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ダイハツ最後の独自セダン!! 隠れた実力派 アプローズの悲運と宿命【偉大な生産終了車】

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ダイハツ最後の独自セダン!! 隠れた実力派 アプローズの悲運と宿命【偉大な生産終了車】

 毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。

 時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。

【超名門車 51年の歴史に幕】「ありがとうマークX」生産終了までの軌跡と後継車の行方

 しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。

 訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ アプローズ(1989-2000)をご紹介します。

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文:伊達軍曹/写真:DAIHATSU

■ダイハツ初の独自開発によって生まれた テールゲートを備えた5ドアセダン

 それまではトヨタの車台を使って小型乗用車を作っていたダイハツが初めて完全自社開発した、玄人筋からは高く評価された5ドアセダン。

 しかし発売直後、燃料タンクの設計に起因する不幸な火災事故が起こり、それを大新聞がセンセーショナルに報じたことでいきなり失速。そしてそのまま1代限りで終わってしまった悲運の佳作。それが、ダイハツ アプローズです。

ダイハツのセダンとしてはトヨタカローラのプラットフォームを使用したシャルマン(1974-1988)があるが、アプローズはダイハツが独自開発した初のセダンとなる(写真はマイナーチェンジが施されたアプローズθ〈シータ〉)

 まずは1989年のジュネーブショーに「MS-X90」というコードネームで参考出品されたこの車は、「喝采、称賛」という意味を持つアプローズ(APPLAUSE)という車名で1989年7月に発売されました。

 シンプルビューティと言えるボディは、一見した限りでは普通の4ドアセダンに見えます。

 しかし実際は、バンパーレベルから開く大型のテールゲートを備えた5ドアセダンでした。セダンとしての「フォーマル性」と、ハッチバックとしての「実用性」を兼ね備えた車だったのです。

サイズは4260mm×1660mm×1375mm。丸みを帯びた全体的なプロポーションや、トランクとリアゲートが一緒に開く「スーパーリッド」が特徴のアプローズ

 このようなスペックを伴って1989年7月に発売されたアプローズは、ダイハツが設定した「月販3000台」という目標には届かなかったものの、当初は月販1000台ほどのペースで売れていました。

 カローラなどの競合がひしめいていた当時のこのジャンルの中では「最初は健闘していた」と言うことができるでしょう。また冒頭付近で申し上げたとおり、玄人筋はアプローズの実直な走行性能と実用性を高く評価していました。

 しかし1989年11月、アプローズの給油口から噴き返したガソリンに何らかの火が引火し、ガソリンスタンドの従業員がやけどを負うという事故が起こってしまいました。

 さらには走行中のアプローズのエンジン付近から出火し、その車が全焼するという事故も発生。

 ダイハツはアプローズのブレーキ系統と燃料タンクに不具合があったとして、当然ながらすぐさまリコールを届け出ました。

 しかしこれらの火災事故を某新聞社が大々的に報じたことで、ダイハツ アプローズは発売から半年もたたないうちに好ましくないイメージが世間一般に浸透した側面もありました。

 その後、ダイハツはさまざまなテコ入れやマイナーチェンジなどをアプローズに対して行ったのですが、一度失墜したそのイメージは、二度と回復することがありませんでした。

 そしてアプローズは2000年3月に生産終了となり、同年5月には販売終了となったのです。

■カローラなど強豪ひしめくなかでも健闘 しかしリコールが終焉の引き金に

 ダイハツ アプローズが1代限りで生産終了となってしまった理由。それはもちろん言うまでもなく直接的には、燃料系の設計に当初不具合があり、それに起因する火災事故が2件起きてしまったことでしょう。

 これに関しては、何ともフォローすることができません。

 しかし同時にこうも思います。「もしもあのとき、某大新聞がほとんどネガキャンと呼べそうな報道っぷりをしていなければ、ダイハツ アプローズのその後はどうなっていただろうか?」と。

エンジンは97psと120psを発揮する1.6L直列4気筒SOHCを搭載し、4WD車も用意。デビュー当時の1989年、GT-R(R32型)やユーノスロードスター、セルシオといった名車が生まれてきたなかでも好意的な評価を与えられていた

 軽自動車の世界では昔から「日本を代表するメーカーのひとつ」だったダイハツですが、小型乗用車の世界では「日本を代表する」どころか「超マイナー」と言えるブランドです。

 それゆえ、もしも新聞社の報道がなかったとしても、ダイハツ アプローズはさほどの売れ筋セダンにはならなかったでしょう。

 しかしアプローズは「普通によく走って、そして普通以上にユーテリティ性が高い」という、あるようで実はなかった、けっこう魅力的で独特なコンパクトセダンでした。

 それゆえ、もしも時間をかけてじっくりとプロモーションを続けていたならば……。

アプローズと同じく独自セダンであったシャレードソシアルとともに2000年に生産終了。これによりダイハツ独自開発によるセダンの系譜は終止符が打たれることになる

 まあそれでも、その後のRVブームとセダン人気の凋落によって、アプローズは消滅していた可能性のほうが高いでしょう。しかし「隠れ実力派セダン」として、もう少しマシな「生涯」を送れたような気はするのです。

 火災事故を起こしてしまった初期のダイハツ アプローズを、必要以上にかばいたいわけではありません。またA新聞社に対して必要以上に文句を言いたいわけでもありません。

 でも、「とにかく残念だ……」とは思うのです。

■ダイハツ アプローズ 主要諸元
・全長×全幅×全高:4260mm×1660mm×1375mm
・ホイールベース:2470mm
・車重:970kg
・エンジン:直列4気筒SOHC、1589cc 
・最高出力:120ps/6300rpm
・最大トルク:14.3kg-m/4800rpm
・燃費:14.2km/L(10モード)
・価格:131万5000円(89年式16Ri 5MT)


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