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【GRヤリスに乗った】ヤリスとは別モノのスポーツカー。ホモロゲモデルなんて久しぶりに聞いた!

掲載 更新 9
【GRヤリスに乗った】ヤリスとは別モノのスポーツカー。ホモロゲモデルなんて久しぶりに聞いた!

WRC降臨モデルを手ごろに

予告映像がインターネット上を賑わせたあと、12月15日に富士スピードウェイで開催されたTGRF(トヨタ ガズー レーシング フェスティバル)で、まだカモフラージュされた状態ながら、いよいよその姿を現したGRヤリス。そのプロトタイプ車両を、グラベルとターマックのふたつのステージでテストした!

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このGRヤリスには大きな使命がある。まずひとつは、WRCマシンのホモロゲーション車両としての役割。WRCで使われるWRカーは市販車に対して非常に改造範囲が広いとはいえ、ベース車の素性が戦闘力に大きく関わってくる。車重、前後バランス、サスペンション取り付け位置、空力特性……と、さまざまな点で優れたベース車両が必要なのだ。その点で現行モデルは車重が30kg重く、空力やサスペンションストロークの点でも妥協を強いられているという。GRヤリスは年間25000台という生産台数をクリアしてホモロゲーションを取得し、WRCで勝てるマシンの土台となることがひとつ目の大きな使命なのである。

もうひとつが「WRC降臨モデル」を「素の状態でローカルラリーに勝てるポテンシャル」を持つものとして、しかも「誰でも買えるスポーツカー」として世に出すことだ。つまり手ごろな値段、そして速くなければならない。

GRヤリスは、ヤリスをベースとしながらボディ形状を大胆に変更。3ドアの、しかもルーフ後端が低く落ち込んだクーペ的なボディを仕立てた。3ドアとしたのはリヤホイール周辺のボディワークの自由度を高めるため、全高を下げたのはフロアからの高さが規定されているリヤウイングに風を効率よく当てるためといった具合で、すべてのデザインに理由がある。

軽量化のため前後フードと左右のドア、リヤゲードなどの蓋物はアルミ製に。そして驚くべきことにカーボンルーフが全車に標準装備とされる。もちろんコストをかければ何でもできるが、「誰でも買えるスポーツカー」としてそれを実現するために、SMC(シートモールディング・コンパウンド)と呼ばれる短繊維の樹脂で固めるかたちの成形法を用いている。表面がマーブル模様となるのが特徴だ。

ハイスペックな1.6L “3気筒” ターボにスポーツ4WDを

エンジンは1.6Lターボ。これも特徴的なのは直列3気筒だということである。おそらく3気筒ユニットとしては世界でも最大の排気量になるが、それでも4気筒としなかったのは軽量・コンパクト化のため。WRカーだけではなく、WRC R5車両として市販車に近いかたちでの競技車両としても販売を視野に入れていることが、その前提にはある。

東富士研究所、TMG(ドイツ・トヨタモータースポーツ)、TMNA(北米トヨタR&D)の叡智を集めて開発されたこのエンジンは、ベースをもたない純レーシングユニット。ボールベアリングタービンなどを採用し“2Lターボ並み”というからおそらく最高出力260~280馬力程度を発生する。トランスミッションは、こちらも専用の6速MTで、自動ブリッピング機能などを備える電子制御のiMTとなる。

そして、こちらも注目の4WDシステムは、やはり軽さを追求して複雑な電子制御システムとはせず、高応答カップリングを採用したトランスファーを使い、前後輪に回転差を生じさせることで、つねにリヤに駆動力が伝達されるという機構を用いる。前後駆動力配分は3段階に切り替え可能。ノーマルが曲がりやすく直進安定性も高い60:40、スポーツがFRライクな30:70、トラックがサーキットでもグラベルでも最速という50:50に設定されている。

ヴィッツの皮を被ったGRヤリスが踊る

前置きが長くなったが、いよいよ走りの印象に触れていこう。まずグラベルで現行ヴィッツの外観で艤装したテスト車に乗って得た最初の印象は、とにかく軽快だということ。クルマが小さく、軽く、剛性感が高いから、操作に対するレスポンスがきわめて鋭いのだ。

エンジンも、やはりパワフルなのはもちろんアクセル操作に対するツキがよく、それがマシンコントロール性の高さにも貢献している。3気筒のネガはまったく感じられず、低回転域から回転、トルクの出方ともども非常にスムーズなことにも感心させられる。

そして4WDシステムは、切り替えればハッキリとその差がわかるほど、クルマのキャラクターを変化させられる。挙動は各モードのコンセプトそのままで、ノーマルは非常に安定していて走りやすく、スポーツに切り替えればリヤを思い切り振り出す走りが、より簡単にできるようになる。それでいて前輪にもしっかり駆動力が伝わっているから、最後の最後で安定性が担保されるという印象だ。

トラックの50:50が一番速いというと意外と思われるかもしれない。しかし走らせてみると、リヤが流れた状態でも確かなトラクションがかかってフロントが引っ張り、リヤも流れ過ぎない絶妙な姿勢を作りやすい。

一方、ターンインで姿勢を作るのに、ややオーバーアクション気味な操作が必要なのは気になった。安定性が高いとも言えるので難しいところではあるけれど。とはいえグラベルで乗ったのはギヤボックスやデフなどが市販スペックとは異なる仕様だったので、市販時にはまた違った印象になるのだろう。

少量生産でも利益を出し、
スポーツカーをつくり続ける使命


ターマックは富士スピードウェイのモビリタで、パイロンを並べた広場に水をまいたところで走らせただけ。しかも筆者のテスト中はトランスファーもしくはリヤデフがオーバーヒートして肝心な4WDシステムがほとんど機能していない状況だったので、挙動云々については多くを細かく語ることはできない。それでも言えるのは、ボディやステアリングまわりなどの剛性感がきわめて高いレベルにあり、またシフトフィールをはじめとする手の触れる部分の感触が凄まじく上質だということだ。回すほどに音が澄んでいき、回転上昇に弾みがつくエンジンのフィーリング、精度感にも圧倒された。おそらくこれなら、何気ないふだん使いのときにも満足感、高いに違いない。

振り返れば2007年に販売を終了したMR-Sが最後になるだろうか。トヨタは共同開発の86やGRスープラを発売はしたものの、とにかく長い間、自社開発のスポーツカーは持っていなかった。つまり開発チームは、技術もノウハウもまったく足りないなか、しかも限られた時間で、この使命を果たさなければならなかったのだと、開発責任者の齋藤尚彦氏は振り返る。

そのため開発にあたっては、まずスーパーGTや全日本ラリー、WRCなどのプロドライバーが高い目標設定を行い、課題を明確化。そこで得られたデータを縦割り組織でではなく、チームを横断したかたちで活用してすぐに開発に反映させていくクロスファンクショナルチームで具現化していくという手法が取られたという。まさにレーシングガレージが作ったスポーツカーのようだが、齋藤氏によれば、これは「従来のトヨタ自動車という大会社、大組織では無理なことで、カンパニー制を採用したことで小回りが効くようになったからこそ可能だった」という。

スポーツカーの火を絶やさないためには、それこそ1円でもいいから利益を出し続けることが必要。小規模生産ながら、それをクリアできる体制ができたからこそ、GRヤリスは世に出ることとなった。トヨタとしては、先に書いたように手ごろな価格でこのクルマを出し、しかも継続して楽しんでもらえるような仕掛けもさまざま考えているようだから、この後の発表も楽しみに待ちたい。とにかくこのクルマ、走ることが好きな人なら、大いに期待して待っていて間違いない1台だと断言しよう!

〈文=島下泰久 写真=山内潤也&難波賢二〉

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みんなのコメント

9件
  • ド派手はリアウィング希望。もちろんオプションで構わない。
    標準だと幼稚な感じがするから。要らない人も多いだろうし。

    しかしWRCルックスに近づけたい人にはあの手のリアウィングは欲しいだろう。

    かつてのプジョー206のラリーカーみたいなウィングが欲しい。
  • テスト車両とは言え、暖冬とは言ってもこの季節にオーバーヒートはあかんのでしょ。
    サーキットで使うなら後付けデフクーラー必須かな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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