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業界ニュース 2019.7.26

【無駄にしか見えない!? 豊かさの証!??】メーカーが売れないクルマを造り続ける事情

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 今の日本では、国産車だけで200車種近い乗用車が販売されている。

 そうなると販売格差も拡大する。ホンダN-BOX、スズキスペーシア、ダイハツタント、トヨタプリウスなど、1か月に1万台以上売れる車種が8車ほどあるいっぽうで、 1カ月の売れ行きが100台を下まわる車種も見られる。

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 これらの不人気車の売れ行きは、人気車の1%以下だ。

 なぜ売れないクルマを造り続けるのか。その背景には複数の理由がある。クルマの販売について詳しい渡辺陽一郎氏が考察する。

文:渡辺陽一郎/写真:TOYOTA、HONDA、NISSAN、MITSUBISHI

売れないクルマを作り続けるのには理由がある

 まず「売れないから造り続ける」現実がある。車両を開発する時には、過去の販売実績や車種の性格を考慮して、生産総数(生涯生産台数)を決めるからだ。

 例えば生産終了までの台数が、1か月平均で1万台だとすれば、6年間生産すると総数は72万台だ。この台数の販売を通じて、開発費用、金型費用、営業費用などを償却していく。

日本最高級セダンのセンチュリーの車両価格は1960万円で、これは旧型に比べると700万円以上の値上げとなるが、これは販売目標台数と直結している

 そうなると同じ費用を使って開発されても、生産計画台数が異なれば、車両価格を変えねばならない。72万台から半分の36万台に減れば、1台当たりが負担する開発費用は、単純にいえば2倍になる。そうなると必然的に価格も高まる。

 例えばトヨタセンチュリーの価格は、先代型は1253万8286円だったが、現行型は1960万円に値上げされた。現行型はV型8気筒、5Lハイブリッドを搭載するが、ハイブリッドシステムやプラットフォームは、先代レクサスLS600hLと共通だ。しかも先代LS600hLの4WDシステムは、現行センチュリーでは省かれた。

 いっぽう、先代センチュリーは、専用開発されたV型12気筒、5Lエンジンを搭載して、プラットフォームも独自設計であった。高コストなクルマだったから、商品を見る限り、現行型が700万円以上も値上げする理由は見当たらない。

 そこで開発者に尋ねると「先代型の販売目標は、1カ月あたり200台だったが、現行型は50台と少ない。そこで価格を高めた」と述べた。生産台数の少ないクルマは、価格を高めないと収支が合わないわけだ。

 そうなると売れ行きが予想外に悪く、計画台数に達しないのに、生産と販売を終えたらどうなるか。開発費用などを償却できず単純にいえば赤字になってしまう。パジェロのように、国内販売を終えながら海外で売り続けるなら話は別だが、そうでなければ一定の台数に達するまで生産と販売を続けねばならない。

 売れないからこそ、収支が合うまで長く造り続けるのだ。開発時点でその後の売れ行きを見誤ると、大変なことになってしまう。

 また市場性を考えると、新型車の開発に踏み切れず、細々と造り続ける場合もある。

エスティマは発売から13年が経過しながらも販売は堅調。細かく手を入れているが、ここまで長く売れ続けるクルマは珍しい

 例えばエスティマは、発売から13年を経過した。本来ならフルモデルチェンジしていい時期だが、アルファード&ヴェルファイアを一新したこともあり、新型エスティマの開発に踏み切れない。

 ただしエスティマは1カ月に700台程度は安定的に売れるから、終了するのも惜しい。そこで長々と生産を続けている。

 海外の事情も絡む。海外で相応に売れていれば、日本の販売台数が少なくても商品として成り立つ。大柄になった今のセダンは、大半が海外向けだ。

 月販台数が500台以下のセダンも多く、国内市場だけでは絶対に成り立たない。いい換えれば今のセダンは海外が支えており、日本はオマケの市場になった。

 そこで月販台数が2ケタの車種について、細々と生産を続ける理由を考えてみたい。

ホンダレジェンド

デビュー:2015年2月(販売開始)
価格:707万4000円
2019年1~6月累計販売台数:240台(6月:39台)

レジェンドはSH-AWDによる走りの軽快感、スタビリティの高さはライバルを凌駕するレベルにあるが、それが購入動機につながっていないのがもったいない

 レジェンドの1カ月の登録台数は40~50台だ。北米仕様のアキュラRLXは160台前後と少し多いが、合計200台程度しか売れない。開発者は「レジェンドは海外が中心のクルマと思われているが、国内の販売比率も意外に高い」という。

 発表は2014年で、2015年から販売を開始。売れ行きは早々に伸び悩んだから、かなり長く造らないと収支が合わないだろう。ホンダの最上級車種でもあるから、今後も必要に応じて改良を加えていく。

 それだけに商品力は高い。V型6気筒、3.5LエンジンをベースにしたハイブリッドのSH-AWDは、前輪をエンジンとモーター、後輪は2個のモーターが駆動する。車両重量が約2トンに達するLサイズセダンなのに、ボディの重さを意識させない。

高級感のある本革シートを標準で装備するなどライバルに対して買い得感は高いが、歴代レジェンドともレジェンドでなければ、という絶対的な押し出しが弱い

 しかも安全面を含めた各種の装備から本革シートまで、フルに標準装着されて価格は707万4000円だ(発売時点では680万円)。レクサスGS450h・Iパッケージが普通の2WDで783万5000円に達することを考えれば、レジェンドは割安ともいえる。

 それなのに販売が伸び悩むのは、レジェンドが高級車ユーザーのニーズに合わないからだ。Lサイズセダンなのに、華やかさと存在感が乏しく、スポーティなミドルサイズセダンのように見えてしまう。試乗すると優れた商品なのに、ここまで売れないクルマも珍しい。

三菱RVR

デビュー:2010年2月
価格:210万4920~254万1240円
2019年1~6月累計販売台数:503台(6月:80台)

デビューした時からフロントマスクも大きく変身したRVR。安全装備などの充実により魅力アップ。2019年秋には再びフロントマスクを変更する予定

 コンパクトなSUVで、2010年に発売された。プラットフォームは、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値を含めて、現行型のアウトランダーやエクリプスクロスと共通だ。最近の三菱はプラットフォームを新規開発していないから、デリカD:5まで含めて共通化された。

 発売から9年を経過して、日本国内での売れ行きは1カ月に60~70台だが、ボディがコンパクトでもあるから海外では相応に売れている。

 全長は4365mmと短くても、ホイールベースは2670mmと長いから、基本設計が古い割に走行安定性に不満を感じない。歩行者を検知できる緊急自動ブレーキも追加した。

 今後はフロントマスクをエクリプスクロスやデリカD:5に準じたデザインに進化させる。販売店では「2019年7月に生産が一度止まり、改良を施して再度発売する」という。将来的には新しいコンパクトSUVを投入するが、しばらくはRVRが需要を支える。

ホンダクラリティPHEV

デビュー:2018年7月
価格:588万600円
2019年1~6月累計販売台数:70台(6月:6台)※FCV含む

2018年7月のモデル追加なので丸1年が経過したが販売面では苦戦が続いている。車両価格が高いのが最大の要因でディーラーも販売に力を入れていない

 クラリティは燃料電池車のフューエルセルが2016年にリース専用車として発売された。2018年には、1.5Lエンジンを搭載するプラグインハイブリッドのクラリティPHEVを市販している。1カ月の登録台数は、多い月でも20台程度だから、売れ行きはかなり低調だ。

 クラリティPHEVのリチウムイオン電池は17kWhの容量を確保して、充電された電気により101kmを走れるが(WLTCモード走行)、価格が588万600円と高い。経済産業省の補助金はクラリティPHEVは20万円、燃料電池車のクラリティフューエルセルは208万円だから、燃料電池車のほうが実質的に安く買える。

 このような価格設定もあって、ディーラーは販売に力が入らず(特に最近はN-BOXと新型N-WGNで多忙な状態だ)、売れ行きが低迷する。

日産シーマ

デビュー:2012年4月
価格:794万6640~902万6640円
2019年1~6月累計販売台数:101台(6月:21台)

日産のフラッグシップセダンのシーマは、フーガのロングホイールベース版というのが悲しい現実だ。北米主体というがいつまで造り続けられるのか……

 日産の最上級セダンで知名度も高いが、現行型はフーガハイブリッドのロング版だ。フロントマスクの形状は少し異なるが、インパネなどのデザインは、フーガと共通化されている。

 しかもフーガも前後席ともに充分なスペースがあるため、デザインまで似ているとなれば、シーマのニーズは下がる。

 シーマは価格も高く、おおむね800万円以上だ。フーガハイブリッドを170万円ほど上まわる。発売はフーガが2010年、シーマは2012年だから設計も古く、1カ月の売れ行きは20台前後にとどまる。

 ただしシーマは、海外でもインフィニティQ70Lとして販売され、日産の最上級セダンになる。すでにプレジデントは終了しているから、シーマまで廃止するわけにはいかず、日産の関連企業などを対象に細々と売られている。

三菱i-MiEV

デビュー:2010年4月(個人向け販売開始)
価格:294万8400円
2019年1~6月累計販売台数:39台(6月:8台)

i-MiEV 2018年4月に対歩行者安全強化に適合させるためフロントバンパーの変更により全長が85mm延長されたことで従来の軽自動車から小型車登録になった

 三菱iは、エンジンを後部に搭載する画期的な軽自動車として2006年に発売された。i-MiEVは、軽自動車のiをベースに開発された電気自動車で、2009年にリース販売を開始。

 この後、ガソリンエンジンのiが生産を終えても i-MiEV は存続している。ただし2018年に全長が3480mmに拡大され、小型車になってメリットが薄れた。

 しかも価格は、16kWhのリチウムイオン電池を搭載して294万8400円だ。3ナンバーサイズのリーフは40kWhのSが安全装備などを充実させて324万3240円だから、i-MiEVには割高感が生じている。

 さらに補助金額も異なり、i-MiEVは16万4000円、リーフSは40万円だから、i-MiEVとリーフSの実質的な価格がほぼ同じになってしまう。これでは多くのユーザーがリーフを選び、i-MiEVの売れ行きは1か月に10台前後だ。

 それでも生産を続けるのは、電気自動車の i-MiEV は三菱の環境技術の象徴的な存在であるからだ。今の三菱は、新店舗の電動ドライブステーションも展開しているから、i-MiEVはアウトランダーPHEVと同じく欠かせない商品になっている。

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(ベストカーWeb 市原信幸)

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