日本では今ひとつ人気薄な「アメ車」ではあるが、あの圧倒的なパワーを体感しないままドライバーを引退するのは、カーガイとして失格であるような気もする。ならばどんなアメ車に乗ってみるべきか、専門家の知恵を借りながら考えてみたい!
※本稿は2023年9月のものです
文/伊達軍曹、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2023年10月10日号
コルベットの走りはまるでイタリアン!! 見逃しがちな輸入車「アメ車」ってぶっちゃけどうなのよ!?
■人生一度はアメ車に乗るべき!
最高出力828psを発生するダッジ チャレンジャーのV8、OHV。こういうの体感したい
日本において「輸入車」と聞いた時、まず思い浮かぶのはドイツ車であるだろう。街を歩けば目につくのはドイツ勢ばかりで、事実、日本を走る輸入車の約7割はドイツ車である。
それに対して「アメリカ車」はいかにも分が悪い。
いや、日本における実際のシェアはイタリア車と大差ないのだが、「アルファロメオがうんぬん」「フィアットの500eがかんぬん」と、イタリーのクルマの名がしばしば日本のクルマ好きや自動車メディアの間でささやかれる。
それに対し、「アメリカ車がうんぬんかんぬん」という話題は、専門メディアやごく一部のマニア以外の間ではとんと耳にしない。
……現在のアメリカ車とは、そんなにも「語るに値しない存在」なのだろうか?
もちろん答えは「否」である。アメ車の品質はこのところグングン向上している。それゆえ「注目すべし」と考えるわけだ。
しかし仮にアメ車の品質が向上していなかったとしても(←そんなことはないが)、あの、他の国のクルマとはかなり異なる個性と味わいを有している一群のクルマには、人生一度は乗ってみるべきなのだ。
あの個性を味わわぬままクルマを語るのは不完全であり、なんとももったいない。というわけで、今回はアメ車の世界をご紹介だ!
■マイナーゆえに個性的で今や乗り味もスポーティ
こちらは最高出力502psのV8、OHVをミドに搭載する現行型シボレー コルベット。その走りはもはやイタリアンスーパーカーとおおむね同じだ
前項にて「日本国民よ、アメ車に乗れ!」的な怪気炎をあげた不肖筆者ではある。
だが実のところを言えば、筆者はアメリカ車を購入した経験がなく、アメ車に関する知識にも乏しい。
そのため「アメ車ってそもそもどうなんだ?」という(自分が立てた)問いに対して、正しく答える術を持ち合わせていない。どうもすみません。
しかし「今こそアメ車に注目してみるべきでは?」との思いにまったく嘘はなく、近頃は新旧さまざまなアメリカ車に憧憬の念を抱きまくっていることも事実である。
そこで今回は「蛇の道は蛇」ということで、アメ車と逆輸入車の総合情報サイト『アメ車ワールド』代表の田中 享氏に具体的なアドバイスとサジェスチョンを頂戴しながら、この「人生一度はアメ車に乗る!」企画を進行させていただくことにする。どうもすみません。
さて、自動車メディア人としてさまざまなアメ車専門誌や専門メディアの編集に携わり、個人的にもディープなアメリカ車愛好家であり続けている田中氏いわく、「アメ車って、そもそもどうなんだ?」という基本的な問いに対する回答は、この下に記載した4点におおむね集約されるという。
すなわち「日本でのシェアは低いが、だからこそ逆に個性を主張できる」という根本的な魅力があり、加えて「もはや乗り心地がソフトすぎるということもなく」「特に壊れやすいというわけでもなく」「メンテナンスの手法や考え方も、一般的な国籍のクルマとほぼ同じ」ということである。
要は“敬遠する理由”はまったくない、ということだ!
■まずは根本的な疑問を解決!「アメ車ってどうよ?」
●Q1.そもそも「アメ車の魅力」って何なんでしょう?
・A1.日本ではマイナーゆえに“個性的な存在”。そこがとにかく魅力なのです!
キャデラック XT6。ベンツのGに匹敵する実力だが、日本では人気薄。そこが逆にいい!
「マイナーな存在である」というのは、確かによく考えてみれば「望むところよ!」である。
筆者が住まう東京都世田谷区界隈では「白いBMW3シリーズの新車」など、ありふれすぎていてまったくもって目を引く存在ではなく、下手をすればシニカルな笑いの対象にもなりかねない。
夜の六本木におけるメルセデスベンツ・Gクラスも、おおむねそれと同じだろう。
だが日本では選ぶ人が少ないアメ車であれば、「おっ?」というニュアンスになることは間違いない。なるほど、今後はドイツ車ではなくアメ車に乗るしかないぜ!
●Q2.アメ車の乗り心地って相変わらずユラユラ系なの?
・A2.21世紀以降のアメ車はワールドスタンダードなビシッとした乗り味です
2000年代前半のキャデラック セビル。このあたりから締まった乗り味に変わっていった
アメ車ワールド田中氏は「アメ車の乗り味=ユラユラと思うのは中高年の証(笑)。今の若い子は、アメ車に対してそういったイメージはまったく持ってませんよ」と笑う。
「1980年代までは、確かに船のような乗り味である場合も多かったアメリカ車です。
しかし21世紀以降は、アメリカに限らずどの国のメーカーもグローバル基準の作りに変わりましたし、そもそも最近は『単一のブランドとして独立している自動車メーカー』のほうが少ない。
そのためアメリカ車も、ワールドスタンダードな乗り味に変わってるんですよ」とのこと。
●Q3.「アメ車=壊れやすい」というイメージがありますが、実際は?
・A3.過去にはひどい時期もあったが、現在はぜんぜん大丈夫と思っていい
25年くらい前の中古並行輸入車のシボレー アストロなどには、本当にひどい中古車も多かった
「アメ車=壊れるというのも過去のイメージにすぎません」と田中氏。「確かに1990年代後半から2000年代初頭頃に、第何次かのアメ車ブームが盛り上がった頃はひどかったですよ。
本国で20万マイル(約32万km)くらい走った中古並行輸入車のメーターを平気で4万~5万マイルくらいまで巻き戻して、ろくな整備もせず、ちょっと化粧直しをするだけで売られてましたからね。
私は『70万マイルを7万kmに戻した物件』を見たことがあります(笑)。でも今はそんな中古車はほとんどありませんし、クルマの品質自体も向上しています」
●Q4.アメリカ車の点検と整備はどんな工場に依頼すればいいのだろうか?
・A4.正規店または「そのブランドに強い工場」へどうぞ
「最新世代のモデルは専用テスターによる診断が必要」という部分も、欧州車などと変わらない
「古いアメ車は“世界で一番修理に困らないクルマ”だと言えます。なにせ60年前のクルマでも普通に部品が入手できますから。そのブランドに強い整備工場を見つけることさえできれば、いつまでも乗り続けられるでしょう。
その他の年代は欧州車と同じですね。つまり新しい世代のモデルは、正規ディーラーが持っている専用診断機が必要ですし、ちょこっと古い世代なら、汎用の診断機でもイケる。
いずれにせよ『そのブランドに強い工場』と付き合えば大丈夫です」と、田中氏は語る。
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みんなのコメント
日本車でも同じようになったら良いなと思う。
大排気量の車も有ればテスラのような車も有る。
世界が何と言おうと自分を主張する力が有る。
私は、イタリアのスーパーカーの吹け上がりの良い甲高い排気音より、大排気量アメ車の図太い音の方が好きです。