■歴代ジムニーが揃っている「ジムニー博物館」の魅力とは
日本には、クルマをテーマにした博物館が多数ありますが、ジムニー専門の博物館というものも存在します。それは、神奈川県藤沢市にある「尾上茂のジムニー歴史館」という場所です。
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この歴史館は、ジムニー専門のパーツメーカーであるアピオの会長で、国際ラリーストでもある尾上茂氏が、2018年にオープンさせました。富士山や大山を望む、風光明媚な場所に立つ白亜の建物。そのなかには約30台のジムニーが所狭しと並んでいます。
スズキがジムニーを造るきっかけとなった、ホープ自動車「ホープスターON型」をはじめ、初代ジムニーであるLJ10型、ジムニーの地位を確固たるものにしたSJ30型など、ジムニーの系譜をここでほぼ目の当たりにすることができます。その一台一台を、尾上さんがすべて自分の手でレストアしたというのも、この博物館の凄いところです。
尾上氏は「20年くらい前に、仕事をしながらふと、ジムニーを後世に残せるような施設を造りたいなと思ったんです。それですぐにお金を貯め始めて、車両も会社の協力を得ながら少しずつ集めていったんですよ」といいます。なかには、博物館の話を聞きつけて、車両を無償提供してくれた人もいるといいます。
車両の脇には、四駆ジャーナリストの河村大氏が、一台一台に丁寧な解説を添えています。そのモデルが生まれた背景やスペック、バリエーションなどが分かるようになっています。
壁にはジムニーの歴史が一目で分かる展示もされているので、いまのモデルで初めてジムニーを知ったという人でも、興味深く歴史を学ぶことができるのではないでしょうか。
尾上氏が会社の前身である尾上自動車を創立したのは、ちょうどいまから50年前。その頃は、ジムニー専門ではありませんでした。
会社ではホンダ車などさまざまな車種を扱っていましたが、四輪駆動車の魅力にはまり、当時は三菱「ジープ」に乗っており、それオフロードレースにも出場していたといいます。
また、ジムニーに乗るきっかけは人からの誘いだったといいます。「RV4 ワイルドグース代表の二階堂(裕)さんから、一緒にジムニーを買おうと誘われて、SJ30型を購入したのが最初ですね。乗ったら、なんだか造りは安いし、エンジンも非力なんです(笑)。
ところが、チューニングしていくと、どんどん性能が上がっていくからハマってしまって。気がつけば、オフロードレースでもクラス優勝できるようになっていました」
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以来、会社の軸足もジムニーに移し、1988年にジムニー専門店として「オノウエ自動車」に改称。2002年にはブランド名を社名にした「アピオ株式会社」が誕生しています。
アピオは現在、2代目社長にバトンタッチしていますが、ジムニーのアフターパーツ市場でその名を確固たるものにしたのは、尾上氏の功績といっても過言ではありません。
というのも、尾上氏はジムニーや「エスクード」で、パリ・ダカールラリー(現ダカールラリー)やオーストラリアンサファリなど、国際的なラリーレイドにプライベーターとして参加。
個人での出場は困難な過酷なラリーレイドで、数々の輝かしい戦績をおさめてきました。そしてその経験は、自社製品にフィードバックされていきました。
「小さなジムニーが、大排気量のマシンを相手にして戦う様は、まさに日本人そのもの。小ささは砂漠などでは武器になるし、ジムニーは基本の造りがしっかりとしたクルマなので、手を加えるだけ応えてくれますから」(尾上氏)と、傍らにあるかつての相棒を愛おしそうに見つめます。
モータースポーツからは最近引退した尾上さん。いまの楽しみは、この博物館でたくさんのジムニーファンを相手にすることだといいます。
「開館してから、老若男女問わず想像以上に多くの人が来てくれました。この間は、お父さんがジムニー乗りで、ジムニーにすごく詳しい小学生が観に来てくれましたね。
『俺の自作したチャンバーの方がいいよ』と自慢にしに来る同世代とか、とにかくここに来る人はいろいろ形でジムニー愛を表現してくれるんです。そういった人と話すのが、余生の楽しみですよ」(尾上氏)
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ちなみにこの博物館は、スズキの会長であり、ジムニー生みの親でも鈴木修会長も公認といいますから、ジムニーで繋がる人の絆は凄いものです。
博物館は、木曜から日曜までの10時から17時まで開館。入場料はありませんが、車両や施設維持にコストがかかるため、1000円以上の寄付金をお願いしているようです。
いまや、良コンディションのオールドジムニーは希少。しかも歴代モデルが揃っているともなれば、本家の「スズキ歴史館」以上です。
現行型でジムニーに興味を持った人も、ぜひ訪れてみてください。なぜジムニーが世界中に愛される名車になったかが、この歴史館の展示を観れば分かると思います。
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