新型ハリアーが大人気だ。メカは基本的にはRAV4だが、直線基調でいかついRAV4とは正反対に、デザインがゴージャスでエレガント。ハリアーのコンセプトを忠実に継承しつつ、確実に進化させている。
ただ、チャレンジングなデザインかと言われれば「否」。冒険はしていない。新型ハリアーのように、いきなり心地よさを感じるカタチは、脳内になんらかのひな形が存在し、そこから脱してはいない。
ついに販売5位急浮上! なぜアルファードはコロナ禍でも売れるのか
チャレンジングなデザインとは、多くの人に違和感を抱かせる、見たことのないデザインなのである。
というわけで、現行モデルから、デザイン的に優れている、優れていないに関わらず、チャレンジングな自動車デザインを集めてみよう。
文:清水草一/写真:TOYOTA、NISSAN、MAZDA、MITSUBISHI、TESLA、CITROËN、BMW、平野学、奥隅圭之、ベストカー編集部
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トヨタアルファード
チャレンジングなフロントマスクの採用によって販売増となったアルファード。ここまでグリル面積の広いクルマも珍しい
登場からすでに5年たち、現在は違和感もほとんど消えてしまったが、発表直後は多くのクルマ好きから「あのオラオラグリルはなんだ!」と激しい反発が出て、“悪い自動車デザインの見本“のように扱われた。
が、それは、アルファードが見たことがないほど強烈なグリルをまとっていたからで、その後は「すげえ迫力!」「カッコイイ!」と、肯定的な評価がどんどん広がっていった。
アルファードのデザインがチャレンジングだったのは、あの巨大な銀歯のようなグリルだけではない。
スライドドアを持つミニバンは、基本的に「箱」なわけだが、アルファードは箱のサイドにエモーショナルなうねりを入れて、トータルでデザインイメージを統一している。
BOXタイプながらサイドはグラマラスに仕上げられている。オラオラ顔と合わせてデザイン的にチャレンジをしている
ギリギリッと銀歯で脅しておいて、サイドはうねうねっとグラマラスに圧倒しているのである。そのトータルな完成度ゆえに、日本だけでなく、アジアでも人気が爆発した……のではないでしょうか。
オラオラ顔のミニバンとしては、デリカD:5のダイナミックシールドも同様で、あちらもチャレンジングな顔だが、マイチェンだけに「顔だけ」なのが惜しい。
デリカD:5のダイナミックシールドも出た時はギョッとしたという人が多かったが、慣れてくるとカッコよく見えるから不思議
日産ジューク
すでに生産中止になり、在庫処分状態だが、国内で売られている現行モデルの中では、飛び抜けてチャレンジングなデザインだった。
なにせ「四ツ目」の顔がすさまじいインパクト。全体のフォルムもまるで昆虫。人間にとって昆虫は、病原菌やウイルスを媒介する天敵なので、嫌悪を抱く対象だが、そこに挑戦して大成功したジュークのデザインは、すばらしくチャレンジングだった。
この形容しがたいフロントマスクはジュークの最大の魅力で、どっちがヘッドライトか? 正解は下の丸灯。チャレンジングなデザインに拍手
ジュークがチャレンジングなのはフロントマスクだけではなくクルマ全体。ジュークはどんなボディカラーでも似合っている
「ジュークなんか、ぜんぜん売れなかったじゃないか!」
そういう声をあろうが、売れなかったのは日本だけで、世界的には大成功だったし、シトロエンC3やC3エアクロスSUVのデザインは、明らかにジュークの影響を受けている。
ジュークは、「コンパクトSUVのデザインは、チャレンジングでなければならない」という不文律のようなものを作ったとさえ言える。
じゃなんで日本ではウケなかったんでしょう? うーん……。たぶん、世界はひとつになりつつあるけれど、まだひとつじゃないってことじゃないでしょうか。
シトロエンC3エアクロスSUVのフロントマスクは超個性的だが、ジュークの影響を受けているのは明らか。それにしても不思議な顔だ
マツダマツダ3ファストバック
自動車デザインはグローバル化が激しく進み、同時にどんどん洗練化されている。未熟なチャレンジは世に出なくなってきた。未熟なチャレンジとは、たとえばかつての三菱ミラージュ・ディンゴ(前期型)みたいなヤツのことです。
余計なライン、エッジなどを廃してシンプルさにこだわったマツダ3ファストバックはひと昔前のコンセプトカーのような特別感がある
魂動デザインを突き詰めているマツダだがマツダ3でさらに洗練された印象。街中で見てもその面の美しさにハッとさせられる
マツダのデザインは洗練系の最先端。で、マツダがマツダ3で行ったチャレンジは、「洗練の極致を目指す」というものだった(たぶん)。自動車デザインはどこまで洗練できるか? 機能を満たした上でどこまでアートに迫れるか!? という挑戦とでも言いましょうか。
たとえばマツダ3ファストバックのリアピラーは、どこまで「なにもしない」でインプレッシブにできるかというチャレンジだったのではないか。
実際まじまじと見ても、折り目もキャラクターラインも皆無。ひとつづきの面でどこまでも滑らかに仕上げられている。実はそれが一番難しいことなのだ。サイドのインバース(凹面)も、見たことがないほど大胆かつシンプルだ。
ボディサイドはこれまでのクルマにない大胆なチャレンジが盛り込まれている。シンプルさを追求するのは最も難しい
トヨタヤリス
オーバーフェンダーのように見せるキャラクターラインが特徴。サイドから見るとリアに重心が寄っているように感じる
3ドアのGRヤリスのルーフラインに注目。ノーマルのヤリスに比べてなだらかに下降線を描き、最後にはね上げることでバランスがよくなっている
全世界の自動車デザインが洗練へと向かう中、ヤリスのデザインはどう見ても洗練されていない。その時点でチャレンジングだ。
まずフォルム。サイドから見ると、へっぴり腰の出っ尻で、どうにも不格好だ。お尻がコロンと丸まっているのに、けっこう高く持ち上がっていて、重心が後ろに寄って腰が引けているように見えるでしょ?
GRヤリス(3ドア)のような、後ろ下がりで最後に小さく跳ね上がるようなルーフ形状にすれば、簡単にバランスが取れるが、5ドアのヤリスは、そこまで後席の居住性を割り切れなかった。それでいて後席は広いとは言えないのだから、狙いがよくわからない。
フロントマスクもコテコテとデコラティブ。ヤリスのデザインアプローチは現在の主流とは違ういわば遅れてきたチャレンジャー
サイドには、大げさでこれ見よがしのオーバーフェンダー的なエグリが入り、顔もグラフィックがやたらとデコラティブ。
こういうエグ系のデザインは、数年前までは世界的な主流だったが、近年のトレンドは「シンプル&ソフィスティケイテッド」。つまり、遅れてきたチャレンジャーという気配は濃いのだが、それだけに目立っている。
テスラサイバートラック
欧米メーカーでは、デザインのシンプル&ソフィスティケイテッド化が激しく進行していて、チャレンジングと言えるデザインはほとんど姿を消しているが、そんな中、ウルトラ超ダントツにチャレンジングなのがこれだ!
なにせ、デザインにまったく機能性がない。わざとメチャメチャ下手クソに直線を引いてデザインしたみたいで、それによって激しい違和感と強烈なインパクトを醸し出している。
テスラサイバートラックはデザインだけ見ると張りぼてのコンセプトカーのように見える。2021年に生産開始予定で日本でも先行予約受付中
たとえば前後のオーバーフェンダーなども、わざと前後の形状を下手クソに不揃いにしている。わざわざ子供が描いたみたいな形にしているのだろう。「この形でマトモに走ること自体が違和感のカタマリ」と思わせるのだから、チャレンジここに極まれり!
それでいて、つい引き込まれてしまうのは、子供が描いた絵みたいな稚拙さに、ある種の懐かしさがあるからかもしれない。すさまじいまでの逆張りデザインである。
前後のオーバーフェンダーを不揃いにしているのも意図的。デザインの善し悪しに関係なく引き込まれるデザインであることは間違いない
番外/新型BMW7シリーズ&新型4シリーズクーペ
この2台は、「グリルの大きさだけチャレンジング」という、特異な進化を遂げた動物のようで興味深い。
グリル以外は、これまでのBMWのデザインの延長線上にあり、普通に洗練されているが、キドニーグリルだけ巨大化することでバランスを崩し、インパクトを狙っている。
確かに人間でも、鼻の穴だけヤケにデカい美人がいたら、「えっ!?」っとなって、虜になってしまうかもしれません。
新型7シリーズは巨大なキドニーグリルが与えらえている。7シリーズ史上最もオラオラ顔となってユーザーがどう反応するか?
新型4シリーズもBMWのアイデンティティであるキドニーグリルが巨大化された。ここまで大きくなるとはビックリ
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みんなのコメント
なぜか日本車は造形力はかなりのものがあるのに、品性にかけるデザインが多い。
レクサスのシェアが思ってるほど伸びないのはそんなところにあると思うが。