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回顧録 ミニマム級シティカー対決 VWアップ vs トヨタiQ 後編

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回顧録 ミニマム級シティカー対決 VWアップ vs トヨタiQ 後編

もくじ

ー 十分な室内空間
ー バランスの良い走り
ー 高い品質的満足度
ー iQよりも上級感
ー おすすめグレードは
ー スマートな実用性の塊

ロードテスト フォルクスワーゲンUp! GTI ★★★★★★★★☆☆

十分な室内空間

後席の空間は前席のポジション調整次第といったところだが、それとは無関係な室内幅とヘッドルームに関しては十分である。また、トランクの奥行きは非常に深く、このクラスのクルマとしては、ほかに例のない容量が確保されている。

そして、助手席のシートバックを完全に前倒しできるようにしたVWの決断には、天才的なひらめきだと賛辞を送りたい。これにより、最長2mまでの長尺物を運ぶことが可能になったのだ。

前後長のあるドアには利害の両方がある。乗降性のよさに寄与している一方で、幅が狭い駐車スペースでドアを開けるのがむずかしくなっているからだ。また、Bピラーの位置がかなり後方に押しやられるので、サイドとヘッドのエアバッグは背の高い(仕立ては立派だ)シートバックの両脇に収納されている。

走りに関しても、ほとんど見た目どおりといってよかろう。正確でバランスがよく、とても巧妙にセッティングされている。ローマで試乗した個体は75psの1.0ℓエンジンを搭載し、5速MTが組み合わせられていたが、このエンジンがまた活発で積極的に回りたがる性格だった。

バランスの良い走り

冷間時には多少ギクシャクした感じもあったが、これはまだ走行距離が少なく、慣らしが済んでいないためかもしれない。ちょっと本気で走らせてみれば、このクルマが持つ身のこなしの軽さと、本質的に備わっている卓越したバランスのよさに、すぐに気がつくだろう。

ステアリングは軽いが、これはごく自然にそれが実現できたからでもある。数kmも走ればすぐに、極限まで軽量化されたドライブトレインのおかげで前輪荷重が少なく、わざわざ人工的にアシストして軽さを演出する必要などまったくないのだとわかるだろう。実際、このクルマがすべての面で徹底したミニマリズムに基づいて造られているのは、まったく疑いようのない事実だ。

アップを運転していると、あらゆる所作にそのとおりの軽さを実感できるが、ほかの一部のエントリーモデルとは違い、そのフィールは決して実体感に欠けていたりしない。同様に、ハードに加速したところでエンジンからはどう聞いても単調でしかない音しか発せられないのは確かだが、それは決してドライバーの知覚に低レベルの振動が伝わってくることを意味してはいない。

さらにアップは最小回転半径が思い切り小さくなっており、ガラス面積の広いキャビンと車両感覚のつかみやすさと併せて、街中でとても運転しやすいクルマに仕上がっている。そのうえで、それなりに速度を上げても良好な安定感をまったく失わないのだ。

高い品質的満足度

ローマの荒れた路上での乗り心地とダンピングのよさは本当に大したものである。長いうねりのある路面を走っても落ち着いたハンドリングに乱れはなく、ボディの制御が破綻する事態など考えられない。

路面に短く鋭い突起があっても、サスペンションがその角を丸める仕事を見事にやってのける。ブレーキには2ステージのサーボユニットが装備されており、この部分にはとくに注意が払われているようだ。きわめてハードなブレーキングを行っても、踏み応えのフィールと制動力のコントロール性にはなんの不満もない。

強いて欠点を挙げるなら、エンジンの小ささから速い交通の流れについていくにはかなり回転数を上げておく必要があり、常識的に考えれば、その際には高すぎるギアが選ばれている可能性もまたかなり高いことだ。

となれば当然、素早いシフトダウンが必要となるが、その操作自体は軽くてしかも簡単だ。クラッチにははっきりした当たりの感覚があるので、素早くシフトダウンしての加速は何もむずかしくない。

総合的に見れば、アップは高い品質的満足度を与えてくれる製品だ。ドライビングポジションは良好でインテリアは明快、スイッチ類には上質感がある。購入したドライバーはしっかりと報われることになるだろう。

iQよりも上級感

アップからiQに乗り換えると、その瞬間に感じるフィールの違いに驚かさせる。iQはアップよりも高級なクルマに感じられ、より重量感があり、上級クラスのモデルのように思えるからだ。

絶対的な重量の軽さを考えたら、いささか奇怪にすら思えてしまう。また、こちらのほうが運転席の座面が高いので、その分だけ路上での前方視界も良好だ。前席キャビンには幅があって広々としており、シートも非常に快適である。

ただ、残念ながら今回は1.0ℓ68psのマニュアルモデルを借りることができず、試乗車は上級の1.3ℓ98ps+CVT仕様だった。市街地での交通では、このわずかな出力の差が実際の走りでは大きな違いとなって現れる。

このiQは発進加速時から、間違いなくアップよりも速かった。高級感や車内の快適性、それにリラックスした走りでiQが完全にアップを凌いでいるように感じられたのは、そのためでもあるだろう。

iQに乗っていると、周囲の喧騒から快適に遮断されている感覚があり、これには余裕あるトルクと自動変速のトランスミッションもひと役買っているのは確かだ。しかし、乗り心地そのものはアップほど快適ではない。長いうねりを越えるときには「急潜航」のような挙動があり、舗装の穴を通過する際の衝撃はかなり強烈だ。

ブレーキも、走行距離2万1000kmの個体だからパッドの摩耗などによる疲労も考慮する必要があるとはいえ、制御不能なロックに陥るポイントがアップよりも明らかに早くやってくる。

おすすめグレードは

iQにはアップのような軽量級らしい正確さもなければ、フル4シーターと十分なトランクという収容能力もない。最小回転半径は同じく並外れて小さいが、あまりにも短いホイールベースはタウンカーとして理想的といえるものではない。

ベースモデルのアップ(クルマとしてもっともベーシックなものであることに異論の余地はなかろう)は邦貨換算約130万円の価格で、路上で驚くべき実力を見せてくれる。今回、試乗したのは同160万円のハイアップだが、こちらにはアロイホイールとファンシーなトリム、革張り3スポークのステアリングホイール、フォグライト、それにiPod風のよくできたGPSナビ/インフォテインメントシステムが装備されていた。

もしかするとアップでいちばんお薦めなのは、CO₂排出量が97g/kmのムーブアップ・ブルーモーションかもしれない。こちらは邦貨換算約145万円で、基本スペック以上の必要なものはエアコンを含めてすべて揃っている。

今回のハイアップと同額をiQに投じた場合、英国で入手できるのはベースモデルである100Gのマニュアル仕様、日本でならそれにレザーパッケージかゴーを加えたCVT仕様、もしくは1.3ℓベースモデルのCVT仕様となる。1.0ℓマニュアルなら99g/km、CVTで110g/kmであり、1.3ℓでも120g/kmだから、スペック的に劣ると感じられることはないだろう。

スマートな実用性の塊

今回、iQは多くの人が予想しているよりもはるかに優れたクルマであると判明したわけだが、それは子供を考えずに済む人の純然たるセカンドカーとして見た場合であり、シャープでスマートな実用性の塊であるVWとはまったく別の、ある種贅沢な選択肢である。

邦貨換算した英国価格が約205万円にもなる今回の1.3ℓ+CVTのiQは、ピッチングが気になる乗り心地を別にすれば、このクラスとは思えないリムジンのような高級感を積極的に評価できるクルマだった。

以上の検分を踏まえたうえで、われわれの結論はこうだ。iQと同等の価格でアップが販売される英国はもちろん、iQが安価で手に入る日本でも、読者諸氏が自宅に置きたくなるのはおそらくアップのほうではないだろうか。

それはひと目でわかる個性的なルックスと、徹底したエンジニアリング主導の造りがあるからだ。アップル流のやり方で造られたこの製品は、所有すること自体に満足感を見出すことができる。それに対してiQのほうは、あまりにもニッチに過ぎる。

トヨタはトリックのやり方を少々誤ったように思う。もう少しだけストレッチして本物の4人乗りに仕立てたなら、オーリスなどよりはるかにプレミアム感のあるクルマに仕上がったはずだからだ。そうすれば、ゴルフをも相手にできる価格競争力を持つ製品となり得たかもしれない。

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