる最高出力185psを発生するB16B型エンジンを搭載するのが初代シビックタイプRだ。ハイパワーエンジンを搭載するだけでなく、究極の走行性能を目指して徹底的な軽量化やボディ補強、そしてサスペンションチューニングが施された。まさにスペシャルなモデルといえる。
またレカロ製バケットシートやMOMO製のステアリング、チタン製シフトノブなど、高い走行性能をインテリアでも演出するパーツが装着されていた。後に、オーディオなど快適装備が充実したタイプR・Xが追加された。
●中古で探すと?
EK9という型式で呼ばれ、現在でも人気の高い初代シビックタイプR。中古車の流通台数は約58台と、20年以上前のモデルとしては豊富といえる。中古車の価格帯は約95万~約390万円と幅広い。300万円以上のクルマは走行距離が5万km以下というバリモノだ。ちなみに快適装備が充実したXは9台しかない。
185ps/16.3kgmを発生する初代シビックタイプRのエンジン。赤いヘッドカバーがタイプRの証だ。2代目からはエンジンが2Lに
■No.003 トヨタ 初代 MR2(1984年登場)
1986年以降の後期モデルには、写真のTバールーフ装着車も用意された
●どんなクルマ?
1984年に登場した初代トヨタMR2は国産初のミドシップ車だ。リトラクタブルヘッドライト、ミドシップ、2シーターというスーパーカーの条件をクリアしたコンパクトスポーツカーで、トップグレードにはレビン/トレノにも搭載された4A-GE型1.6L直4DOHCエンジンをミドに搭載。後期型はスーパーチャージャーを装着し戦闘力をさらにアップした。
ミドシップ車らしい、軽快かつクイックなハンドリングが特徴で、運転にはスキルが求められた。
●中古で探すと?
約35年前にデビューした初代MR2、中古車の流通台数はその時間を考えると驚異的とも言える約33台。価格帯は約40万~約335万円と非常に幅広いのが特徴だ。
前後期通じて設定されたGグレードが最も多く、続くのは前期型のGリミテッド。そして後期型のスーパーチャージャーを装着したGリミテッドの順。
■No.004 日産 5代目パルサーVZ-R(1997年登場)
ライバルは上のシビックタイプR。でもコチラはちょっとマイナー
●どんなクルマ?
1995年に登場した5代目パルサーに、1997年のマイナーチェンジの際に追加されたスポーティモデルがVZ-Rだ。搭載する1.6L直列4気筒エンジンは、可変バルブタイミング&リフト機構のNEO VVLを採用し、ハイオク仕様で、最高出力は175psを発生した。
FF車ながらリアサスはマルチリンクを採用し、高い走行性能を発揮した。それはVZ-RをベースとしたサーキットモデルのN1仕様が限定販売されたことが証明している。
●中古で探すと?
1997年に行われたマイナーチェンジで追加されたVZ-Rは、2000年までのわずか3年しか販売されなかった悲運のモデル。中古車の流通台数も少なく、今回の調査ではその価格帯も約50万~約60万円と高性能なスペックを考えると非常に安かった。しかしもう間もなく絶滅してしまう可能性が高い。欲しい人はお早めに。
■No.005 トヨタ 初代カローラFX GT(1984年登場)
丸みを帯びた2代目よりも直線的な初代のほうが欧州車のような趣がある。ただタマはほぼ絶滅
●どんなクルマ?
カローラスポーツのルーツといえるのが1984年に登場したカローラFX。当時はFRのレビン/トレノがあったが、シビックに対抗して2BOX車のFXが設定された。最上級グレードのGTには4A-GE型1.6L直4DOHCエンジンが搭載され、公道でもサーキットでも激闘を繰り広げた。
●中古で探すと?
今回の調査で発見できたカローラFXは2代目の1.6GTの1台だけで108万円の値付けがされていた。初代モデルの中古車はすでに絶滅していてまったく流通していないようで、手に入れるにはオークションや個人間売買しかない。
■No.006 トヨタ AE101 カローラレビン・スプリンタートレノ(1991年登場)
開発はバブル期に行われたため、装備や質感などは上級。ただ車重も増えたため、そこは欠点
●どんなクルマ?
1991年に登場したAE101型レビン/トレノに搭載されている4A-GE型の1.6L直4エンジンは、可変バルブタイミング機構のVVTを吸気側に採用し、さらに5バルブ化するなどエンジンが大幅に進化した(160ps)。また、足回りもスーパーストラットサスペンションを設定し、操縦性が向上した。
●中古で探すと?
現在101型レビンの中古車はわずか6台しかなく、価格帯は約58万~約83万円。一方のトレノの流通台数は2台とさらに少なく、価格帯は約37万~約40万円。NAエンジン搭載のGT-APEXが多くを占め、スーパーチャージャー車は少ない。
■No.007 ホンダ 5代目シビックSiR(1991年登場)
シビックヘのVTECエンジン搭載は1989年、4代目シビックが初だが、人気は5代目が上
●どんなクルマ?
1991年に登場した5代目ホンダシビックは、スポーツシビックと呼ばれ前後にダブルウィッシュボーン式サスペンションを採用し、名前どおりの高い走行性能を実現した。最上級グレードのSiR・IIに搭載されるB16A型1.6L直4、VTECエンジンはNAながら最高出力170psを発生した。
●中古で探すと?
今回、EGシビックSiR系の中古車の流通台数は約19台が確認できた。SiR・IIが約14台と多くを占め、価格帯は約95万~約219万円と高値で安定している。初代シビックタイプRと変わらない水準で、高い人気がうかがえる。
■No.008 三菱 4代目ミラージュサイボーグ(1992年登場)
スポーツモデルではないが、この型のミラージュには1.6LのV6エンジン車も存在した
●どんなクルマ?
1991年に登場した4代目ミラージュ。そのハイパフォーマンスモデルであるサイボーグは1992年に追加された。
当時新開発された「MIVEC」と呼ばれるマルチモード可変バルブタイミングを採用した1.6Lの直4エンジンは最高出力175psを発生し、ライバルのシビックSiRを上回った。
●中古で探すと?
EG系シビックSiRのライバルとして、1992年に追加されたスポーティグレードのサイボーグだが、現在中古車は流通しておらず、ほぼ絶滅してしまったと思われる。もし市場に出回っても、シビックほど高くはならないはずだ。
■No.009 ホンダ 初代CR-X Si(1984年登場)
1985年のマイチェン後のモデルは、ヘッドライトが固定式に変更
●どんなクルマ?
1983年にセミリトラクタブルヘッドライトを採用したコンパクトスポーツとしてデビュー。ボディの一部にABS樹脂とポリカーボネートの複合素材を使用し、軽さを活かした切れ味鋭い走りを特徴とした。
1984年にアルミブロックを採用したZC型と呼ばれる1.6Lの直4DOHCエンジンを搭載したSiを追加。最高出力130ps(グロス)を発生するこの1.6Lエンジンは、レビン/トレノに搭載される4A-GEと人気を二分していた。
●中古で探すと?
登場から約35年が経過したモデルだが、なんと少ないながらも中古車はまだ流通している。価格帯は約80万~約225万円とさすがに高値。流通しているのはすべて後期型で、最も高額な物件は走行距離がわずか3万kmという極上の物件だった。こんな物件が令和になっても残っていたのが摩訶不思議。
■No.010 スズキ 2代目スイフトスポーツ(2005年登場)
3代目スイフトスポーツも、出力が向上した1.6Lエンジンを積む
●どんなクルマ?
初代スイフトスポーツは、クロスオーバーSUVライクなモデルだったが、2005年に登場した2代目は2BOXスタイルの5ドアハッチバックに変わった。
搭載されるエンジンはJWRC参戦を見据えて、M16A型と呼ばれる最高出力125psを発生する1.6L、直4DOHC。鍛造ピストンや可変バルブタイミング機構のVVTを採用するなど専用のチューニングが施された。足回りもチューニングが施され、国産車では数少ないホットハッチと言える。
●中古で探すと?
2代目スイフトスポーツの中古車の流通台数は非常に豊富。しかも8割以上がMT車なので、MT入門車として最適だ。価格帯は約4万~約160万円と大変幅広いが、諸費用を含めた乗り出し価格50万円以下という格安物件も多く見つけられるのが魅力だ。購入後のプランに合わせてクルマを選ぶことができる
■No.011 マツダ 初代ロードスター(1989年登場)
●どんなクルマ?
1989年に登場した初代ロードスターは、当時下火となっていたライトウェイトスポーツ人気を復活させた。その影響は非常に大きく、国産メーカーだけでなく、海外のメーカーへも2シーターオープンカーブームを波及させた。
全長約4mのコンパクトなボディに当時のスポーツカーのアイコンであるリトラクタブルヘッドライト、そしてFRの駆動方式を採用。軽量で俊敏な身のこなしは非常に素直で、ドライバーのスキルに応じて人馬一体の走りを体験することができた。
前期モデルは最高出力120psを発生する1.6L直4エンジンを搭載。マイナーチェンジで最高出力が10psアップした1.8Lへ変更された。
●中古で探すと?
国産車のヴィンテージイヤーである1989年に登場したクルマのなかで、最も流通台数が多いのが初代ロードスターだ。価格帯は約15万~約320万円と非常に幅が広い。
グレードでは1.6L、1.8Lともに標準グレードが最も多く、グリーンのボディカラーを採用した1.6LのVスペシャルが続く。
ナルディ製のウッドステアリングやタンカラーのシートなどで、よりクラシカルな雰囲気に仕上げられたVスペシャルの内装
■No.012 マツダ 6代目ファミリアGT(1985年登場)
ターボの4WDモデルは、スウェディッシュラリーの優勝から「雪の女王」と呼ばれることも
●どんなクルマ?
1985年1月に登場した6代目ファミリアは、同年10月に当時テンロククラス最強の最高出力140psを発生する1.6L直4ターボエンジンを搭載するGTを追加。
また当時日本初となるフルタイム4WD車を設定するとWRCに参戦し、スウェーデンラリーで見事に優勝を飾った。
●中古で探すと?
今回調べたところ、ファミリア5ドアハッチバックの中古車はわずか9台しか流通していないが、そのうちの1台が6代目ファミリアGTだった。価格は約59.8万円。走行距離は10万km超だが、タイミングベルトは交換済みだった。
■No.013 いすゞ 3代目ジェミニイルムシャーR(1990年登場)
「街の遊撃手」として人気を博した先代に比べ3代目は不人気。でもイルムシャーRはパワフル
●どんなクルマ?
1990年に登場した3代目ジェミニにも、先代に続きロータスやイルムシャーといった欧州のチューナーが手を加えたモデルが設定された。なかでもイルムシャーの手によるイルムシャーRはクラストップの最高出力180psを発生する1.6L直4ターボ+フルタイム4WDという硬派なモデルだった。
●中古で探すと?
1970年代に発売された初代ジェミニのスポーツモデルZZ-Rはまだ見つけられる。しかし3代目ジェミニの中古車はあまり流通しておらず、今回の調査で1台だけ見つけたイルムシャーRには66万円の値付けがされていた。
* * *
かつてはこれほどまでに魅力的なモデルが多数存在した「テンロク」エンジン搭載車。では、現行国産モデルにテンロクエンジン搭載車はあるか。
見つかったのはノートNISMO S、ジュークのターボ系、インプレッサ、レヴォーグ、SX4 Sクロスのわずか5台。正直、サミシイ。
しかもノートNISMO、ジューク、レヴォーグなどは多少スポーツを感じるが、SX4 Sクロスをして、スポーティという人はなかなかいないだろう。正直、サミシイ。
というわけで現在、国産テンロクスポーツは風前の灯状態なのだが、希望はある。それは先の東京オートサロンでワールドプレミアされたGRヤリスだ。272ps/37.7kgm発生の1.6L直3ターボを積むGRヤリスは、本企画で紹介したどのモデルにも劣らぬほどの強力な魅力を備えている。
願わくば他メーカーからも同じように気合の入ったテンロクスポーツが出るといいなぁ。
【番外コラム】ハチロク以前のテンロクスポーツ
(TEXT/片岡英明)
1967年夏、痛快なテンロクスポーツとして走り屋たちを魅了したのが510の型式を持つ日産ブルーバード1600SSSだ。新設計のL16型OHCエンジンにSUツインキャブ、ポルシェシンクロの4速MT、そして4輪独立懸架のサスペンションを採用して冴えた走りを披露した。
海外でもそのスタイルと性能が高く評価された510ブルーバード。日産初の4輪独立懸架車でもある
が、1960年代後半からはDOHCエンジン搭載車がテンロクスポーツの主役となる。トヨタはブルーバードと同じ時期に、ライバルに先駆けてDOHCエンジンに5速MTを設定した俊足のトヨタ1600GTを送り出した。
これに続き1970年12月にはセリカを発売。スペシャルティカーというジャンルを開拓している。主役の1600GTが積むのは、後に名機と讃えられる2T-G型DOHCだ。キャブはソレックス40PHHキャブ2連装、ミッションは5速MTである。
このパワフルなエンジンを軽量コンパクトなボディに押し込み、レースなどでも活躍したのがTE27型カローラレビンとスプリンタートレノだ。
無骨なオバフェンがストイックな魅力を醸すTE27レビン。カッコよし
同じ時期、三菱も高性能テンロクスポーツを発売した。ファストバックにダックテールのギャランGTOだ。リーダー格のMRはクラス最強の4G32型DOHCエンジンを積んでいる。OHC仕様の4G32型エンジンを積むランサーやFTOの1600GSRもフットワークは軽やかだ。
4速MTだが、いすゞにもDOHCエンジンを積むベレット1600GTRや117クーペなどの名車があったことは覚えておきたい。
●【画像ギャラリー】1990年前半、短くも熱い時代を駆け抜けた名車たちをギャラリーでチェック!!!
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みんなのコメント
なんやこの半端な排気量は。と思っている。