トヨタ クラウン 「新世代の通信技術と走行性能を融合させた15代目」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

5

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
3
燃費
4
価格
4

新世代の通信技術と走行性能を融合させた15代目

2022.7.21

年式
2018年6月〜モデル
総評
日本市場での使い勝手を真剣に考えた15代目クラウン。ボディサイズ、パワートレーンともに申し分ない性能を持つ。一方で、セダンユーザーの高齢化に伴い、これまでのクラウン像だけではトヨタのフラッグシップであり続けることが難しくなってきた。2022年7月に発表となった16代目クラウンでは、40を数える国と地域への本格的な輸出と年間20万台に及ぶ生産計画が明らかにされた。クラウンは世界に羽ばたき、この先も輝き続ける。
満足している点
価格に対する所有満足度が高いこと、ここに大きな満足点がある。国内での走行を主軸にし続けたことで車幅は1800mmに抑えられているが、側面衝突安全性に関してはこれよりも車幅の広いモデルと同等レベルを確保し、さらに乗員保護性能も高い。狭い日本の公道における取り回し性能も重視され、16インチタイヤモデルの最小回転半径は5.3mに留めている。
不満な点
物理的な問題ながら、車幅と全長の関係から間延びしたデザインに見えてしまう。ここが惜しい。専用の通信モジュールであるDCMを用いているが、肝心のコネクティッド技術を使い続けるとなると、たとえばボイスコマンドをある程度、覚えておく必要がある。使い勝手はとても良く、ここは大きく評価したが、使いこなすには事前の準備が必要になる。
デザイン

4

全幅は1800mmとしつつボディサイズは死守しながらも躍動感のあるデザインを採用。先代からの開口面積の大きなグリルを踏襲しながら、車体下部をウイング形状とすることで数値以上のワイド感を演出した。ヘッドランプには、デザインとしてのアイキャッチとなるようデイランプ/クリアランスランプをランプ周囲に配して特徴付けた。サイドシルエットは「6ライトデザイン」を採用したことで、なだらかな弧を描くルーフラインを作り上げた。
走行性能

4

V型6気筒3.5Lハイブリッド、直列4気筒2.5Lハイブリッド、そして直列4気筒2.0Lターボの3タイプ。2.5Lハイブリッドには4WDも用意された。ターボユニットは先代から搭載されていたユニットだが、15代目では高回転域まで力強くなった。ハイブリッドモデルにしてもターボ同様、FR/4WDともハンドリング性能に優れる。ニュルブルクリンクでテスト走行を行ない、世界の競合車と肩を並べる走行性能が与えられた。
乗り心地

4

正直なところ、ハンドリング性能に重きが置かれたようで大らかな乗り味からは遠のいた。しかし、KYB製の電子制御ダンパーシステム搭載モデルはモードごとに性格が劇変する。コンフォートモードではボディを大きく揺らすことなく凹凸路を乗り越え、それでいてロールの絶対量も抑えられる。3.5Lハイブリッドは大パワー(システム出力359PS)と重量増に対応するためベースの減衰特性が高めで、スポーツモデルのような乗り味を示す。
積載性

3

開口部が低くとられ、開口面積が広くとられたトランクルーム。電動でリッドが閉まる機構はつかないが、トランクリッドのリンク形式から開け閉めに求められる操作力はとても少なくて済む。リヤサスペンションはスペースをとるマルチリンク式だが、プラットフォーム下部にうまくハイブリッドシステムのバッテリーや補機類をまとめたことでフラットなトランクフロアを実現した。
燃費

4

2.5Lハイブリッドモデルは実用燃費数値がとても良い。WLTC値は20.0km/Lだが、市街地走行モードでも17km/L台はなんなく達成するし、高速道路モードでは22km/L台まで達する。3.5Lモデルはハイブリッドシステムを燃費数値向上というより、走行パフォーマンス向上に用いた。そのため交通の流れに合わせて市街地をゆっくり走らせると12km/L台になんとか届く程度だ。3.5Lはクラウンに似合わぬ強烈な加速が魅力だ。
価格

4

2.0Lターボモデルが4,606,200円〜、2.5Lハイブリッドが4,978,800円から、3.5Lハイブリッドが6,237,000円〜。これが初期バリエーションでの価格帯だ。クラウンはトヨタブランドのフラッグシップであることから、先進安全技術や快適装備、走行性能どれをとっても当時の最高峰スペックを用いた。2018年モデルはわずか4年しか経過していないこともあり、いずれも未だトップクラスの性能を誇る。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
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