昭和は遠くなりにけり…だが、昭和生まれの国産スポーティカーは、日本だけでなく世界的にもブームとなっている。そんな昭和の名車たちを時系列で紹介していこう。今回は昭和57年発売のトヨタ セリカ 1800GT-Tだ。
ツインカムかターボか?の論争に終止符を打つ
トヨタ セリカ 1800GT-T:昭和57年(1982年)11月発売
昭和48~53年(1973~78年)と言えば、日本の自動車メーカーは石油ショックと公害対策のダブルパンチによって、およそスポーツエンジンとは縁のない分野での技術競争に全力を傾けなければならなかった時期。その暗黒の時代にあっても、トヨタは燃料供給をEFIに切り換え、間を18R-Uでしのぎ、ツインカム(DOHC)エンジンを作り続けた。それだけ企業としての余力があったということも否定できないが、技術者の間にツインカムに対する強いこだわりがあったのも事実だろう。
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そんなトヨタにとって、1979年デビューのセドリックターボから始まったターボ時代の到来は、ある意味で非常に苦々しい出来事だったに違いない。いきなり登場したその付加デバイスは、タイムラグなどの問題点をほとんど克服しないまま投入され、それでいながらスペック的には極めて高い絶対性能を発揮したのである。もちろんトヨタが即刻ターボに手を出さなかったのは、メカニズムの美学にこだわったというだけでなく、むしろ営業的な慎重さのほうが大きかっただろう。しかし、いずれにしても、日産のターボ戦略に対し、NA(自然給気)のツインカムで敢然と立ち向かうことにしたわけである。つまり「ツインカムかターボか」という選択に、ユーザーは悩むことになったわけだ。
ところが、いかにツインカムでNAの高フィールとパワーの両立を試みても、絶対パワーは過給エンジンにかなうべくもなかった。しかも世はパワーウォーズのまっただ中。とくに2L以下のスポーティモデルに関しては、理屈よりもスペックが物を言うご時世だったのだ。
そこでトヨタは絶対的な優位を手に入れるために、そしてユーザーの悩みを吹き飛ばすために、ツインカムとターボの両方を備えた3T-GTEUエンジンを開発し、セリカ・シリーズに搭載した。それが1982年9月に登場したセリカGT-Tであり、その上級グレードのGT-TRである。もちろん基本メカを共用するカリーナとコロナにも、同じエンジンを搭載したモデルが用意された。
当初LB(リフトバック)ではなくクーペが選ばれたのは、3つのボックスセクションを持ったノッチバックの方が、ボディ剛性や重量の面で有利だったからである。
3T-GTEUは、その型式名からもわかるように、1.6Lツインカムの名機2T-GEUがベース。ストロークを8mm伸ばすことで1770ccまで排気量を拡大し、さらにターボチャージャーの装着で、160ps/6000rpmの最高出力と21.0kgm/4800rpmの最大トルクを発生していた。
GT-Tの走りは強烈のひと言だった。0→400m加速は実測で15.85秒を記録。それまで国産車のベストタイムだったソアラ2800GTの16.00秒を、わずか1.8Lのセリカが一気に更新。また最高速度にしても190.98km/hをマーク。「ツインカムかターボか」論争にもケリをつけてしまった感があった。
足まわりについては、他のセリカと同じく前:ストラット/後:セミトレーリングアームによる4輪独立懸架が採用されたが、スプリングやダンパーは大幅に固められ、コントロール性の高いスポーティな味付けとされていた。それに3T-GTEUはコンパクトな4気筒なのでエンジン重量も軽く、よりパワフルな5M-GEU搭載のセリカXXと較べても、圧倒的に運動性能は高かった。
またGT-Tの開発には、もうひとつの大きな目標があった。それは国際ラリーのグループBクラスへの参戦。しかし、3T-GTEUは車両レギュレーションに対してわずかに排気量が少ない。そのため、ボア拡大によって若干の排気量調整を行った4T-GTEU(+21cc)というエンジンも、3T-GTEUと並行して作られることになった。500台の限定生産が行われたセリカGT-TSは、その4T-GTEUを搭載し、リアサスをトラブル発生時にアッッセンブリー交換しやすい4リンクリジッドとした、ラリー用ベース車両なのである。
トヨタ セリカクーペ 1800GT-T 主要諸元
●全長×全幅×全高:4435×1665×1320mm
●ホイールベース:2500mm
●重量:1145kg
●エンジン型式・種類:3T-GTEU型・直4 DOHCターボ
●排気量:1770cc
●最高出力:160ps/6000rpm
●最大トルク:21.0kgm/4800rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/70SR14
●価格:179万円
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