見た目は営業車? 実はカリカリのコンペティションマシンのブーンX4
ダイハツ ブーンといえば普通車登録のリッターカーとして、軽自動車だと不安だけれどあまり大きい車も運転が心配……というユーザーや、その車両価格の安さから営業車としても重宝されているベーシックカーです。
そんなブーンはトヨタからはパッソという名前でも販売されており、1日に1台以上は必ず見ると言っても過言ではない、日常に溶け込んだ車です。(日ごろそこまで意識して見ることはないかもしれませんが……)
今回スポットライトを当てるのは、そんなブーンの初代モデル。
2004年にデビューした初代ブーンは、3気筒の1Lエンジンと、4気筒の1.3Lが用意され、組み合わされるミッションはどちらも4速ATと非常にシンプルなラインナップで、マニアックな要素は皆無と言えるでしょう。
しかし、2006年3月に追加された「X4(クロスフォー)」というグレードだけは、そんなブーンの中で異彩を放つモデルだったのです。
見た目はブーンのスポーティグレード「カスタム」と同様のバンパーを装備している程度ですが、ボンネットに大きく開けられたエアダクトが異彩を放っていることが分かりますね。
実は、X4はモータースポーツ(特にラリーやダートトライアルなど)に参戦するユーザーをターゲットにした競技ベース車であり、いわば同時期に存在していたランサーエボリューションやインプレッサWRX STIと同じような存在。
搭載されるエンジンは、ベース車よりも排気量の小さい936ccの4気筒16バルブターボエンジンなのですが、この排気量も理由があります。
JAF公認競技に出場する際のクラス分けは排気量で行われ、ターボが付いている車両は当然出力的に有利のため、排気量に1.7をかけた数字を排気量と換算するルールがあるのです。
そしてブーンX4が狙うクラスは1.6L未満のクラスであり、936ccに1.7をかけると1591cc相当と、ギリギリクラス内に入るという計算。つまり、逆算してはじき出された排気量というわけなのです。
ちなみにこのブーンX4に搭載されるKJ-VET型エンジンのベースとなったのは、同社のYRVに搭載されていたK3-VET型と呼ばれる1.3Lターボエンジンなので、わざわざ排気量をダウンさせているということになりますが、それでも最高出力は133ps/13.5kgf・mと1L以下のエンジンとは思えない高出力となっています。
さらに競技での使用が前提なので、インタークーラーウオータースプレーまで標準装備というから驚きですね。
また、ラリーやダートトライアルがターゲットということで、駆動方式は当然ビスカス式のフルタイム4WD。
さらに、フロントには純正で機械式LSDが組み込まれています。そして、組み合わされる5速ミッションも純正状態ですでにクロスミッション化がされており、100km/h巡行で4500回転ほどというローギアード化までされているのです。
一方、競技に出るときには替えられてしまうことがほとんどのシートや足回り、ブレーキなどはベース車と同等か若干強化された程度のものしか備わっていないという割り切りっぷり。
つまり、購入してから変更することが大変なエンジンやミッション、駆動系には最初からスペシャルなものを組み込みながら、交換前提の部分にはお金をかけないという車両に仕上がっているというわけなのです!
見た目は営業車? 実はカリカリのコンペティションマシンのブーンX4
なお、ブーンX4にはベースグレードとハイグレードパックという2種類のグレードが用意されていましたが、ベースグレードではキーレスやプライバシーガラスはおろか、エアコンすら用意されないガチの競技ベースグレードのため、普段乗りで検討している人は注意が必要です。
また、当然ながらモータースポーツで酷使された個体も存在しているので、長く乗りたいと考えている人はロールケージなどの競技用部品が付いている、もしくは付いていた形跡がないかもチェックしたいところ。
そんなブーンX4は、ランエボやインプレッサのように台数が売れた車種ではないのでタマ数は少なめ。それでも執筆時点(2019年11月21日)で10台以上の在庫を見つけることができました。
価格帯は総額100万円前後がボリュームゾーンとなっていますが、その内容は競技用のカスタマイズが施されたものからフルノーマルのものまで様々。
そのため、価格だけで判断せずに、自分がどんな使い方をして、どんな仕様が欲しいのかをしっかり決めてから選ぶようにしましょう。
文/小鮒康一(フナタン)、写真/ダイハツダイハツ ブーンX4を探してみる▼検索条件ダイハツ ブーン(初代)×X4×全国
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