SUVの販売戦線に異変が起きている。
2019年4月に日本市場では2年近いブランクを経て復活したトヨタ RAV4が、5月から9月まで5ヵ月連続でSUVの販売トップを獲得。
2017、2018年と2年連続でSUV販売No.1だったトヨタ C-HRやホンダのヴェゼルを破り、車格的に「1クラス上」のRAV4が首位を獲得し続けているのだ。
そもそもRAV4は、2016年に一度、日本での販売を終了したモデル。それにも関わらず、なぜRAV4はこれだけバカ売れしているのか?
販売台数のデータや身内の“前王者”C-HRと対比ながら解説したい。
文:永田恵一
写真:編集部、TOYOTA
【画像ギャラリー】バカ売れ! 新型RAV4の内外装を詳しく見る
2017&2018年のSUV販売はC-HRが「二冠」
2016年12月のデビュー以降、2年連続でSUV年間販売No.1に輝いたC-HR。しかし、最近ではホンダ ヴェゼルに逆転を許す月も増えた
まず、2018年までSUVジャンルで人気No.1だった2016年12月登場のトヨタ C-HRが、本格的なデリバリーを開始した2017年から2019年9月までのSUV販売台数上位の傾向を振り返りたい。
【2017年】
1位:トヨタ C-HR/11万7299台
2位:ホンダ ヴェゼル/6万4332台
3位:トヨタ ハリアー/5万9732台
4位:日産 エクストレイル/4万9873台
5位:マツダ CX-5/4万1622台
2017年は登場したばかりのC-HR、コンパクトSUVながらミドルSUV並みの広さを持つヴェゼル、同年にビッグマイナーチェンジされたハリアーとエクストレイル、フルモデルチェンジされたCX-5という顔ぶれが順当にSUVの人気トップ5入りした。
【2018年】
1位:トヨタ C-HR/7万6756台
2位:ホンダ ヴェゼル/5万9629台
3位:日産 エクストレイル/5万304台
4位:トヨタ ハリアー/4万4952台
5位:マツダ CX-5/3万8290台
2018年は2017年とほぼ変わらない傾向だったが、2017年12月に登場し2018年から本格的なデリバリーが始まったマツダCX-8が3万701台を販売し6位に入っており、3列シートのSUVというジャンルに注目が集まった。
バカ売れRAV4は5ヵ月連続首位!! 年間No.1はあるか!?
5ヵ月連続でSUV販売No.1を獲得しているRAV4
いっぽう、2019年1-6月までを見ると、トップ争いでは登場から3年目に入ったC-HRの減速により、安定した販売をキープしたヴェゼルが結果的に1位に返り咲いたことと、4月からの3カ月でスタートダッシュを決めたRAV4がすでに6位に入る躍進を見せたことが目立つ。
2019年1-6月の各月SUV販売トップ5(「日本販売協会連合会」公表データより作成)
1月から9月までを見ると、ヴェゼル優勢となっているC-HRとの戦い、RAV4が4月登場ながら年間ではSUV販売で1位は難しいとしても、2位のチャンスは充分にあるだろう。
【2019年1-9月】
1位:ホンダ ヴェゼル/4万7502台
2位:トヨタ C-HR/4万4449台
3位:トヨタ RAV4/3万9299台
4位:日産 エクストレイル/3万1340台
5位:トヨタ ハリアー/3万1157台
また、ハリアーが約300万円からという安くない価格に加え、登場も2013年11月と時間が経っているにも関わらず、非常に安定した販売をキープし5位に入っている点に驚く。
なぜRAV4は売れるのか?
悪路での走破性や室内の広さを含め、SUVとして高い総合力を持つRAV4。日本市場復活以降、SUV販売No.1を独走中だ
現行RAV4が日本で復活したのは、日本でもSUVブームになっていることに加え、トヨタの乗用車ベースのSUVは、C-HRとハリアーだけと意外に少ないことがあげられる。
加えて、「現行RAV4とキャラクターは違うものの、同車格のハリアーとバッティングしそうなところもあるが、ハリアーが古くなっているので」という事情もあったと思われる。しかし、現行RAV4が売れているのにはそれ以外にも大きな理由が2つあると分析する。
【1】クルマ自体が素晴らしい
現行RAV4は、カムリなどで高く評価されている「TNGA-Kプラットホーム」を使った世界戦略車ということもあり、クルマ自体の出来が素晴らしい。素晴らしさを具体的に挙げれば、
・2Lとは思えない速さを備えるガソリン車、3.3LのV6だった先代ハリアーハイブリッド並みの動力性能を持つハイブリッド、それぞれの高次元な動力性能と燃費のバランス
・トヨタ車らしいイージードライブ性能と楽しさを絶妙にミックスしたハンドリング
・こだわりのある人を含めほとんどの人が満足するであろう快適な乗り心地
・ガソリン車、ハイブリッドともに4WDはトラクションやスタビリティと曲がる楽しさを見事に融合している点
・自動ブレーキなどの予防安全&運転支援システムは、夜間の歩行者や昼間の自転車まで対応する「トヨタセーフティセンス」の最新版で、日本で買えるクルマトップクラスと文句なし
このように、機能面だけでもあっという間に「売れる理由」が浮かぶ。さらに、室内の広さも申し分なく、価格も納得できる範囲だ。
トヨタ車らしい移動の道具としての完成度の高さに加え、内外装や走りでも趣味性や楽しさまで備えているのだから、「RAV4が売れないほうがおかしい」と感じるくらいだ。
「前No.1車」C-HRが失速しRAV4が受ける理由は?
対照的に失速気味なのが“前王者”C-HR。クルマの特徴もRAV4とは対照的だ
【2】身内のC-HRをRAV4が食っている
2017年、2018年とSUV人気No.1に輝いたC-HRであるが、よく見ていくと万人向けとは言えないところや弱点も少なくないクルマである。こちらも具体的に挙げていくと…
・C-HRはSUVに分類されるが、最低地上高は最大で155mmと乗用車と変わらず、クーペルックのクロスオーバーと考えた方が正確だろう。そのため、雪道を含めた悪路走破性はそれほど考えておらず、室内やラゲッジルームも決して広いとはいえない。
・最近マイナーチェンジを受けてもハイブリッドの4WDは設定されず、4WDがある1.2Lターボエンジンも特に魅力を感じるパワートレーンではない。
以上を踏まえると、C-HRはトヨタ全チャネルで販売されるという強みはあるにせよ、RAV4も、東京ではトヨタディーラー全店、カローラ店とネッツ店でも販売されるだけに、C-HRを見に来たユーザーが「オーソドックスなSUVのRAV4の方がいいか」と考えるケースも多々あうだろう。
むしろ、C-HRはこれだけ個性の強いクルマが、約3年間に渡ってこれほど売れたことの方を称えられるべきではないだろうか。
いっぽう、ハリアーは現行モデルとなり6年目となった2019年に入り、現行RAV4が登場した後も3000台前後の販売をキープ。現行RAV4とハリアーがバッティングしている印象はまったくない。
これは同車格のSUVでも、SUVらしいRAV4とゴージャスなハリアーという棲み分けが、今のところうまくできているためだろう。
◆ ◆ ◆
絶好調なRAV4を見ると、「車種に限らず売れるもの」というのは、その商品に求められる要素を高次元でバランスさせるか、そうでなければ何か飛び抜けた部分が必要なことがよく分かる(前者が現行RAV4、後者がC-HRやハリアーだ)。
RAV4自体に関しては現状でもほぼ磐石だ。
さらに2019年11月のLAショーに出展されるPHEVが適価で日本にも導入され、ミドルSUVでは空白となっているスポーツモデルが追加されるようなことがあると、ライバル車が白旗を挙げてしまいそうな完全無欠のSUVになりそうだ。
現行RAV4は、元気一杯のトヨタと、対照的に元気を感じないトヨタ以外のメーカーを象徴する存在なのではないだろうか。
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