ダイハツのハイトワゴン「タント」が7月にフルモデルチェンジを予定しているが、その発表を前にプロトタイプのメディア試乗会が行われた。(文:日下部保雄、瀬在仁志/写真:小平 寛)
DNGAの新しい考え方で新たなダイハツを切り拓く
7月に発売予定の新型タントを皮切りに、ダイハツはプラットフォームからパワートレーンに至るまですべてを一新する。たとえば新プラットフォームはダイハツの軽からA/Bセグメントのコンパクトカーまでカバーする。
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新しいクルマ作りの考え方である「DNGA(ダイハツ ニュー グローバル アーキテクチャー)」が導入され、車両の軽量化と剛性向上、安全性の確保、そして柔軟性のある車種展開を可能にし、今後のクルマ作りに対応する。
さらに電動化+将来技術に対応できるポテンシャルも備える。ダイハツがDNGAに取り組む意義は大きく、コストが厳しい軽自動車において、基本性能の高いプラットフォームを作ることができれば、それがもたらす軽量化やコスト低減などの恩恵は図り知れない。
プラットフォームの開発には莫大なコストがかかり、その回収には時間がかかるが、数を見込める軽とコンパクトカーまで守備範囲とすると効率は上がる。
コンパクトクラスに対応するプラットフォームを軽で使えば余力が生まれる。部品などを含めれば共用化率は75%以上になるだろう。
ダイハツがグローバル展開する車種は近い将来、世界90カ国、21車種と見込んでいる。現在のプラットフォームを半減しながら車種を増やすことが可能になるのだ。
ユーザーにとってのメリットも大きい。剛性が高く軽量なプラットフォームはサスペンションのジオメトリー設定も含めて自由度が高く、衝突安全性だけでなく安定した運動性能や、快適な乗り心地も享受できる。
従来型に比べ、タントでは80kgも軽量化を図り、そのために中間加速力は13%も向上するという。
エンジンへの負担が少なくなることで実用燃費も向上するなどのメリットも大きい。
プロトタイプを実際に走らせてみると、背の高いハイトワゴンのデメリットをあまり感じない。走り始めから動きが滑らかで、とくにNAエンジン車ではスーと発進するのが好ましい。
また試乗コースが路面の滑らかなサーキットということもあり、乗り心地に関しての評価は次の機会に譲りたいが、ロードノイズはよく抑えられていた。
ハンドリングも同様で、公道を想定してハンドルを切った時のロールの進行が穏やかで、安定感が高い。切り返しのあるような場面でも追従性が高く、前後の動きもよく規制されているのでフットワークは良く、サスペンションジオメトリーの適正化の効果は十分に感じられた。(日下部保雄)
DNGAの採用で走りに安定感アリ! 軽トールワゴンの新ベンチマークだ
試乗したサーキットは緩やかなアップダウンと回り込んだコーナーとの組み合わせで、思いのほか攻略が難しい。
中でも速度を保ちながらステアリングを切り込んでいくインフィールドはシャシ性能が大きく左右する。高Gからの操舵でサスが大きく沈み、ボディをねじり、タフネスさが要求される。
背の高い軽自動車であれば、なおさらだ。
しかしながら新型タント(プロトタイプ)は旋回途中の安定感が高く、速度を維持するのがたやすかった。これにはDNGAの効果も大きい。
新世代シャシは大きめのロールを見せる走りながらも接地感が失われにくく、旋回後半はリアの踏ん張りによって背の高さをカバーする。ブレーキング時にも姿勢の乱れが少ないことでもシャシの強さがよくわかる。
新設計のミッション「D-CVT」は、CVT特有のエンジン回転に変化の少ないフィールを持つ一方、低速から高速までパワーをキャッチする粘り強さを発揮する。高負荷時にも右足の操作に対してロスが少なく、速度の落ち込みも少ない。
開口部が広いゆえに、現行モデルでは旋回中の姿勢にちょっと落ち着きがなかったり、駆動力の伝わり方に変化が感じられたものの、新型ではその印象は一変した。
剛性感の高いボディに支えられたシャシと、進化したエンジンとミッションによって、走りの質感は大幅にアップ。
いまや国民車的存在の軽自動車だが、ホンダのN-BOX同様、新たなベンチマークとなるに違いない。(瀬在仁志)
ACC(アダプティブクルーズコントロール)
スマートアシストIIIの小型ステレオカメラを使って、全車速に対応するACC。前走車の速度に合わせて走ってくれるので、渋滞時には運転の負担が軽減できる。また、車線維持支援機能(LKC)や車線逸脱防止制御も併せて採用されている。
駐車支援システム
新型タントには「スマートパノラマパーキングアシスト」という新たな駐車支援システムが採用された。モニターで駐車したい位置を指定すれば、並列も縦列も駐車可能で、ハンドル操作は自動。音声案内も、とてもわかりやすかった。
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