戦後すぐの創業から60年代に入る前までのフェラーリといえばシャシーとエンジンを造る会社のようなもので、ピニン・ファリーナやヴィニャーレ、エレナ、ボアーノといったカロッツェリア(架装メーカー)がそこに内外装を設えていたものだった。シリーズモデルといっても生産台数はごく少量で、ワンオフやフォーリセリエ(シリーズ外)とよばれる特注スタイリングのモデルが当たり前のように生産されていた。それだけ超ラグジュアリーな存在だったといっていい。
60年代以降はシリーズモデルの“量販”(フェラーリにしてはという台数レベルだが)に注力し、徐々に現代の姿へと成長することになるわけだけれども、その間、ワンオフやフォーリセリエはほとんど生産されなかった。80年代になってから限定車(F40やF50といった周年記念のスペチアーレモデル)がお目見えしたが、それとて70年代までのマラネッロからしてみると数百台~千台規模であり、量産モデルと言ってよかった。
本当の意味での少量限定車=ワンオフやフィウオフ(フォーリセリエ)が復活するのは、2000年代も末のことだった。2008年、日本の有名コレクターが発注したワンオフモデルがきっかけとなり、そこから“究極のフェラーリ”ビジネスが進化しはじめたのだった。
フェラーリ第3のシリーズ
以後、年に1台のペースでワンオフモデル(生産台数1、2台)の生産が始まったほか、マラネッロにとって重要なメモリアルイベント(主要マーケットや重要パートナーのアニバーサリーなど)を祝うフォーリセリエモデル(生産台数10台前後)の生産にも力を入れ始めている。これまですでにフォーリセリアは3モデルが市場デビューを飾っており、ピニンファリーナとの協力60周年を祝った「セルジオ」(限定6台)やアメリカ市場参入60周年のF60アメリカ(限定10台)と並んで、日本市場50周年記念のJ50(限定10台)も記憶に新しい。
そして昨年秋、マラネッロはもうひとつの重要なシリーズを発表した。イコーナ(ICONA)だ。これは、スポーツカーシリーズ(ミドシップや12気筒FRの2シーターモデル、現時点では488シリーズと812スーパーファスト)やGTシリーズ(GTC4ルッソ系やポルトフィーノ)と並ぶ第3のピラーであり、生産台数はスペチアーレ級の数百台レベルを想定しているという。
テーマはヘリテージ。過去の名車たちをモチーフに、現代の技術とセンスでコンセプトを再構築。限られたクライアントのために生産するという、実にマラネッロらしい、というか、レース&GTの歴史溢れるブランドだからこそ、のビジネスだ。その第1弾としてデビューしたのがモンツァSP1&SP2であり、すでに世界限定499台を完売した。
そういった歴史的な自社遺産を有効活用する最新モデルビジネスを推し進める一方でマラネッロは、ヘリテージモデルそのものへも非常に積極的な取組みをみせている。「フェラーリ・クラシケ」がそれだ。
一昨年に創立70周年を迎えた世界で最も有名な自動車ブランドが、その歴史を丸ごと活用しはじめている。果たして、マラネッロの狙いはどこにあるのか。クラシケとイコーナ、そしてフォーリセリエを知り尽くす本社マネージャーのファビオ・メネゴン氏が、モンツァSP1&SP2日本披露のため来日したのを機に、“跳ね馬の歴史ビジネス”の背景を直接、聞いてみることにした。
「まず知っておいていただきたいことがあります。フェラーリは一昨年に創立70周年を迎え、今は72年の歴史を重ねていますが、この間の進化は決して途切れることなく、過去から現在に至るまるで旅のように続いているのだということです」
「フェラーリのビジネスが始まった頃はジェントルマンドライバーたちのためにベースとなるスポーツカーを生産、供給していました。そこからF1をはじめとする本格的なレース活動も始まるわけですが、その頃のコンセプトやデザイン、DNAは変わることなく、連綿と現代へと受け継がれています。フェラーリだけが、創立以来の繋がりを最新のモデルへと紡いでいると言っても過言ではありません」
「どのモデルにも、過去との重要な繋がりを発見することができます。3つのアウトレットであったり、フロントのグリルデザインであったり、いろんな表現方法がありますが、すべて、過去の歴史的なモデルの何れかと繋がっているのです」
「かといってフェラーリは、過去のデザインをそのまま現代に活用しようとしたことはありません。全体的にはとても新しいけれども、よく見れば過去との繋がりが見え隠れする。単なるレトロデザインではなく、最新の機能を有した、新しい解釈のデザインです。フェラーリのデザインはすべてファンクショナルでなければなりませんから」
「イコーナシリーズは、正にその典型と言っていい。ごく限られたVIPカスタマー向けのシリーズだからこそ、過去とのつながりを一層重視しつつ、まったく新しいクルマ造りを目指しました。これもまた、フェラーリの新しい旅だと言えるでしょう」
「イコーナのオーナーになることで、フェラーリの歴史物語の登場人物になることができます。単にクルマを売買する関係ではなく、カスタマーもまた歴史の一部になれるのです。オーナーとマラネッロとの“リンク・オブ・エモーション”を確立することもまた、イコーナの重要な役割だと思います」
「一方で、クラシケの場合はビジネスというよりも、むしろ、文化的な側面のほうが大きいと考えます。なぜならクラシケの最大の目的は、フェラーリ車という“ピース・オブ・アート”をオーセンティックな状態で未来に遺すことにあるからです。レーシングカーを含めて、ですね。そうすることで、過去との繋がりが薄れることもなく、むしろ強くなって、また新たなモデルと物語を生んでいくのだと思っています」
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