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絶好調トヨタの牙城を唯一打破!! なぜフリードだけがシエンタに勝てるのか

掲載 更新 24
絶好調トヨタの牙城を唯一打破!! なぜフリードだけがシエンタに勝てるのか

  「ちょうどいいホンダ」でもお馴染み、フリードはなぜトヨタのライバルに勝てる?

 ホンダの人気ミニバン、フリードが好調だ。直近の2021年9月には6128台を販売し、登録車7位。競合するシエンタの4807台を上回っている。このほかホンダの人気車種を見ると、フィット、ステップワゴンはそれぞれトヨタのヤリス、ヴォクシー/ノア(合算で同月に5000台超を販売)に負けているのにも関わらずだ。

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 なぜフリードだけがトヨタのライバル車に勝っているのか?

文/渡辺陽一郎、写真/HONDA、TOYOTA

[gallink]

■ライバル車のトヨタシエンタを上回る販売台数を記録するホンダフリード

2016年9月に登場したホンダフリード。ボディサイズは全長4265mm×全幅1695mm×全高1710mm、最小回転半径は5.2m

 1990年代の中盤以降、急速に普及したミニバンは、今では日本車の売れ筋カテゴリーとして定着した。車種数と販売台数が多いのは、ヴォクシー/ノア/エスクァイア、セレナ、ステップワゴンといったミドルサイズだが、ホンダ フリードとトヨタ シエンタというコンパクトミニバンの需要も根強い。

 コンパクトミニバンの売れ筋は、実質的にこの2車種だから、販売面でも一騎打ちになる。2021年1~9月の登録台数を月平均で見ると、フリードが5877台、シエンタは5124台だからフリードが優勢だ。「ホンダVSトヨタ」の販売合戦は、コンパクトカーのフィットVSヤリス、LサイズミニバンのオデッセイVSアルファードなど数多くあるが、ホンダ車の売れ行きがライバルのトヨタ車を上まわることは珍しい。

フリードのインテリア

基本の乗車定員は2-2-2の6名。3列目シートを跳ね上げれば、2列目キャプテンシートの隙間に26インチの自転車を立てて積むこともできる

 両車の発売時期は、現行シエンタが2015年7月、フリードは2016年9月だ。2017年の登録台数は、月平均ではフリードが8700台、シエンタは8071台になる。フリードが発売の翌年とあって、僅差でリードしていた。

 ところが2018年は、フリードが1か月平均で7010台と大きく下がり、シエンタは7837台だから販売合戦で逆転した。さらに2019年は、シエンタが発売から4年を経ながら、1か月平均で9240台に達している。フリードも7133台と若干上向いたが、シエンタが大幅にリードした。

 それが2020年になると、フリードは6357台、シエンタは売れ行きを34%落として6057台に留まり、フリードが抜き返した。2021年も前述の通り、フリードが5877台だから、シエンタの5124台を上まわる。

 以上のように2017年はフリードが多く、2018年と2019年はシエンタが上まわり、2020年と2021年は再びフリードになった。なぜライバル同士で販売順位が入れ替わったのか。

■フリードVSシエンタ 販売合戦の足跡

2015年7月に発売されたトヨタシエンタ。ボディサイズは全長4260mm×全幅1695mm×全高1675mm。2018年9月のマイナーチェンジで5人乗りのFUNBASEが追加された

 まずフリードが発売の翌年となる2017年にシエンタよりも多く売られながら、2018年に登録台数を月平均で1690台も下げた理由を考える。

 フリードの販売減少には、2017年9月に実施されたN-BOXのフルモデルチェンジが影響している。現行型になったN-BOXは好調に売れて、2018年の前半には、前年の1.2倍が届け出された。

 ホンダの販売店によると「軽自動車のN-BOXでは、フリードやフィットなどのコンパクトな小型車から乗り替えるお客様も多い」とのことで、フリードは新型になったN-BOXに少なからず顧客を奪われた。そこに発売から時間を経過したことによる販売減少も加わり、フリードは2018年の登録台数を大幅に下げた。

 そして2019年になると、シエンタは月平均で9000台以上も登録された。特に2019年の8月と9月は、前年の1.6~1.9倍に達して、小型/普通車の登録台数1位となった。前年のマイナーチェンジでは2列シート仕様などが追加され、ノアなどからの乗り替えも進んで、さらに売れ行きを伸ばしている。

シエンタ 3列シート車(7人乗り)のインテリア

 しかし、この好調な売れ行きは長く続かず、2020年にはフリードに抜き返されてしまう。2020年の月別登録台数を見ると、特に5月以降の落ち込みが激しい。前年に多く売られただけに、登録台数を半減させた月も多い。

 この背景には、2020年2月に実施されたヤリスの発売も影響を与えている。ヤリスはコンパクトカーだから、シエンタとは直接競争しないが、価格の割安なトヨタ車に対する関心はヤリスに向く。販売店もヤリスで多忙になり、シエンタの販売力は削がれてしまう。

■2019年に実施されたマイナーチェンジが追い風に

2019年10月のマイナーチェンジに伴い、全車に安全運転支援システムのホンダセンシングを装備。SUV風の外観をもつクロスターが追加された

 その一方でフリードは、2019年10月に規模が比較的大きなマイナーチェンジを実施して、内外装のデザイン、安全装備などを改善した。SUV風のクロスターも追加している。このマイナーチェンジでフリードの売れ行きが目立って増えたわけではないが、販売の低下を抑える役割を果たした。そして2020年、2021年ともに、フリードの売れ行きがシエンタを若干上まわっている。

 2018年には売れ行きを大きく下げて、2019年にはシエンタにも大差を付けられたフリードが、なぜ2020年には販売下降を食い止めてシエンタを上まわったのか。最近のフリードの動向を販売店に尋ねると、以下のように返答された。

 「フリードのお客様は、若い人達から高齢の方まで幅広い。特に最近はコロナ禍の影響で、密集を避けるために日帰りのキャンプなどに出かけるお客様が増えた」

 「この影響もあり、2列シートのフリードプラスを含めて、販売が好調に推移している。手軽に買える車内の広いクルマとして、ホンダにはN-BOXもあるが、小型車ではフリードが注目されている」

 このほかステップワゴンとフィットの不人気もある。2021年1~9月の登録台数は、フリードが月平均で5877台だが、ステップワゴンは3330台だから約半数だ。ホンダのミニバン需要がフリードに集まって売れ行きを伸ばした。

テールゲートに横開き式のサブドアを組み合わせた「わくわくゲート」が注目の的となったステップワゴンだが、販売台数は低迷。より小型なフリードに需要が流れている

 またコンパクトな車種としてはフィットも低調で、2021年1~9月の月平均は4760台だ。フリードよりも価格が安いのに、80%しか売れていない。フリードは人気が伸び悩むステップワゴンとフィットの需要を吸収している。

 その点でトヨタでは、ヴォクシーが堅調で、今はシエンタよりも登録台数が多い。トヨタの販売店では以下のように説明した。

 「シエンタはスライドドアを備えたコンパクトな車種として根強い人気があるが、3列シートが不要でルーミーに乗り替えるお客様も増えた。また荷物を積めるクルマとして、豊富にそろったコンパクトSUVやワゴンのカローラツーリングが選ばれることもある」

 トヨタでは2019年9月にカローラツーリング、11月にライズ、2020年8月にヤリスクロスを投入した。いずれもボディがコンパクトで荷物を積みやすく、価格が割安だ。シエンタの需要がこれらのトヨタ車に奪われた面もある。

■N-BOXとフリードに販売台数が集中するホンダ

 以上のようにホンダでは、フリード以外の小型/普通車は、売れ行きがすべて伸び悩む。新型になったヴェゼルは堅調だが、ホンダの販売1位はN-BOX、2位はフリードで、同社のブランドイメージは「スライドドアを備える小さくて実用的なクルマ」になった。

 対するトヨタでは、コンパクトなスライドドア車ではルーミーが絶大な人気を誇り、2021年1~9月の1か月平均が1万2643台に達する。空間効率の優れたコンパクトなSUVやワゴンも堅調だ。トヨタでは最近になってコンパクトで実用的な車種を充実させたから、シエンタへの依存度と売れ行きが下がった。

 言い換えると、ホンダ車の売れ行きは切実な状態にあるから、フリードの登録台数が押し上げられている。トヨタでは設計の新しいコンパクトで実用的な車種をそろえているから、シエンタの需要は下がった。フリードが好調でシエンタが不調となると「トヨタは大丈夫か?」と思うが、実際には逆の状態になっている。

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みんなのコメント

24件
  • シエンタのデザインはアクが強いんだよ。普通っぽいデザインのフリードが万人に受ける。
  • デザインだろ、Sはどこからどう見てもカッコ悪い....Tのクルマじゃなかったら売れないだろ....
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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