スバルがフォレスターを2018年7月にフルモデルチェンジ。ホンダはCR-Vを8月に日本再導入させるなど国産SUVのなかでも特にミドルクラスが活況だ。
さらに、フォレスターは9月にハイブリッド車のe-BOXERを追加。そしてCR-Vも11月1日にハイブリッド車が発売予定となっている。このほかにもトヨタのハリアー、マツダ CX-5など人気SUVがひしめく。
極上フィールも絶滅寸前!? 今味わうべき現行NAエンジン車 6選
今、出揃った国産ミドルSUV。新型フォレスター、CR-Vの2台にハリアーも加えた3台を一気乗り! それぞれの長所と短所、そしてミドルSUVの実力No.1はどのモデルか。
文:国沢光宏
写真:平野学
ベストカー 2018年10月26日号
久々日本に復活のCR-Vは割高か!?
この3車種、同じようなサイズのSUVながら、微妙にキャラクターが異なるため、比較するのは難しい。
まず簡単な紹介からスタートしましょう。CR-Vだけれど、現行モデルについていえばアメリカ市場をメインに開発された、と考えていい。
ホンダも「日本じゃ売れない」と判断したらしく、販売計画なかったようだ。実際、アメリカで2年前に発表された時も、日本で売るというアナウンスなし。1年前に中国で販売開始される前後で日本に投入することが判明した。
なぜ日本導入の判断をしなかったのか? こらもう簡単。先代モデルもまったく売れなかったからだ。そもそも初代CR-Vって超お買い得プライス(172万円から)のSUVとして登場した。完全に日本だけを考えて開発され大ヒット。やがてアメリカで販売したら、日本より売れた。以後、アメリカの意見を聞くことに。
ボディサイズやエンジンを大きくしていった結果、手軽に買えるSUVじゃなくなってしまった。5代目となる現行モデルも100%アメリカを向いてます。CR-V、アメリカだと日本でいうヴェゼル級のSUVに属す。アメリカって日本より30~40%収入多いため、200万円以下の車という位置づけ。高級感などまったく考えていない。
いわゆる「ブレッド&バター」。これといった特徴や個性を持たせる必要なし。だからこそエクステリア普通、インテリアも普通。走りだってターボなしなら2500cc級エンジン積む平均的なSUVというイメージ。
一方、日本の価格は4WDの売れ筋グレードで344万6280円する。高級車の価格帯です。あとで紹介するハリアーと同等(というかハリアーを意識した価格設定なんだと思う)。内容からすれば50万円くらい割高だ。
フォレスターは新型で“持ち味”に変化!?
続いてスバル 新型フォレスター。先代型もアメリカで大人気だったけれど、開発時点では日本やヨーロッパ市場を充分考えていた。スバルだって「魅力を持たせないと勝負にならない」と考えたに違いない。
当時は圧倒的に優れていたアイサイトを装備。これまたダントツ性能の4WD+このクラス唯一のターボエンジンやマニュアルミッションもラインナップ。
アメリカ人からすれば、安価グルマ(CR-Vと同じく日本人の金銭感覚だと200万円以下の車に属す)なのに凄い性能や魅力を持っているということで、圧倒的な人気車に育つ。もちろん日本市場でも3つの武器は有効だった。モデル末期に少し台数落とすも、人気SUVと評価され成功している。
その流れでフルモデルチェンジするかと思いきや、そうじゃなかった。スバルもCR-Vと同じくアメリカ市場を向いてしまったのだ。
いい「ブレッド&バター」を追求した結果、「ご馳走」じゃなくなった。信号待ちでアイドリングストップすると、エアコンかけていても徐々にヌルくて湿気のある風が出てくる。200万円のクルマなら「まぁそんなものかな」と割り切れるが、300万円以上もする高額車だと思うと少しばかり寂しくなる。
自動ブレーキはマツダやトヨタに抜かれ、4WDも精密な駆動力コントロールをするマツダと比較したら厳しい。加えてターボやマニュアルトランスミッションといった“華”までなし。
もちろん、スバル好きならこういった件はすべからく受け止めることだろう。ただ「どの車にしようかな?」と考えているなら、今回持ってこなかったCX-5など選ぶというチョイスだってあるんじゃなかろうか。
また、ハイブリッド(e-BOXER)もトヨタTHS IIや日産e-POWER、ホンダや三菱のシリーズハイブリッドと比べたら個性が薄い。これまたエアコンは信号待ちでヌルい風出てくるタイプだし。
40km/h前後で走っている際、エンジン止まったり、かかったりする時のショックも300万円超えの高額車としちゃ厳しい。手の込んだアイドリングストップだと考えるべきだと思う。
わかりやすい個性のハリアー
ハリアーはどうか? この車、始祖をレクサスRXに持つが、今や日本専用車。トヨタも「300万円超えの高額車」と認識している。結果、コテコテの高級感を訴えるエクステリアとインテリアにした。
さらに、高級感をお買い得プライスで味わえるターボなし2000ccと、燃費訴求のハイブリッド、そしてハイパワー勝負の2000ccターボという3つの違う味つけを用意したから凄い。
加えてベースが2000cc級のDセグメントということで、CR-Vやフォレスターよりひと回り上の車格を持つ。カムリを見るとすべての点でカローラより上級の部品を使っている。車格違うとボディサイズが大きくなるだけでなく品質まで変わってくる、ということ。
CR-Vとハリアーを乗り比べたら、誰でも「ぜんぜん質感が違いますね」と感じることだろう。さらにアメリカの影響を受けていないため、ブレッド&バター(悪くいえば実用車)になろうとしていない。
唯一突出していないのが自動ブレーキ性能。トヨタの新世代「セーフティセンス」の前のタイプで、フォレスターと横並び。CR-Vと比べたら歩行者の対応能力でわずかに届かない。この点さえカバーできたなら、すべての点で優位になると思う。
3台の長所&短所と今買いのNo.1ミドルSUVは?
また、今回の企画では3車種の比較としたが、実際のバイヤーズガイドになると自動ブレーキ性能でクラストップのマツダ CX-5や、抜群の経済性能を誇るアウトランダーPHEVなども候補に入ってくる。
総合性能で考えると、2018年10月11日の年次改良で自動ブレーキ性能をさらに改善した(夜間の歩行者も対応)CX-5がこのクラスでナンバーワンの実力を持っています。
以上まとめると、CR-Vの長所は毎日乗って不満のない実用車であること。短所は同じクラスのライバルと比べたら下を見て50万円くらい割高な価格。
実力(人気と考えてもいいです)より高価だと中古車になった時の値下がりが激しく、リセールバリューも厳しい。これ辛いワな。また、3列シート車を選ぶと、3列目シートの居住性が相当厳しい点です。
フォレスターの長所もCR-V同様、実用性持つことに加え、素晴らしい4WD性能。短所は個性や特徴の薄さ。「飛び道具を持っていない」と言い換えてもOK。
ハリアーの長所はわかりやすい個性や飛び道具を持っていること。短所を挙げるなら若干車両価格が高いことながら、手放す時のリセールバリューが圧倒的に高いため、弱点になっていないかもしれません。ということでハリアー強いと思う。
※テスト時は未発売ながら、マツダ CX-5は10月11日の改良で注目の2.5Lガソリンターボ車を追加。こちらに関しては改めて試乗し、その実力をお伝えします。
◆3車の採点/国沢光宏
トヨタ ハリアー/90点
スバル フォレスター/70点
ホンダ CR-V/60点
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