トヨタ ヴェルファイア 「消滅の危機から華麗に復活」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

塩見 智
塩見 智(著者の記事一覧
自動車ジャーナリスト
評価

5

デザイン
3
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
5
燃費
4
価格
3

消滅の危機から華麗に復活

2023.8.15

年式
2023年6月〜モデル
総評
数年前にトヨタの全販売店で全モデルを扱うようになったため、アルファードのみとしたほうが販促ツールも一種類で済み効率的だったはずだが、根強いヴェルファイアファンの存続を求める声を大事にしたほうが長期的には有利と判断したのかもしれない。新型はTNGAプラットフォームを採用し、停車時のみならず走行時の快適さも獲得した。静粛性も非常に高い。平均速度が低く、道が狭く、いざという時の3列目が大好物のニッポン独自のラグジュアリーカーとして独自の進化を遂げた。エルグランド息してる?(再び対等に戦ってほしい)。
満足している点
従来型まではアルファードとの違いはデザインのみだったが、新型ではとうとう異なるパワートレーンのラインアップとなり、アル/ヴェル全体としてのバリエーションが増えたのは素晴らしい(現在どちらかでしか選べないパワートレーンがいずれ両方で選べるようになればなおよし)。全幅1850mmを堅持し、日本での使いやすさを維持しているのがトヨタらしい。狭い車幅と広い室内空間と望ましい前輪の切れ角をどれも諦めないためにタイヤをギリギリまで細くするなど、涙ぐましい努力を積み重ねている。
不満な点
今後徐々に改善されていくと思われるが、生産体制が十分でなく、注文しても長期間納車されない。生産と販売の効率を上げるために上位グレードしか設定されず、ボディカラーが白か黒しか選べないにもかかわらず、気が遠くなるほど待たされる。決してトヨタだけの問題ではないが。
デザイン

3

アルファードよりもアヴァンギャルドなデザインの顔つきが特徴だった歴代ヴェルファイアだが、新型はダーククロームが用いられているために抑制的で品がある。ボディサイドは段付きのショルダーラインや絶妙な抑揚などによって、見ていて退屈しない。インテリアは天井に多数のスイッチが配置されていて使いやすい。エグゼクティブラウンジのセカンドシートはとにかく見た目が立派。
走行性能

4

2.5L直4自然吸気エンジンとモーター、バッテリーを組み合わせたシリーズパラレル式ハイブリッドは、トヨタが多くのモデルに長年使い続けるシステムだけあって円熟味さえ感じさせる仕上がり。燃費と動力性能が高次元でバランスしている。現状ヴェルファイアのみに搭載される2.4L直4ターボエンジンは、従来型にあった3.5L V6エンジンの後継エンジンとして絶対的な動力性能は申し分ないが、回して気持ち良いのは6気筒のほう。ただそれだとカタログ燃費が1桁台になってしまうので、時代を考えると高効率4気筒エンジン採用は、消費者が受け入れるべき自然な流れと言える。追って出るPHEVにも期待がかかる。
乗り心地

4

シート自体がしっかりとしたつくりで、車体フロアとシートレールの間に免震ゴムを挟み込むことで快適性の高さを追求している2列目シートが話題だが、1列目(運転席と助手席)の快適性もなかなかのもの。基本的にGA-Kプラットフォームの剛性が高いので、1〜3列目のどこに座っても従来型よりは確実に快適。また静粛性の高さも快適性に大きく貢献している。車体のあちこちに煙を流すことで空気の流れを把握し、どこを遮音すれば効果的かを徹底的に調べたという。気密性もドアが閉まりにくくなる寸前まで高めたという。
積載性

5

車体が大きいので絶対的な室内空間は広いが、各シートが立派なので、どこにでもモノを置けるというわけではない(もちろん足元空間には余裕があり、カバン程度など置く場所に苦労しない)。3列目シートを前後2か所で跳ね上げて固定できる機構を採用したため、ラゲッジフロアに梁が通り、フロア下空間へのアクセスは多少悪くなったが、前述の新機構のおかげで3列目を後ろのほうで跳ね上げれば、その状態でも2列目シートを大きくリクライニングできるようになった。
燃費

4

2.5L直4自然吸気エンジンとモーター、バッテリーを組み合わせたシリーズパラレル式ハイブリッドを採用したモデルは、豪華なエグゼクティブラウンジで2230kg(E-Fourは2290kg)あるが、WLTCモード17.5(同16.5)km/Lと良好。2.4L直4ターボエンジン搭載のZプレミアグレードは10.3(4WDは10.2)km/Lとギリギリ2桁を確保しているが、現代の水準からすると物足りない。全車レギュラーガソリンなのはありがたい。
価格

3

ハイブリッドのみが設定されるエグゼクティブラウンジはFWDが870万円、E-Fourが892万円と、プレミアム輸入車とも競合するような価格帯。だが内容を考えれば割高感はないし、そもそもクルマ全般の価格が上がってきている。ZプレミアグレードはFWDが690万円、E-Fourが712万円とアルファードのZよりもそれぞれ70万円高い。ターボエンジンのZプレミアはFWDが655万円、4WDが678万円。従来型までと違って値引きがほとんど期待できない時代になったのが辛い。
塩見 智
塩見 智
自動車ジャーナリスト
1972年生まれ。岡山県出身。大学卒業後、地方紙記者、自動車雑誌編集者を経てフリーランスエディター/ライターに。ウェブサイトや雑誌に寄稿を続けてきたが、50歳を機に突如クルマ系YouTubeチャンネル「ソルトンTV」を開設。ややクセ強の新車レビューを公開中。ググってみてください。いいものだけを練馬から!日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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