河口まなぶ、MiTo買う 現代FF最高の最高峰!
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:小林 俊樹
掲載 更新 carview! 文:河口 まなぶ/写真:小林 俊樹
こうした味付けのクルマは稀有だが、確かに数台が存在する。日本では残念ながら販売が終ってしまったフォード・フィエスタ、ミトのベースとなるフィアット・グランデプントがこれまでの2大巨頭で、次いで日本で唯一スズキのスイフト(含むスポーツ)が存在する。そしてこれらに共通する特性は、ドライバーの操作次第では姿勢変化させやすい=オーバーステアも作り出せる、ということ。
もっとも本質的に見た場合、アンダーステアしか出ないクルマは怖い。なぜならアンダーステアは前輪が滑っているため向きを変えにくい。特に速度が高いと非常に怖い。一方オーバーステアは後輪が滑っているため向きを変える余地がわずかにある。操作次第では目の前の壁に直撃するのを防げるかもしれない。が、多くのFFの場合は大衆車であり、何よりスピンを嫌うから無難な終始アンダーステアで収めているわけだ。
それはさておきミトはフィエスタやグランデプントと似た方向性の味付けとされる上に、それらを引き離すだけの実力が与えられる。
フィエスタやグランデプントよりもさらにしなやかなボディの動き(ロール等含む)を実現しながら、操作次第で自在に姿勢変化を作り上げることができるのだ。
ペースを上げて走った時のコーナリングは絶品。コーナーに対して操舵を始めるとフロントが路面に食いつき向きを変える力とともにロールを生み出す。そのロールが後ろに推移していくと、多くの他車ではサスペンションの粘りが限界を迎えそれ以上舵が入らなくなる。が、ミトの場合はそこから一段リアが沈み込むような感じとなって、少しずつ巻き込むような動きを見せるのだ。もちろんドライバーが慌てないレベルで。
つまり誤解を恐れずに言い切ってしまえば、フロントで舵が決まった後は、リアのロールと少しずつ巻き込む動きで曲がって行く。大げさにいえばリアで曲がって行く感じがあり、舵も入れようと思えば入るのだ。
これは一見するとリアのサスペンションのスタビリティが不足しているように思えるが、実は4輪を極めて巧みに接地させているからこその技でもある。これこそが現代のアルファ・マジックなのだ。
以前のアルファロメオのFFはキレ味鋭いフロントに対し、リアのスタビリティが低めだったことで向きが変わった。豪毅なドライバーはそれを腕で収め、それがアルファ使いの証でもあった。事実この頃のアルファで運動性能を高めるチューニングをする場合、どうしても硬め硬めの設定になりがちなのがその証だ。だから以前のFFアルファのハンドリングは“血の匂いのするナイフのような”と形容されるものだった。
しかし現代のFFアルファであるミトは、そこから“血の匂い”をぬぐい去り、ナイフのようなキレ味を低リスクで味合わせる。
それが先述したDモードでのESPの働きでもある。DモードではESPの介入は最小限で、かつてのアルファらしいキレ味のあるコーナリングを存分に味合わせ、おイタが過ぎればESPが介入するのだ。
つまりミトは現代のFFとしては極めて操縦志向が強いクルマながらも、最後は安心を約束するというFFスポーツの理想型を提示してくれている。
僕はそこに大きな感銘を受け、この時代にあっても走りの楽しさ気持ち良さを真摯に届けようとするミトに心底惚れた。だからこそ、コイツと楽しく気持よい毎日を味わいたいと思い購入を決めたわけだ。もちろん環境や燃費を気にする必要はある。だが、それと引き換えに自動車における楽しさ気持ち良さを諦める理由はひとつもない。そう考えると現時点で僕が選ぶベストな現代車は、ミトなのだ。
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