セダンとスポーツカー。日本の新車市場では完全に“斜陽”と呼ばれてしまっているカテゴリー、といまは説明せざるを得ない。
世の中の「流れ」としては当然だったのかもしれない。居住性、維持費、シートアレンジやレジャーなどへの使い勝手…。「走り」よりも言ってみれば「家族の要請」がコンパクトカーやSUV、ミニバンの台頭を後押しするなかで、セダンやスポーツカーが「デメリットだらけのカテゴリー」として映ってしまうのは、ある意味仕方がない。
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そんな中にあって、しかし唯一気を吐いているのが「スポーツセダン」と呼ばれるカテゴリーだ。
スポーツカーの「走り」とセダンの「居住性」とをハイブリッドさせたカテゴリー、と説明すればわかりやすいだろうか。「走りの楽しさ」と「家族の要請」、その両方に答えることのできるクルマなのだ。
実際、今回取り上げたクルマたちの販売台数をざっと挙げてみると、日産 スカイラインが2481台、マツダ アテンザが3171台、スバルのWRX STIが3794台、同じくWRX S4が3531台、トヨタ カムリが1万9720台と、なかなかの数字を残している。着実に日本の市場に受け入れられているのだ(2018年累計、『ベストカー』2019年1月26日号時点での数字。ベストカー調べ)。
そこで、国産と欧米の代表的なスポーツセダンを8台ずつ、計16台を集め、“走り”にうるさい斎藤聡、桂伸一両氏にそれぞれ100点満点で何点かを採点してもらった。結果として全体的に高い配点となっているのは、今回ノミネートされた16台の「走り」が、やはり総じてハイレベルだということだろう。
ピックアップした16台とそれぞれの評価は下の通りだ。
以下、両氏の総評とともにお届けしていきたい。
※本稿は2018年11月のものです
文:斎藤聡、桂伸一、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2018年12月26日号
【斎藤聡が選ぶナンバー1】 スバルWRX STI
総じて欧米のスポーツセダンのほうが評価が高いのは、こうやって走らせたいとか、こういう走りが正しいのだといったメーカーの考え方が明確で、その味つけがメーカーのアイデンティティーだと信じているからだと思います。
一方、日本では最高速度が100km/hと低く、山道もタイトです。常用する速度が低いこともあってか、快適性を重視する傾向にあります。また、日本人は乗り心地感度が高いこともクルマ作りに少なからず影響しているのだと思います。
そんな国産車の中にあって、WRX STIのスポーツセダンぶりは例外的に傑出しいています。WRX STIには、WRCを戦うことで積みあげられてきた膨大なノウハウが今も生きているのだろうと思います。正確度が高く、しかも刺激的なクルマです。
アテンザも評価の高いクルマです。それは走る楽しさにこだわって、徹底的に作り込まれているからです。微細なアクセル操作に対するエンジンの精度の高い応答や、ハンドルを切り出した時のクルマの動きがドライバーの意図をとても正確に反映しています。
なぜWRX S4の評価が低かったのか。理由はCVTです。せっかく個性的でレスポンスのいいエンジンなのに、CVTがそれを薄めてしまっているためマイナス10点。平均点くらいのATが組み合わされるだけで評価はぐっと高くなるのでもったいない。
またスカイラインは、かつて日本を代表するスポーツセダンでしたが、スロットルの開き方から電動パワステのフィーリングまで、発売以来ほとんど進化していないのが残念です。
レクサスIS、クラウン、レクサスESは日本風というかトヨタ風スポーツセダンというイメージで採点しました。まだ伸びしろはありますが、かなり質が高くなっている感じがあります。3台とも力をつけてきています。
欧州車は、どれも走りの質感が高く、特にアウディA4、BMW3シリーズの操縦性はやはりドイツ車的な操縦性を見事に表していると思います。このほかでは、ジュリアはラテン気質のスポーツマインドがあり、走りが刺激的です。サウンドやダイレクトな操縦感覚など、演出と味付けは見事なものだと思います。
ジャガーXEは、一見普通のセダンですが、古くからあるジャガー伝統の落ち着きと、ドライバーの意を酌んでいるかのような操縦性のよさがあり、肩に力の入っていない素性のいいスポーツセダンに仕上がっています。
Cクラス、パサート、ボルボS60、キャデラックATSはスポーツセダンではないと思うので、配点は少し低めに。いずれも質の高い走りのクルマだと思います。
【桂 伸一が選ぶナンバー1】 トヨタ カムリ
採点を見比べると、なんと決定打のない横並び平均採点なんだ! と思うが、クルマの印象を思い描きながら採点すると、事実そうなるのだ。
つまり各社それぞれに完成度の高いセダンの代表ばかりが揃ったということだ。
言えることは、相変わらずドイツ勢の完成度の高さは群を抜いている。だが、それでも採点に差があるのは、操縦特性と安定性と乗り味を含めた走行性能から、個性がどれだけあるのかで配点が変わるからだ。
世界の規準とも言えるベンツCクラスよりも、BMW3シリーズと日本未導入のボルボの新生S60とジャガーXEが勝っているのは、純粋に個性が際立っているからだ。
BMW3シリーズは言うまでもなく指一本の動きに反応する(同ジュリア)極めて明快な応答性と、アクセルで姿勢をコントロールできるFRらしさが優れている。ボルボS60は圧倒的なボディ剛性感の高さと、AWDを意識させない操縦安定性がAWDの元祖アウディをも凌ぐから。ジャガーXEはスポーツカーのような操縦性としっとりしたジャガー伝統の乗り味が強い個性として光るため。
国産最高点は日本を代表するクラウン、ではなくカムリWSに与えたのは、トヨタの持病とも言える走行中のシャーシフロアの共振、いわゆるブルブル振動が少なく、操縦性と乗り味、2.5Lエンジンとモーターによる動力性能と回生ブレーキの制御が、操作に対して自然な操縦感覚に熟成されているから。
では何故同じシャーシのレクサスESが同評価にならないのか? は、レクサスに期待する高品位さや乗り味と静粛性等がまだ価格に見合う仕上がりになっていないため。
いまや軽を含めてハイトワゴンやSUVが増殖して、特にセダンは視界の面で住み難い世の中になった。とはいえクルマの原点はセダンにある。背の高いSUVが合わない方は、個性の強いセダンを選択することがクルマ生活を楽しくしてくれるハズ。
【まとめ】 群雄割拠のスポーツセダン 総合1位はBMW3シリーズ!
いかがだっただろうか。両氏ともスポーツセダンにとても詳しい評論家だが、採点結果がばらけた。桂氏は95点が3台ながら、無理をお願いして1位を選んでもらったらカムリという結果に。両氏とも欧米のスポーツセダンに高評価を与えていたが、ナンバー1に国産車を選択している点がポイントだ。
両氏の点数を鑑みて、総合1位はBMW3シリーズとしたい。ナンバー1に挙げないまでも、両氏のトップ3にランクインした唯一のクルマであり、誰しもが楽しめるスポーツセダンと言っていいのではないだろうか。
SUVやコンパクトカーといった勢力に押され気味のセダンではあるが、本企画がその魅力を改めて考えみる、そして販売店に足を運び、実際にクルマを見てみるきっかけとなれば幸いだ。
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